2021年10月30日・31日に開催されたANDARTオーナー向けの鑑賞イベント「WEANDART」の中で、若手アーティストの作品展「KIBI」にご参加いただいた三澤亮介さんに制作のテーマや今後の目標などを伺いました。本記事では当日の展示の模様とともにインタビュー内容をお届けします。

三澤亮介
(画像=三澤亮介)
三澤亮介

福井県出身の現代アーティスト。 立教大学映像身体学科卒業後に、写真家を経て2020年より現代アーティストの活動を本格化させた。作品の中で目指すのは、「決められた答え」の中にデジタルの力で自分の秩序(ルール)を持ち込むこと。それが自身の欠陥により生じた世界と自身との距離(ズレ)を認識する礎となり、固定概念のアップデートに繋がると信じ、使命と捉えている。

主な制作方法としては、自ら撮影した写真・パブリックドメインとなっているデジタルイメージ・図録のスキャニング等による画像データをPhotoshop等でデジタルマニュピレートし解体/再構成を行う。徹底したデジタル起点からの視点により、写真制作からペインティングまでをクロスオーバーさせた手法を用いる。

ーー作品の制作テーマと、制作する上で大切にしていることやこだわりを教えてください

作品のテーマは「自分のルールを持ち込むこと」です。僕はもともとある作品などをPhotoshopなどで加工し、新しい作品にしていますが、それは昔の人が作った作品やパブリックドメインになっているものをバトンのような形で現代に持ってきてアップデートしていくことだと思っています。元となっている作品は過去のアーティストが作ったいわゆる“正解”で“ゴール”です。しかし、僕はこの世の全てのことに対して決められた正解が苦手なので、新しいデジタルの技術を使って自分のルールを持ち込み、元の作品を基に更新/アップデートすることで決められた正解を乗り越えていくことがテーマです。

WEANDART〈KIBI〉展示模様
(画像=WEANDART〈KIBI〉展示模様)

制作する上で気をつけていることは、元の作品のイメージを踏襲することです。風景画だったら、元の作品からインスピレーションを受けた風景を描いたり、ポートレートだったら、元の作品から受けた印象や自分の今の気持ちを乗せるなどの意識をしています。最近は人物を描くポートレートの作品が増えてきて、人との距離や世界との距離を作品を通して測っています。

三澤亮介《Absolute Boy》
(画像=三澤亮介《Absolute Boy》)

尊敬するアーティストは、時代を超えて存在する人

ーー好きなアーティストや影響されたアーティストと、その理由を教えてください

海外アーティストだとアンディ・ウォーホルです。彼は死後長年経っているのに、今でも彼の作品とのコラボレーションやコレクションが出たりしているし、新しい概念を今の時代に残すなど時代を超えて存在しているところを尊敬しているし憧れています。自分もそういうアーティストになりたいです。

日本人だと、北野武(ビートたけし)が好きです。僕はもともと映像の勉強をしていて、彼が作る映像の世界観や彼が劇中で使う音楽も好きです。人間の寂しさ、儚さ、馬鹿らしさをちゃんと表現できるところがすごいし、かっこいいと思います。映画『ソナチネ』がすごく好きで、同タイトルの作品を作ったりもしています。

ーー確かにお二人とも新しい概念を作り出したという部分が三澤さんの制作のテーマと共通していますね。

そうですね。アンディ・ウォーホルがシルクスクリーン作品を世に広めたり、北野武がお笑い芸人をやりながら映画監督をしたり、賛否両論あると思いますがかっこいいと思います。

コロナをきっかけに写真家から現代アーティストに転換

ーー最近、制作に対して影響や着想を受けた体験はありましたか?

コロナですね。コロナの前は雑誌や広告などの商業写真を撮っていたので、クリエイターやデザインの意識が強く、絵を描いたこともありませんでした。もともと人物を映すポートレートの写真を撮影していたのですが、コロナで人に会えなくなってからはやることがなくなってしまって、部屋で一人でデジタルだけで作れるものを作り始めたのがきっかけで今の作風に変化していきました。

ーー今の作風になる前に撮影されていた写真作品は、現在の作品のようなデジタル加工はされていたんですか?

ほとんどしていません。ありのままを写すことができるのが写真の良さだと思っていたので、初めは合成などの技法も好きではありませんでした。デジタルマニュピレーションを作品の主軸となる技法に選んだ段階で、自分はいわゆる正統な写真家ではないと考えているので、今は現代アーティストと名乗っています。

三澤亮介《Absolute Sunset》
(画像=三澤亮介《Absolute Sunset》)

コロナ禍を経て、自分をより信じられるように

ーーコロナ禍を経て物事の考え方に変化はありましたか?またそれによって制作への影響はありましたか?

コロナによって写真家から今のデジタル加工の作風に変わったので、大きく影響はありましたね。僕はもともと大学卒業後は広告代理店で働いていたのですが、25歳の時に本格的に写真をやりたくなり、周りの反対もありましたが、やりたいことをやらないことの方がリスクだと思い写真家になりました。

写真家としては、すぐに大きな画廊で展示ができたり、ブランドとコラボレーションするなど順調でしたが、そんな中コロナ禍になってしまい、今のようなデジタル加工の作品を制作するようになりました。周りの人からは「写真はもうやらないの?」とか「なんでもやる奴」と思われてるかもしれないけど、僕からしたら自然な流れで、自分の作品をもって自分の可能性をより遠くまで飛ばすために選択したことです。日本だと写真をアートとして販売する土壌が少ないということも写真をやめた理由の一つです。コロナで今の作品を作るようになってからは、自分の可能性をより信じることができるようになったと思います。

三澤亮介《MOOD#3》
(画像=三澤亮介《MOOD#3》)

目標は人を超えて“概念”になること

ーー今後の目標があれば教えてください

アンディ・ウォーホルのような世界的なスターになることです。コミュニケーションをする上で介在する、時代や国などのあらゆる距離をフラットにし、僕の作品を通じて世界中の人同士がコミュニケーションを取ることができるくらい、歴史的で影響力のある作家になりたいです。新しい概念を作るという制作のテーマもここにつながると思います。最後は人を超えた“概念”になりたいです。

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文・写真:ANDART編集部