半導体は「産業のコメ」と呼ばれ、いまや幅広い業種のさまざまな製品で使われている。その半導体が不足している状況が続いていることにより、多種多様な製品の製造が遅れ、私達の日常生活にもさまざまな影響が出てきた。この状況はいつ改善するのか。
そもそも「半導体」とは?
かつての高度成長期のころは、「鉄鋼」が産業のコメと呼ばれた。しかし現代では、「半導体」がそう呼ばれている。現在は鉄鋼よりも半導体の方がさまざまな産業において重要な役割を担っているからだ。
そもそも半導体とは、物質によって異なる電気の通しやすさの性質をうまく利用して作られる部品で、データを記録するメモリーや機械を制御するマイコンなどの電子部品には欠かせない部品である。
ちなみに「半導体」と言う場合、物質としての半導体を指すこともあれば、半導体でできた電子部品のことを指すこともある。
いまなぜ半導体不足が起きているのか
半導体不足の要因を正確に論じるのは極めて難しい。産業規模が大きく、産業構造も非常に複雑であるため、根本的な原因がどこにあるのか見極めるのが容易ではないからだ。そのため新聞やテレビでも、推測ベースで半導体不足の要因が語られることが多い。
いまのところ、半導体不足の要因として最も有力なのが、半導体に対する需要が急拡大したことと、それに対応できるだけの供給体制が整っていないことだと言われている。
半導体の需要が拡大したのは、新型コロナウイルスの感染拡大が起きたことで、ゲーム機やパソコンなどの製品を買い求める人が一気に増えたからだ。ゲーム機やパソコンでは多くの半導体が使われている。
しかし、半導体に対する需要が増えても、半導体を製造する企業は簡単にはその需要に対応できなかった。半導体工場の老朽化などによってすぐに生産量を増やせないケースが目立った。また、コロナ禍によって工場の操業停止を余儀無くされた企業が出たことも、半導体不足に拍車をかけた。
私達の日常生活にはどのような影響が出る?
このようにして起きた半導体不足により、私達の生活にもさまざまな影響が出ている。
新車製造に遅れが生じ、納車までかなり待つことに
半導体を多く使用している工業製品のひとつに「自動車」がある。特に近年は、ハイブリッド車や自動ブレーキ機能、通信機能などを搭載した高機能な自動車が増えたことで、自動車1台に使用する半導体の量も以前より格段に多くなっている。
そのため、トヨタをはじめとした世界の自動車メーカーは、半導体不足によって自動車の減産を余儀なくされた。新車の生産計画に遅れが生じるということは、新車を購入してから納品までの期間がこれまでより長くなるということだ。
納品がどれだけ遅れるかについては自動車メーカーによって異なるが、普段の納期の2倍以上というケースは珍しくない状況だ。
暖房器具が故障したら修理に時間がかかる可能性
これからの寒い季節、暖房が壊れたら一大事だ。しかし今年の冬はその一大事がさらに深刻な状況となるかもしれない。
故障した暖房を修理に出したとしても、半導体不足により交換する部品が不足しており、製品が修理から戻ってくるまでかなり時間がかかるケースも出てきそうだからだ。洗濯機や冷蔵庫などの白物家電についても同じことが言える。
自分の趣味にも影響が出る可能性も
自分の趣味に影響が出るケースもある。例えば、ピアノが趣味の人は、電子ピアノが故障したら修理が終わるまで時間がかかるかもしれない。また、新品の電子ピアノの製造でも半導体不足の影響が出ており、ピアノメーカーによっては納品がかなり遅れているようだ。
半導体不足はいつ解消する?日本政府の対応は?
では、このような半導体不足はいつ収束するのか。この点については世界のさまざまな調査会社や半導体製造企業などが見通しを発表しているが、見解は割れている。「2022年には解消する」という見方もあれば、「2023年まで長引く」という指摘もある。
半導体不足が長引けば長引くほど、半導体を使って製品を製造している企業の業績に痛手となる。特に、自動車は日本を代表する産業のひとつであり、自動車の減産による影響は日本経済全体にとって軽微なものとは言えない。
日本政府は国内における半導体工場の新設や増設を進めるため、支援金を出す方針を明らかにしており、関連法の改正案が2021年12月6日に閣議決定されている。岸田政権のこの対策が国内の半導体不足の解消につながるか、まずは注目したいところだ。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)