日本全国の地域金融機関でM&Aや事業承継を担当されている行員(BANKER)に各行の取り組みや銀行のカラー、地域の事業承継事情など他行への参考になる情報をインタビュー。
今回はみちのく銀行 地域創生部 副部長 兼エリアサポート担当部長 兼創業・事業承継支援室長 中村清彦氏にインタビューした。
現在の部署に来られるまでの経緯を教えてください。
中村:1997年にみちのく銀行へ入行し、4カ店を経験した後本部付けで新規開拓を行う新たな業務が始まり、個人取引の推進から法人担当まで幅広い業務を経験しました。今から10数年前に現在の地域創生部の前身である法人推進部署にて、アグリビジネスやABLの立ち上げなど課題解決商品等の企画推進を担当し、その後は審査系の企画部署にて融資業務革新プロジェクト等を経験しました。
本部で新規立ち上げ部署を多く経験されたのですね。
中村:そうですね。その後本部時代の経験を生かして、支店に戻った際にM&Aの案件に携わることがあったのですが、それは大変印象深く残っております。そして本部から指名されてM&Aシニアエキスパートの資格を取得し、現在に至ります。
2020年4月に「創業・事業承継支援室」が創設され、事業承継・M&Aを専門に対応していくチームの室長として約1年半が経ったところです。
現在みちのく銀行のM&Aチームが独自に取り組まれていることはありますか?
中村:私は経歴上新しい商品を取り扱うことは得意なのですが、着任後いざ全店にM&Aについて啓蒙していく中で、「M&A」についてはハードルの高いものであったということに気づきました。部内でミーティングを重ね、室のメンバーと私が全支店を回り、研修会や個社検討会を実施しました。支店ごとにお客様をピックアップして、「このお客様なら今後こんな可能性があるよ」と、M&A業務を身近に感じるよう話し、浸透させていけるようにしていきました。
合わせて、支店でしかできないこと、本部にしかできないこと、これらの役割を明確化して発信しました。
支店と本部、それぞれの役割について詳しく教えていただけますか?
中村:支店では、お取引先の承継の課題を普段の業務の中でしっかりヒアリングし、その情報を本部へ共有すること。そしてM&Aのお話が進んでいった場合には、心情的な面などを考慮して、日頃から信頼関係のある支店の役席や支店長、または担当が率先してお客様へ安心を届けること。この2点に注力して頂くようお願いしています。
一方で専門的な知識やマッチングについては、本部に全て任せてと伝えていますね。
支店の行員さんのM&Aへの抵抗感が軽減されているような感覚はありますか?
中村:そうですね。実際にM&Aの話をしても抵抗感のない行員も増えてきています。1回でもM&Aに携わった数名が次の支店へ異動しても、経験値があるので、新しい支店でも牽引できる存在になっていると感じるような経験をしてもらうことが大事だと思いますね。
戦略的M&Aでお客様に安心と喜びを
今まで関わられた案件の中で、印象深いものについて教えてください。
中村:現在の部署に来る前の支店で関わった案件ですね。私にとっては初めてのマッチングだったのですが、日本M&Aセンターさんとの案件で、生でお話が進んでいくところに同席できたこと、成約することもでき印象に残っていますね。成約までのスピードも速く、受託から成約まで6か月くらいでした。
一般的な事業承継ではなく、事業の切り離しを行う戦略的なM&Aの案件でしたが、全国紙にも取り上げていただいた案件になります。お客様にも感謝され、本当にいい仕事だなと感じることもできました。
新しく取り組もうと計画されていることはありますか?
中村:はい、1点目は組織体制の変更で、お客様のセグメント・事業規模ごとの施策を進めています。
事業規模の大きなお客様であれば、日本M&Aセンター等外部の提携先と協業しながらお相手を見つけていき、比較的事業規模の小さいお客様であれば、公的機関や金融機関のネットワークを使うなど対応を明確化しています。
2点目は「事業承継サポートサービス」という商品を新たに作りました。
承継について誰にも相談できない社長が多い中で、一定期間お悩み相談を受けてから状況を整理し方向性を一緒に導き出していくというサービスです。
具体的には外部の専門機関に出向経験のある事業承継コンサルタントを主要な地区に配置、お客様のお話の聞き出しが得意ではない行員でも事業承継コンサルタントと一緒にお客様対応することが可能になります。今年度一部エリアでこの取り組みを始めたところ反響が大きく、今後この商品を広めていくことで、第三者承継の選択肢が見える場合も多くあると考えています。
素晴らしいサービスですね。おっしゃる通りまず状況の整理ができていないお客様は多くいらっしゃいますよね。
中村:そうですね。少しずつ整理して、考えられる選択肢を示していくことが一番大切ですね。
また他行のM&Aスタッフは事業承継とM&Aを兼務されていることが多いと思いますが、当行はM&A専門部隊を置き、集中的に取り組んでいます。
最後に、日本M&Aセンターに期待することがあれば教えてください。
中村:全国のネットワークを駆使してしっかりした買い手企業を見つけていただけることは大きな付加価値だと思っております。
そういった面からも日本M&Aセンターとは、引き続き連携していきたいと思います。