アートマーケットでは、人気アーティストの作品価格が数年〜数十年で信じられないほど高騰することがある。専門家でも正確な予測はできないが、「応援しているアーティストがいつか大人気になるかも」「将来オークションで高額になるアーティストを発掘したい」など、ワクワクしながらアート市場の動きを追うのは楽しいものだ。

この記事では、イタリアの全国紙『Milano Finanza』の創刊35周年記念号の特集をもとに、1986年から2021年現在までの35年でマーケットでの価値が大きく上昇したアーティストをピックアップして紹介する。(本記事中の価格は1ユーロ130円、1ドル110円で換算、落札価格は手数料込み)

ジャン=ミシェル・バスキア

ジャン=ミシェル・バスキア《In This Case》(1983)
(画像=ジャン=ミシェル・バスキア《In This Case》(1983))

画像引用:https://www.artprice.com/

同紙の分析で「過去35年で最も高いパフォーマンスを記録したアーティスト」のトップとなったのが、夭折の天才バスキア。マーケットでの作品の平均価格が、1986年には約390万円だったのに対し、2021年には約16億9千万円に。アーティストとしての活動期間は10年に満たないにもかかわらず、途方もない成長率を叩き出した。

なお、現時点でバスキアのオークションレコードとなっているのは、2017年サザビーズ(ニューヨーク)の現代アートイブニングセールで落札された《Untitled》の約122億円。落札者は、2021年12月に宇宙旅行を実現したことでも話題になったZOZO創業者の前澤友作氏だ。前澤氏はオークションレコード3位の作品も所有しており、バスキア作品の平均価格を押し上げていると言っていいかもしれない。

また、Artprice社による「現代アーティストのオークション年間総売上高ランキング」(2020年7月〜2021年6月)でもバスキアが1位をマークしており、年間総売上高は約424億円。なんと2位のバンクシーの倍以上を売り上げている。今年のオークション全体での落札額でも、パブロ・ピカソの作品に続く2位はバスキアの《In This Case》の約102億円だった。

ゲルハルト・リヒター

ゲルハルト・リヒター《Abstraktes Bild (649-2)》(1987) ポーラ美術館所蔵
(画像=ゲルハルト・リヒター《Abstraktes Bild (649-2)》(1987) ポーラ美術館所蔵)

画像引用:https://www.gerhard-richter.com/

ドイツ最高峰の画家と称されるリヒターは、2022年に90歳を迎える。1980年代にはすでに国際的に評価されていたが、この35年で平均価格が約910万円から約20億8千万円と驚異的な伸びを見せている。

日本ではそこまで知名度が高くなかったリヒターだが、2022年には日本で16年ぶりとなる大規模個展の開催が東京都近代美術館で予定されており、改めて注目が集まっている。

また、箱根のポーラ美術館は、2020年のサザビーズ(香港)で《Abstraktes Bild (649-2)》を約30億円で落札。当時、アジアで開催されたオークションにおける欧米作家作品落札額の新記録を打ち出したことで話題となった。以来秘蔵されていた同作は、2022年に開館20周年記念の展覧会「モネからリヒターへ―新収蔵作品を中心に」で初公開される。

アンディ・ウォーホル

アンディ・ウォーホル《Silver Car Crash (Double Disaster)》(1963)
(画像=アンディ・ウォーホル《Silver Car Crash (Double Disaster)》(1963))

画像引用:https://www.sothebys.com/

バスキアと親交が深かったことでも知られるポップアートの旗手ウォーホルの作品は、35年で約520万円から約7億8千万円まで平均価格が上昇。「ファクトリー」と呼ばれる工房で大量生産を行い、比較的安価なプリント作品を多く制作していたことを考えると、これほどの高額はさすが巨匠と言わざるをえない。

活動当初の1960年代に10万円程度で売られていた作品が、50年後には300倍を超える値上がりした例もある。ウォーホルのオークションレコードは、実際に起こった事故や自殺者を描く「死と惨事」シリーズの《Silver Car Crash (Double Disaster)》で、2013年のサザビーズ(ニューヨーク)で約115億円の値がついた。

Artmarket.comの「2021年上半期の世界のオークション市場で落札総額の高かったアーティストトップ10」では、ピカソ、バスキアに次ぐ3位をマーク。さらに2021年下半期にもNFT化された作品が高額で落札されるなど、マーケットにおけるウォーホルの人気は衰えることを知らない。

ピエロ・マンゾーニ

ピエロ・マンゾーニ《Artists’ Shit》(1961)
(画像=ピエロ・マンゾーニ《Artists’ Shit》(1961))

画像引用:https://www.phaidon.com/

イタリアを代表する現代アーティストのひとりマンゾーニは、イタリアのコンセプチュアル・アートを切り拓いた人物として知られる。29歳の時に心臓発作のため急逝しており、活動期間は短いものの、センセーショナルな作品の数々を残した。

「アクローム(無色)」という色が欠如した絵画シリーズや、自らの指紋をつけた卵を配って食べさせるパフォーマンスなど、表現や芸術の意味そのものを考えさせる作品が多い。極めつけは《Artists’ Shit》で、「アーティストの糞」の意味で、マンゾーニが缶詰に自身の排泄物を詰め、当時の金のレートと同じ値段で販売した。2021年には、ロサンゼルスを拠点とするアーティスト、カシルス(Cassils)が同作をオマージュしたNFT作品をオークションに出品したことでも話題を呼んだ。

一体なぜ高い価格で売れるのか、面食らってしまうような発想の作品ばかりだが、アート界での評価は確固たるもの。過去35年の平均価格の上昇は約520万円から約4億5,500万円と、約87倍に跳ね上がっている。

次なるバスキアは現れるか?

『Milano Finanza』紙掲載のランキング。
(画像=『Milano Finanza』紙掲載のランキング。左列からアーティスト名、1986年時点の平均的な作品価値(単位:千ユーロ)、2021年時点での平均的な作品価値(単位:千ユーロ)、35年間での成長率。)

画像引用:https://www.artribune.com/

同紙の特集で取り上げられている15人のアーティストには、上記の他にジェフ・クーンズ、デイヴィッド・ホックニー、ルーチョ・フォンタナ、サイ・トゥオンブリーなど、アートマーケットで馴染み深い面々が名を連ねている。もともとそれなりの名声があったアーティストもいるが、半世紀も経たないうちにここまで価値が上がると予想できた人は少ないだろう。

日本でも人気の高いバンクシーは、2000年代から徐々に活動が表に出てきたため、35年前には影も形も見えなかったが、この数年でオークションの落札価格が急激に高騰した。次なるバンクシーやバスキアが登場するとしたら、今いくらで取り引きされているのだろう? 資産としてもアートが注目されている今、アートマーケットの動きから目が離せない。

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文:ANDART編集部

参考 https://www.ansa.it/canale_viaggiart/it/notizie/mondo/2021/12/16/da-basquiat-a-manzoni-in-35-anni-chi-ha-moltiplicato-valore_fdb4d0fb-3526-49d3-9d43-4fd19a010848.html

https://www.artribune.com/professioni-e-professionisti/mercato/2021/12/quali-artisti-si-sono-rivalutati-di-piu-negli-ultimi-35-anni-lanalisi-di-milano-finanza/