東京都・神宮前にある「NANZUKA UNDERGROUND」では、2021年10月9日~11月7日の会期で、ワハブ・サヒードの個展「SOME DAYS ARE DIAMOND」とグループ展「Prism」が開催された。本記事では、実際に訪問した際の展示の様子を紹介する。
ナイジェリア人若手アーティスト、世界初のデビュー個展
まず、ギャラリー1Fに展示されているのは、ナイジェリア出身の若手アーティスト、ワハブ・サヒードの作品。サヒードは、1998年、南大西洋に面するナイジェリア最大の都市ラゴスに生まれ、国内で最高の美術学校の1つであるヤバ工科大学を2019年に卒業、現在もラゴスにスタジオを構えるペインター。美術学校の学費を稼ぐために、何百枚という似顔絵を描き続け、肖像画を描くにおいて重要な、精神面を捉えるということを会得したという。
そんな期待の次世代アーティストであるワハブ・サヒード。2021年に開催された「Art Basel Hong Kong 2021」ではグループ展に参加したが、彼自身の個展は今回が初めて。若手ながら堂々とした佇まいの作品たちを間近で見ることができるチャンスは貴重だ。
大型作品が並ぶ圧巻の空間
ワハブ・サヒードの作品が展示されているギャラリー1Fでは、天井の高い空間に大型の作品がずらりと並んでいる。一つ一つの作品の彩度が高く、強烈なエネルギーを放って並んでいる光景はまさに圧巻。遠目から見るだけでもそのパワーに驚かされる。
今回展示されている新作キャンバスペインティングは、作者の友人や知人の肖像画。近年の新しい世代のアフリカ人アーティストは、黒人の肖像画を描くことで彼らの生命と尊厳を表しているのだというが、黒人の肌の色と、服、背景の鮮やかな色合いのコントラストが各々の色をさらに際立たせ、相乗効果的に作品全体のインパクトを強めている。
作品一つ一つをよく見てみると、人物が着ている服は、細かい皺まで描き立体的に見せているものと、皺ひとつなくフラットに描かれているものがあったり、遠近を大袈裟に強調したような床のタイルの模様など小さな違和感に気づくことがある。アカデミックで修行を積んだからこそ生み出される遊び心や独自性が、鑑賞者をより一層惹きつけるスパイスになっているのかもしれない。
さらに作品に近づいて見てみると、人物の肌に木炭で描かれた線が入っているのがわかる。黒色の肌に黒色の木炭の線なので近づいて見て初めて気が付いたが、注目してみるとダイナミックに描き足された線の躍動感が印象的。また、白色やピンク、青色のチョークで描かれた線も、人物の肌に立体感や複雑性をもたらし、黒人肖像画ならではの素肌の奥深さを感じる。
展覧会概要
SOME DAYS ARE DIAMOND
会期:2021年10月9日 – 11月7日 火曜日 – 日曜日 11:00-19:00 *月曜、祝日休業
場所:NANZUKA UNDERGROUND (1F) 東京都渋谷区神宮前3-30-10
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7人の作家の個性が光るグループ展
ギャラリー2Fでは、1Fと同じく2021年10月9日~11月7日の会期で、グループ展「Prism」が開催されている。本展は、Julio Anaya Cabanding、Jang Koal、中村哲也、大平龍一、Cleon Peterson、TOKI、Yoon Hyupの計7人のアーティストの作品が取り上げられており、彫刻や絵画、写真など技法を問わず、また出身国もバラバラな作家たちが一同に集結している。
空間に入ってまず目に入るのが、中村哲也のジェット機やレーシングカーを模した流線型の彫刻作品「レプリカシリーズ」。その手前には大平龍一による、日本の改造車文化を取り上げたレリーフ作品が展示されている。奥に進むとアカデミックな静物画だが、実は額も含めて平面のダンボールに描かれたJulio Anaya Cabanding(フリオ・アナジャ・キャバンディング)の作品や、最新技術を駆使して、幻想的な写真を撮影するTOKIの作品など、それぞれ全く異なる魅力を持つ作家たちの作品が並んでいる。一度に多数の作家の作品を見ることができ、自分のお気に入りの作家を見つける良い機会だった。
展覧会概要
Prism
会期:2021年10月9日 – 11月7日 火曜日 – 日曜日 11:00-19:00*月曜、祝日休業
場所:NANZUKA UNDERGROUND (2F) 東京都渋谷区神宮前3-30-10
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文・写真:ANDART編集部