エネルギーリソースアグリゲーションビジネス,ERAB,2019年
(写真=PopTika/Shutterstock.com)

2030年度のエネルギーリソースアグリゲーションビジネス(ERAB)市場規模を730億円と予測

~ERAB市場は2019年度:44億円(見込)から立ち上がり、電力システム改革の推進と再生可能エネルギーの導入拡大を両立させ、市場成長の見通し~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)では、2019年度の国内ERAB市場に関する調査を実施し、エネルギーリソースの特徴、参入事業者の動向、将来展望を明らかにした。

エネルギーリソースアグリゲーションビジネス(ERAB)市場規模の予測

エネルギーリソースアグリゲーションビジネス(ERAB)市場規模の予測

1.市場概況

従来、需要家エネルギーリソース(DSR:Demand Side Resource)を活用するDR(デマンドレスポンス、以下DR)や分散型エネリギーリソース(DER:Distributed Energy Resource)を活用するVPP(バーチャルパワープラント、以下VPP)による電力需要抑制では、旧一般電気事業者が大口需要家と需給調整契約したり、新電力の小売電気事業者が一部の需要家と電力抑制契約等をしたりして対応していた。しかし、今後の拡大が期待されるDR・VPPでは、多数の需要家を束ねるアグリゲーターが介在することにより、DSRやDERのエネルギーリソースを有効に活用し、家庭も含めた多様な需要家が電力取引に参加できるようになる。

エネルギーリソースアグリゲーションビジネス(ERAB:Energy Resource Aggregation Business)の市場規模は、ERAB事業者がDR・VPPにより得る収入(DR・VPP契約およびそれに基づく電力供給の対価・報酬)の合計である。ERABの市場は、従来からの調整力公募による市場と新電力会社におけるバランシングの市場に加えて、2020年に創設される予定の容量市場と2021年度に創設される需給調整市場が立ち上がることにより拡大していく見込みである。2019年度のERAB市場規模(事業者売上高ベース)は44億円を見込む。

2.注目トピック

エネルギーリソースとしての蓄電池

蓄電池は、今後のDR・VPPにおいて最も重要なエネルギーリソースである。蓄電池の普及と活用可能性がERABの市場拡大を左右することになる。蓄電池は高速で応答できる制御性の高さから、火力発電を置き換えるリソースとされている。ただし、蓄電池は発電機と異なり電力を生むわけではないので、その分、低コスト化を図る必要がある。また、蓄電池は火力発電所を積極的に置き換えていくのではなく、蓄電池、EV(Electric Vehicle)、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)が広く普及した上で、容量の余剰分があれば、それらを安価に調達していくというスタンスである。

今後はEVに搭載される蓄電池もDR・VPPの対象になり、V2X(V2H、V2B、V2G)の機能が期待されている。EVは移動するため、地点を特定した制御は難しいが、EVの個々の位置情報や充電状況を把握できれば、移動型の蓄電リソースとして高精度制御も可能になる。高精度のDR・VPPを実現するためには、電力の需要予測とEVの動向予測を行なえるシステムを構築していく必要がある。ただし、個別のEVの充放電制御の際には、EVユーザーに負担のかからない方法で制御を行なう形態がよい。

3.将来展望

今後創設される需給調整市場や容量市場において、ERAB事業者やエネルギーリソースがどの程度の報酬を得られるかは、現状において未だ見通せていない情況である。これらの市場は、もともと旧一般電気事業者が社内業務として対応していた仕事を外部に切り出したものであり、現段階では経済的価値を明確にしにくい市場である。それでも、DR・VPPのためのERAB市場は、再生可能エネルギー電力を拡大し、火力発電を補完する市場として必要性が高まることに間違いはない。

エネルギーアグリゲーションビジネス(ERAB)市場規模(事業者売上高ベース)は、2021年度には75億円と本格的に立ち上がり、2025年度には365億円、2030年度には730億円に達すると予測する。