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(写真=ベンチャーサポート行政法人編集部)

建設業の許可を取得した後も決算届や変更届など、各種届出が必要になります。

決算届については決算を組むごとに提出が必要です。変更届については役員や会社名などの変更が生じたときに必要になります。

一方、今回解説する更新手続きについては、5年に一回のみ行うことになります。しかも、有効期限の30日前までに行わなければなりません。

日々の業務に追われていると、忘れてしまいがちな更新手続きについて5つのpointを紹介します。

Point1 更新期限を守る

許可の有効期間は取得後5年間です。更新をするためには、許可が満了する日の30日前までに更新手続きを行う必要があります。

5年という長い期間が空きますから、手続きを忘れることのないように、担当者はしっかりと期限を確認しましょう。

また、30日以前であれば更新手続きをいつでも行ってよいわけでもありません。更新の申請書を受けつける期間が定まっています。あまりに早く出しすぎても受付してもらえないということです。

これは、管轄の区の整備局や、地方整備局により取り扱いが異なります。例えば、東京都の場合知事免許の更新手続きは2か月前より受付を行います。

大臣免許であれば、3か月前より受付を行います。大臣免許の方が長い期間が設定されているのは、東京都から関東地方整備局へ書類を回送する都合があるためです。東京都の窓口では、申請書類の形式面からのみ確認を行い、関東地方整備局が審査を行います。

手続きまでに5年という長い期間が定められているにも関わらず、知事免許であれば提出するタイミングが2か月前から1か月前までの1か月間しか設けられていません。これが更新を忘れやすい理由となっているようです。

30日前にあたる日を1日でも過ぎた場合は許可を失効してしまうのでしょうか。実は、30日前を過ぎたとしても更新手続きを行うことができます。

実務上は、満了日まで申請を受理してもらえば、実際に更新が完了する日が満了日を過ぎてしまっても問題ありません。さかのぼって満了日の翌日から更新がなされたものとされます。

ただし、当初の期限を過ぎてしまっていることに対しては、注意を受けるかもしれません。また、顛末書などの反省文を提出するように求められることもあります。手続きは期限内に行うようにしましょう。

更新満了日についてですが、もしもの時のためにしっかりと理解しておいた方がよいと思います。1日の違いが命取りになるからです。

建設業法によれば、5年目の許可日に対応する日の前日までとなっています。たとえば、平成25年1月1日に許可を受けたのであれば、5年目の許可日に対応する日は平成30年1月1日です。これの前日になりますから、許可の満了日は平成29年12月31日になります。

ここで、満了日が休日だった場合の取り扱いが問題になります。例えば、会社の決算の申告期限など、ほかの手続きにおいては役所が休日でお休みの場合、翌営業日まで期限が延長されることが多いと思います。

ところが、建設業の許可においてはこのような取り扱いはなされずに休日でも許可は満了します。当然、窓口は開いていませんから前営業日までに申請を行う必要があります。このあたりも許可を失効しやすいポイントになります。

他の業種の許認可手続きなどにおいて、手続きの懈怠や期限切れがあった場合、管轄の判断にて厳重注意の上に救済措置が取られることがあります。

今回の建設業許可においては、そのような取り扱いを受けた事例は聞いたことがありませんので、救済措置は一切ないと考えた方がよさそうです。

他業種の許可を追加した経緯がある場合、業種ごとに許可の満了日が違う場合があります。業種ごとの許可日がバラバラであると更新すべき日もバラバラです。このような状態にしていると、更新事務が非常に煩雑になります。これも失効しやすいポイントです。

これを防ぐためには許可を統一することも方法です。現在許可日がバラバラな会社は、許可の統一を検討してもよいかも知れません。更新事務の手数の削減にもつながります。

許可の統一を行うためには、現在保有する許可の更新申請時に行います。通常保有する許可の中で、いちばん期限が先に到来するものについて手続きを行うことになります。この許可に関しては無事更新を終えると、手続きから5年間の有効期間が与えられます。

このときに、期間が残っている他の許可に関しても同じ有効期間にそろえてもらうのです。許可の一本化という制度がありますので、ぜひ利用してください。

このように、複数の許可の更新日をそろえて効率的に更新業務を行うことも失効しないためのポイントです。

Point2 申請書類を確認する

更新手続に取り掛かり、書類をそろえたら中身をしっかりと確認しましょう。

許可満了の日までに書類を提出すれば、その後に多少の修正があり結果として満了日を過ぎてしまったという場合でも、満了日の翌日から新たな許可が開始されます。

ところが、あまりにも不備が多いと申請を受け付けてもらえないこともあります。また、修正依頼に対して迅速に対応しない場合は申請を取り下げられてしまうこともあります。

そのようにならないためにも、更新の申請書類についてはしっかりと確認をしましょう。ここでは、特に誤りやすい書類について確認します。

Point3 各種届出を確認する

当初の許可取得から何も手続きをしていないというケースは残念ながら多く見受けられます。

役員や住所などの変更であれば、原則的にはこちらから申請しない限り変更したことさえ気づかれません。各種変更届を失念していても、指摘されないことが多くあります。

また、決算届に関しても、期限を過ぎたからと言ってすぐに催促が来るようなことはありません。5年間一度も出さずにいたとしても、特に指導等がないことも十分に考えられます。

このような状態で、更新手続きを行うことはできません。更新の申請を行う時に、許可取得後の手続きが漏れていたような場合には、まずはこれを提出するように求められます。

申請期間直前において、このような状態になってしまっては結果的に更新ができない場合も十分に考えられます。届出事項が生じたときには、速やかに届出を提出するようにしましょう。

随時、しっかりと届出を行うことも、許可更新のための大切なpointです。

Point4 要件を確認する

更新の際には、基本的には新規の許可取得の際と同様の要件を満たす必要があります。

提出書類については一部省略できるものもあります。また、前回提出したもののコピーを用いることのできる書類もあります。

とはいえ、要件を充足していることが必要であることに変わりはありません。ここでは、許可の更新時に問題になりやすい要件について確認します。

社会保険への加入

建設業の許認可の取得の際の提出資料の中に社会保険に関するものがあります。また、管理責任者の常勤性と、専任技術者の専任制の確認のために加入に関する証拠書類の添付が求められています。

社会保険への加入を徹底し出したのはここ数年のことです。前回の更新時または取得時に社会保険の加入がなくとも手続きが完了した場合は、このタイミングで加入が必要になることがあります。

社会保険の設置に関する届出や、従業員の資格取得届に関する手続きには時間がかかることがあります。

また、各年金事務所ではなく年金事務センターという手続き専門機関を通して加入手続きを行う都道府県も多くなってきました。都府県内の手続きを一挙に行うことになるので、手続き開始から完了までが以前よりも遅くなっているようです。

申請を出してから、実際に手元に保険証が届くまでには2週間程度の時間を要します。更新の直前になって、あわてて準備をしていたのでは間に合わない可能性もあるので、事前に社会保険への加入を確認しておくこともpointの一つです。

管理責任者と専任技術者について

建設業の許可・更新に関する要件の中で管理責任者と専任技術者について苦労した方も多いのではないでしょうか。

この二つに関する要件は、人に関する問題ですのですぐに満たすことはできません。要件を満たす人に関する募集をかけて、採用するまでには長い時間がかかってしまいます。このような意味においては、もっとも難しい要件の一つであることは間違いないと思います。

前回の更新から時間がたち、その中で管理責任者と専任技術者の要件を満たす人が異動などしてしまっていると本当に大変です。いざ更新手続きを行おうとした時に、該当の人はすでに退社していたなどという場合は絶望的です。

更新手続きを行うにあたって、管理責任者と専任技術者に関する要件はしっかりと確認しておくとよいでしょう。

申請書を作る時に注意すること

更新要件できる要件だけではなく、「更新できない要件(事由)」にも注意してください。

申請書の記載の内容に、事実と違う内容や、必要な内容を記載しない場合に許可が下りないことがあります。もちろん、要件を満たしていないにも関わらず、うその内容を書いて要件を充足することはやってはいけません。

このような場合は、申請者自身が承知で行うことになります。一方、申請者が知らないで(気づかずに)虚偽の内容の申請書を作ってしまうことがあります。それは、取締役などの略歴に関する記載漏れです。

更新手続きの場合、賞罰に関する事項も必ず記載しなければなりません。建設業に関する行政処分や行政罰について注意を払って書類を作成するでしょう。しかし、ここには刑罰やその他についても記載しなければならないことになっています。

刑罰については、特に確認もせずに「なし」としてしまっている担当者も多いことと思います。刑罰を受けたかどうかを質問することさえ失礼に思ってしまう気持ちも理解できます。

もし万が一、刑罰を受けたにもかかわらず「なし」として提出し、それが発覚すると虚偽の申請をしたとして欠格要件に該当してしいます。実際に、刑罰のことを知らずに「なし」として申請して更新ができないばかりか許可が取り消されてしまった例もあります。

このようにならないためにも、記載事項にはひとつひとつ注意を払い、事実と相違することが記載されていないか、また記載すべきことが漏れなく記載されているかしっかりと確認しましょう。

禁固や懲役については、事例としては多くないのかも知れませんが、罰金刑については意外と多いので注意してください。

更新手続きの際に要件を欠いていることが発見された場合

許可の失効と似た言葉に許可の取り消しがあります。許可をとった時に確認した各種要件については、許可を受けている間も継続して満たしていることが必要です。

許可の更新の際に各種要件の確認を行ったところ、一部要件を欠いていることが発見されることもあると思います。この場合は、すみやかに変更届を提出することをお勧めいたします。

要件を欠くと許可は取り消され許可の効力は失効します。この場合はすぐに申請をし直して許可を取得することができます。

しかし、専任技術者の退職等があり、すぐに代わりの人を採用できないからと言って、更新手続きの期限までに用意して更新をした場合、これが判明すると行政指導として許可が取り消される可能性があります。

この場合は、ペナルティーとしての取り消しに当たるので、再度申請が行えるようになるまでに5年間待たなければなりません。更新や許可に関する手続きは迅速に、あくまでも正直におこなうことをお勧めします。

Point5 失効リスクについて知っておく

失効することはもちろん絶対にあってはならないことです。とはいえ、もし万が一のために失効してしまった場合のリスクを考えておくことにも一定の意味があると思います。

許可を失効してしまった場合はどのような影響があるのでしょうか。

当然、500万円以上の工事の受注ができなくなります。そればかりか、営業取引上の条件として許可の取得を条件として請け負っているものについて悪影響を及ぼすことは容易に想像できます。

現在進行中の工事については継続が認められても、新機の契約の締結が難しいかも知れません。最近の傾向としては、下請け会社にもしっかりと許可の取得を求めることが多くなってきているからです。

このようなリスクを理解した上で、担当者は慎重に許可の更新に関する手続きを行うようにしてください。

いかがでしたか。建設業の許可の更新を問題なく行うためには事前の確認と準備が必要なことがお分かりいただけたと思います。

また、更新を怠り許可が失効すると会社の営業活動に支障がでることもご理解いただけたと思います。そのようにならないためにも、担当者は更新に向けてしっかりと準備をするようにしてください。

許認可の申請については確認事項が多く、なかなかに難しいものです。申請書や証明書についても、見本通りでないものも多くあります。

確認したはずの要件について、あとから一部満たしていないことが発覚するなどいろいろな局面に遭遇することが考えられます。

更新手続きの実務については、その過程で想定外の事項が発生することが本当に多くあります。この場合は、隠さずに正直に担当課の人に相談するのが良いと思います。

場合によっては、一時的な許可取り消しの対象になってしまうかもしれませんが、もっと最悪なケースも考えられます。

建設業の認可申請について抽象的な要件にはなりますが「誠実性」というものがあります。誠実に更新手続きを行うようにすることも最大のポイントの一つかもしれません。(提供:ベンチャーサポート行政書士法人