人事評価制度を導入し、実際に運用がスタートすると、
思わぬトラブルや悩みが出てくるものです。
そんなときどう対処すべきか、Q&A形式で解説します。
Q.売上が不安定ななか、
どう賃金表を作成すればいい?
A.労働分配率を加味した給与設定を明文化する
賃金表は事務所のモデル年収を決定することで作成できますが、
経済情勢による変動は反映されません。
ですから基本の賃金表のほかに、
労働分配率を加味した査定ルールをプラスする方法があります。
事務所の経営がひっ迫しない労働分配率を設定して、
年度毎の粗利をもとに、どこの範囲に当てはまるか変動の幅を持たせておきます。
ほかにも、業務フローをもとに
個々の年間売上と年収のバランスで調整できる幅を持たせておくなど、
給与設計に調整できる項目を設計しておけば、
職員からの不満も最小限に抑えることができるでしょう。
Q.成果給に移行するまでに時間がかかってしまう……
A.ヒアリングをしたうえで成果に重点をおいた評価項目の策定を
事務所の目指す組織像と合っていないのであれば、制度見直しが必要です。
評価項目のウエイトを成果に重点をおくように変更します。
新しい制度に移行する場合は、運用前に必ず給与シミュレーションをすること。
万が一、給与が下がる場合は差額を加味して、
調整手当を支給するのが良いでしょう。
その場合、調整手当の支給期間を設けておくことを忘れずに。
Q.給与が低いという理由で職員が退職してしまった
A.ヒアリングして低いと思った根拠を探る
なぜ給与が低いと感じたのか、根拠をヒアリングしてみましょう。
既存の職員に対して給与の満足度に関するアンケートを実施してみるのも有効な手段です。
その結果をもとに、評価基準や査定ルールの見直し策を決定してください。
Q.既存の職員よりも、
最近入社した職員の方が給与が高くなってしまう……
A.職員への説明がすべて
降給できるルール導入も必要
既存職員には
「入社時の給与に関しては、今後の期待値も加味して高くなるケースがある」ことを、
新入社員には
「入社後は実績と今後の期待によって降給の可能性がある」ことを
理解してもらうことが必要です。
また、トラブルを避けるためにも、給与は非公開にしておくことが大前提です。
Q.制度が必要だと思って策定したが、
効果が見えない。どう見直すべき?
A.大切なのは、策定後の運用&継続的な見直し
効果が出てない場合、計画通りに運用できていないのかもしれません。
複雑すぎる、項目が曖昧、評価の仕方がわからないなど、
職員に課題をヒアリングして、継続的に見直しを行いましょう。
Q.評価・面談がスムーズに行く方法を教えて欲しい
A.評価・面談ルールの策定と日ごろの関係性構築がカギ
まずは、評価するための素材が揃っていることが大切です。
例えば、職員が作成した目標管理シートや、
日頃の業務内容・ボリュームが見える管理シートなど。
目標達成のためのプロセスや成果を客観的に判断できるものが必要です。
次に、評価ルールの明文化。業務達成度や、業務に向かう意欲や意識など、
評価項目が増えるほど、評価に時間を要します。
また、評価者によって評価基準にバラつきがあると、全体の調整にも時間がかかります。
ですから、評価面談のルールや評価のポイント、
昇給・昇格のルールなどを明文化しておきます。
そして、職員全員にルールを説明し、理解してもらうこと。
運用後には見直しも必要です。
もちろん、日ごろから部下との信頼関係を構築しておくことも、
評価や面談がスムーズにいく方法の一つかもしれません。
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