マザーズに上場するための条件一覧!上場審査で見られるポイント
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成長を目指す中小企業にとって、IPO(新規株式公開)は大きな目標となる。ただし、IPOには条件・要件があるため、数年単位で準備を進めなくてはならない。ここではIPOの条件・要件に加えて、上場審査で確認されるポイントや必要な準備を解説する。

目次

  1. そもそもIPOとは?
    1. IPOを目指すメリットとデメリット
  2. IPOには2つの要件がある
    1. 形式要件
    2. 実質要件
  3. マザーズに上場する条件・要件とは?
  4. 中小企業がIPOを目指すための3つの準備
    1. 【STEP1】上場準備
    2. 【STEP2】会計検査
    3. 【STEP3】申請準備
  5. 上場を考え始めたら専門家への相談を

そもそもIPOとは?

IPO(Initial Public Offering)とは、企業が自社株式を市場へ流通させることである。日本語では「上場」や「新規株式公開」と訳されており、IPOによって公開された株式は、証券取引所を通して一般投資家の手に渡ることになる。

上場されていない中小企業の株式は、経営者自身や親族、もしくは特定の限られた人物(出資者など)のみが保有しているケースが多い。そのため、IPOによって証券市場に株式が流通すると、その企業を取り巻く環境は大きく変化していく。

IPOを目指すメリットとデメリット

IPOを実施すると、企業には次のようなメリット・デメリットが発生する。

IPO(新規株式公開)の条件・要件とは?上場審査で見られるポイントと必要な準備

企業がIPOを目指す最大のメリットは、社会的な信用性・知名度がアップする点にある。投資家や消費者だけではなく、金融機関や関係会社、求職者などからも注目されるので、経営のさまざまな面に良い影響が生じるだろう。

また、経営者個人の立場からすると、創業者利益を確保できるメリットも大きい。一度に売却できる株式は限られるものの、上場後に持ち株の5~10%を売却するだけで、数億円の資産を得る創業者も多く見受けられる。

ただし、社会的な責任が増大したり、株主対策が必要になったりする点は軽視できないデメリットだ。また、そもそもIPOは実施要件が厳しいため、準備期間のうちに会社全体が疲弊してしまう恐れもある。

IPOには2つの要件がある

企業がIPOを実施するには、各証券取引所が定める審査基準を満たす必要がある。具体的にどのような基準が設けられているのか、ここからは「形式要件」と「実質要件」の2つに分けて解説していく。

形式要件

形式要件とは、純資産額や時価総額をはじめとした数値化できる要件のことである。例えば「純資産額○○円以上」「株主数○○名以上」のように、形式要件では具体的な数値基準が設けられている。

したがって、上場に向けた数値目標を簡単に立てられるが、取引所によって基準は異なるため注意が必要だ。

IPO(新規株式公開)の条件・要件とは?上場審査で見られるポイントと必要な準備

上記はあくまで一例であり、ほかにも形式要件には次のような審査項目がある。

・事業継続年数
・売上高(利益)の額
・株券の種類
・株式の譲渡制限
・単元株式数 など

これらの形式要件を満たしているかどうかは、上場時に提出する資料によって判断される。つまり、「上場時にすべての要件を満たしていること」が前提となるので、IPOを目指す場合は計画的に準備を進める必要がある。

実質要件

一方で、IPOの数値化できない要件は「実質要件」と呼ばれている。実質要件ではどのような点が審査されるのか、以下で東証一部の例を紹介しよう。

IPO(新規株式公開)の条件・要件とは?上場審査で見られるポイントと必要な準備

形式要件に比べると抽象的な内容ではあるものの、上場申請時には実質要件も細かく確認される。一般的には「上場審査等に関するガイドライン」をもとに厳正な審査が行われるため、申請を行うまでにはガバナンス体制なども整えておかなくてはならない。

マザーズに上場する条件・要件とは?

全国にいくつかある市場の中でも、東京証券取引所の「マザーズ」は成長企業向けの市場として知られている。また、東証一部・東証二部へのステップアップにもつながる市場なので、IPOを目指す経営者は概要をしっかりと押さえておきたい。

では、マザーズへの新規上場ではどのような要件が必要になるのか、以下で主なものを紹介していこう。

・マザーズの形式要件

IPO(新規株式公開)の条件・要件とは?上場審査で見られるポイントと必要な準備

・マザーズの実質要件

IPO(新規株式公開)の条件・要件とは?上場審査で見られるポイントと必要な準備

東証一部・二部に比べると、マザーズの上場要件はそれほど厳しくない。ただし、その代わりに事業基盤やビジネスモデルなどの「将来性」が重視されるため、最先端技術やイノベーションにも目を向けて、今後の経営方針を考えることがポイントになる。

中小企業がIPOを目指すための3つの準備

IPOの準備期間は、最短でも2年半~3年ほどと言われている。具体的にどのような準備が必要になるのか、以下では3つのステップに分けて解説をしていく。

【STEP1】上場準備

上場を目指すことが決まったら、まずは会社の現状をしっかりと把握し、資本政策をはじめとした全体のスケジュールを組んでいく。ケースによって何から取りかかるべきかは異なるが、上場準備の一般的な流れは以下の通りだ。

IPO(新規株式公開)の条件・要件とは?上場審査で見られるポイントと必要な準備

これらのプロセスによって今後数年間の方向性が決まるため、上場準備は慎重に進めなくてはならない。なかでも資本政策の策定は、経営権や経営者個人の税金にも関わるポイントなので、可能な限り早めに取りかかる必要がある。

【STEP2】会計検査

監査法人による会計検査では、直前期と直前々期の2期分の決算書が審査される。したがって、【STEP1】の課題解決策を検討するプロセスにおいても、会計検査を強く意識しておかなければならない。

形式要件の「虚偽記載または不適正意見等」を満たせるように、早い段階で万全の準備を整えておく必要がある。

【STEP3】申請準備

会計検査が終わったら、いよいよIPOに向けて申請をすることになる。「申請書類を用意する」と言えば簡単に思えるが、実はIPOの申請書類は膨大な数に及ぶ。

また、単に申請書類を作成するだけではなく、形式要件・実質要件と照らし合わせることも必要になるだろう。そのため、申請書類の準備から上場に至るまでは、最短でも半年程度かかると言われている。

申請準備は数週間程度で完了するものではないため、全体のスケジュールを意識しながら地道に進めていくことが重要になる。

上場を考え始めたら専門家への相談を

IPOではさまざまな準備が必要になるので、自社だけで万全の体制を整えることは難しい。そのため、上場を目指しているほとんどの企業は、コンサルティング会社などの専門家を頼っている。

もちろん費用は発生するものの、専門家は上場後も含めてさまざまな経営相談に乗ってくれるので、まずは良きパートナーになる相談先を探すところから始めよう。

著:片山 雄平
1988年生まれのフリーライター兼編集者。2012年からフリーライターとして活動し、2015年には編集者として株式会社YOSCAに参画。金融やビジネス、資産運用系のジャンルを中心に、5,000本以上の執筆・編集経験を持つ。他にも中小企業への取材や他ライターのディレクション等、様々な形でコンテンツ制作に携わっている。
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