ダミアン・ハーストはイギリスのアーティストであり、現代アートを語る上で欠かせない存在である。どんな作品が人々を魅了しているのだろうか。ハーストの高額で取引された作品TOP10とは?

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ハーストは、1990年代に活躍したイギリスの若手作家グループ「YBA(ヤング・ブリティッシュ・アーティスト)」の主要メンバー。1988年、美大生だった時に仲間と開催した生や死がテーマの「フリーズ展」は、その衝撃的な内容で物議を醸し出した歴史的な展覧会だ。ロンドン郊外の倉庫を借り切り、本来であればキュレーターや学芸員が行う出展アーティストの選定、資金調達、カタログ制作など全てを自分達の手で行った。彼を一躍有名にしたのがサメ、羊、牛などをホルマリン漬けにしたシリーズ「自然史」で、これをターニングポイントに人気は急上昇した。

世間をあっと言わせる作品だけでも素晴らしいのだが、特筆すべきなのは、作品の話題性だけではないという点だ。2008年にはギャラリーを通さず自ら《Beautiful Inside My Head Forever》を直接サザビーズのオークションにかけ話題となった。マネジメントはギャラリーを通しを行うことが通例だったアート業界で、制作や企画販売まで自ら行い世間を驚かせた。アートのビジネス化に革命を起こした人物のひとりである。そんなハーストの作品は一体いくらで取引されているのか。これまでに販売されたダミアン・ハーストの最も高価な作品を順に見てみよう。(落札価格は手数料込み、1ドル=110円で計算。)

10位《Memories Of/Moments With You》
落札価格:約4億5,430万円

《Memories Of/Moments With You》
(画像=《Memories Of/Moments With You》)

画像引用:https://www.damienhirst.com

2008年に制作された作品でロンドンのテート・モダンで開催された「Pop Life」展で公開された。ステンレス、金、キュービックジルコニアという素材を用いて作られている。ハーストがギャラリーを通さずそのままオークションに出品した作品のひとつ。サザビーズロンドンで413万ドルで落札された。

落札価格:約4億5,430万円(4,130,000 USD)
オークション開催日:2008年9月15日

9位《Away From The Flock》
落札価格:約4億8,538万円

《Away From The Flock》
(画像=《Away From The Flock》)

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1994年に制作された本作は、ハーストが初めてホルムアルデヒドを使用して制作したターニングポイントともいえる作品。翌年1995年には30歳という若さでターナー賞を受賞した。「Flock」シリーズには4つのバージョンがある。2018年にクリスティーズのオークションで入札開始からわずか30秒で約441万ドルで落札された。

落札価格:約4億8,538万円(4,412,500 USD)
オークション開催日:2018年5月17日

8位《Here Today, Gone Tomorrow》
落札価格:約5億1,370万円

《Here Today, Gone Tomorrow》
(画像=《Here Today, Gone Tomorrow》)

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2008年に制作された作品。ステンレススチールやガラス、アクリルなどでできた複雑な形のケースに魚や魚の骨が並んでいるインスタレーション。同年にロンドンサザビーズで467万ドルで落札された。

落札価格:約5億1,370万円(4,670,000 USD)
オークション開催日:2008年9月15日

7位《The Void》
落札価格:約5億7,750万円

《The Void》
(画像=《The Void》)

画像引用:https://www.damienhirst.com

ハーストが制作した最大かつ初のピルキャビネット作品。2000年に制作された。スライド式のガラス扉のキャビネットの背面は鏡になっており、所狭しと並んだ錠剤がより際立ってみえる。錠剤は手作りで色が塗られたもの。本作は、フィリップスニューヨークで525万ドルで落札された。

落札価格:約5億7,750万円(5,250,000 USD)
オークション開催日:2017年5月18日

6位《Where There’s A Will, There’s A Way》
落札価格:約7億8,650万円

《Where There’s A Will, There’s A Way》
(画像=《Where There’s A Will, There’s A Way》)

画像引用:https://www.sothebys.com

7位に続き、薬をモチーフにしたシリーズで2007年に制作された。《The Void》制作後からは7年が経っているが、キャビネットの形状は同一で、棚はHIV治療薬で埋め尽くされている。この作品は、サザビーズニューヨークで約715万ドルで落札された。

落札価格:約7億8,650万円(7,150,000 USD)
オークション開催日:2008年2月14日

5位《Lullaby Winter》
落札価格:約8億1,752万円

《Lullaby Winter》
(画像=《Lullaby Winter》)

8位、7位に続き、薬をモチーフにしたシリーズがランクイン。棚に並べられた薬の数は、人間が一生のうちに消費する量を表している。この作品は、生きるために薬を飲むという一見矛盾した私たちの行動に問いかけをしている。サザビーズニューヨークで約743万ドルで落札された。

落札価格:約8億1,752万円(7,432,000 USD)
オークション開催日:2007年5月16日

4位《Eternity》
落札価格:約8億1,785万円

《Eternity》
(画像=《Eternity》)

画像引用:https://www.damienhirst.com 蝶や蛾を使ってライフサイクルを表現するハーストの万華鏡シリーズのひとつ。ハーストの制作の軸のひとつである「死者を通じて生者を知る」という思想が表された作品。初期の作品では、2,700匹の蝶を使用し世間を驚かせた。フィリップスロンドンで約744万ドルで落札された。

落札価格:約8億1,785万円(7,435,000 USD)
オークション開催日:2007年10月13日

3位《The Kingdom》
落札価格:約16億8,300万円

《The Kingdom》
(画像=《The Kingdom》)

画像引用:https://www.damienhirst.com

ハーストの代表的な作品のひとつで、透明なガラスのキャビネットの中にイタチザメがホルマリン漬けになっている。ハーストを一躍有名にした「自然史」シリーズで落札額も急激に上がる。本作は、2008年にサザビーズのオークションで約1,530万ドルで落札された。

落札価格:約16億8,300万円(15,300,000 USD)
オークション開催日:2008年9月15日

2位《The golden calf》
落札価格:約18億1,500万円

《The golden calf》
(画像=《The golden calf》)

画像引用:https://www.damienhirst.com

続いてもホルムアルデヒドで保存された動物の作品。白い雄牛の角は18金で作られており、頭の上には金のディスクが付いている。2008年に開催されたサザビーズのオークションで販売され物議を醸したものの、3人の入札者があり、約1650万ドルで落札された。

落札価格:約18億1,500万円(16,500,000 USD)
オークション開催日:2008年9月15日

1位《Lullaby Spring 》
落札価格:約21億2,300万円

《Lullaby Spring 》
(画像=《Lullaby Spring 》)

画像引用:https://www.sothebys.com

ピルキャビネットシリーズのひとつ、《Lullaby Spring》は、6136錠の薬が並んでいる。タイトルにもあるように鮮やかな色で春が表現されている。新しい始まりや明るいイメージの春と錠剤の独特な雰囲気が対比されているようでもある。本作は2007年にサザビーズのオークションで1,930万ドルで落札された。

落札価格:約21億2,300万円(19,300,000 USD)
オークション開催日:2008年9月15日

あなたもハーストのオーナーに!!

ハーストの快進撃はまだまだ終わらない。2017年の大規模個展「Treasures from the WRECK of the Unbelievable」では、2000年前にインド洋に沈んだ「アンビリーバブル号」の宝物をダミアンが海底から発掘し展示する、という壮大な「フェイクストーリー」が大きな話題を呼んだ。2018年には彼が尊敬するピエール・ボナールの抽象画にインスピレーションを受けた新作シリーズ「Veil paintings」を発表している。

活動領域は幅広く、ドレイクのアルバム「Certified Love Boy」のカバーデザイン(本記事表紙)を手掛けたり、U2と共同でエイズ救済のチャリティーオークションを開催したり、アート界のビジネス化にも一役買っている。スタジオ「Science Ltd.」の株式会社化、レストラン経営、出版事業「アザー・クライテリア」でも成功をおさめているハースト。更なる今後の活躍に注目したい。

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文:ANDART編集部