テーマパークの運営会社は、コロナ禍で地獄を見た。感染防止に向けて休園や入場制限を余儀無くされ、業績は大ダメージを受けた。日本屈指のテーマパークであるディズニーランドも例外ではない。今回はアフターコロナを見据えたディズニーランドの経営再建策を解説する。
2021年3月期の通期決算は散々な結果に
ディズニーランドを運営するオリエンタルランドの2021年3月期の通期決算(2020年4月~2021年3月)は、散々な結果だった。
売上高は前期比63.3%減の1,705億8,100万円、営業利益は赤字に転落して459億8,900万円のマイナス、経常利益も赤字に転落して492億500万円のマイナスとなった。最終損益は、前期は622億1,700万円のプラスだったが、541億9,000万円の赤字を計上した。
オリエンタルランドは、東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの「テーマパーク事業」を主力事業としながら、ディズニーアンバサダーホテルなどの「ホテル事業」も展開している。2021年3月期は、いずれの事業でも売上高・営業利益ともに厳しい結果となった。
V字回復を果たすために
臨時休園などが業績の悪化につながった形だ。コロナ禍は不可抗力であり、このような結果を免れることはできなかっただろう。ただし、コロナ禍が収まったあと見事にV字回復を果たせば、この期間のマイナス分は早期に相殺できる。
そして、オリエンタルランドが早期にマイナス分を相殺するために掲げた戦略のひとつが「ダイナミックプライシング」(変動料金制)の導入だ。
ダイナミックプライシング(変動料金制)の導入
ダイナミックプライシングはすでに2021年3月から導入されており、時期によって「1デーパスポート」などの価格が変わるようにした。混んでいる時期はこれまでの価格よりも高くし、閑散期は価格を現在と同じに据え置く形だ。
混んでいる時期にチケット料金が高くなれば、結果として入場客数はある程度抑制される。そうすれば、アトラクションの待ち時間がこれまでより短くなり、その結果、入場客の満足度が上がることが見込まれる。
そして入場客が抑制されても、混んでいる時期のチケット料金は上がるため、売上は落ちないことが予想される。
多様なゲストニーズに応えられる選択肢の提供
ダイナミックプライシングの導入以外にも、オリエンタルランドは新たな取り組みを始めた。ゲスト1人当たりの売上高を上げるために、「ディスカバー・ザ・マジック」や「スイートタイムセレクション」をスタートさせた。
ディスカバー・ザ・マジックは、キャストたちがアトラクションなどに関するストーリーやエピソードを紹介するテーマパーク内ツアーだ。スイートタイムセレクションは、これまでにはパーク内で提供していなかったスイーツビュッフェとなっている。
来場したゲストにより多くのお金を落としてもらえるようになれば、利益率は高まっていく。
V字回復のスピード感に注目
ちなみにオリエンタルランドは、直近の決算として2021年4~9月の業績を発表しており、上期が終わった時点では営業利益はまだマイナスだ。しかし、売上高は前年同期比65.0%増の975億6,800万円となるなど、業績の回復ムードが徐々に高まっている。
コロナ禍で経営に大ダメージを受けた企業は、業種によってはかなり多い。しかし、業績は「過去」のものだ。そこから復活するためには、今から何をするかが非常に重要となる。厳しい状況でもチャレンジをし続けることが求められるわけだ。
ダイナミックプライシングや新たなツアーなどの新しい取り組みで、オリエンタルランドが今後どれほどのスピード感で業績を回復してくるのか、引き続き注目したい。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)