MAHO KUBOTA GALLERYに所属し、コレクターも多く存在する現在大注目の彫刻家・安井鷹之介。オリジナルの制作方法と日本人離れしたセンスから生み出される作品はファンを獲得し続けている。今後の日本アート界の興隆を担うアーティストの作品を構成する制作方法やその作品の魅力とは?
【Profile】
1993年、愛知県生まれ。東京芸術大学彫刻科卒業。彫刻制作を主軸に、彫刻の制作手法を採用した絵画も制作している。石膏と布を使ってボリュームと質感を作り上げる作品の存在感は唯一無二のもの。日本のアーティストであるということを殆ど感じさせず、世界のアートの最前線の文脈と直接的に接続した洗練された表現が注目されている。アートの歴史を踏襲しながら現代的で開かれた作品を作り続ける姿が幅広い層の共感を呼んでいる。
唯一無二の洗練された彫刻
「彫刻」というと、《ミロのヴィーナス》や《ダヴィデ像》、もしくは美術のデッサンの授業で使った首から上の石膏像などを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。そのどれもが伝統的かつ重厚な雰囲気を持ち合わせているため、彫刻全体に対して親しみを覚えづらいこともあるだろう。しかし、安井鷹之介の作品はそうした彫刻のイメージを覆す新しさやスタイリッシュさが存在している。その実現を助ける要素とは一体何だろうか。
ユニークな制作方法
まず一つ目に安井鷹之介のオリジナリティはその制作方法にある。彫刻作品と一つに言ってもその種類は数多い。例えば、木材に石、粘土、ガラス、金属などの様々な素材に、その素材に合わせて彫刻刀や粘土ヘラなどの用いられるツールも変化するが、安井鷹之介の場合は、学生時代に始めた「石膏」と「布」で造形するというユニークなもの。それによってでこぼことした表面が形成されて独特な質感や立体感が生まれ、つるんとした表面の彫刻作品とは違った味わい深さがある。
画像引用:https://dearart.jp/
画像引用:https://www.mahokubota.com/
古くから続く伝統的な彫刻には、大理石や青銅などの“硬い”素材が使用されることが主流だった。その硬い素材を用いた「強い彫刻」に対して、石膏という自らの手で形を変えられる柔らかい素材に着目した安井鷹之介は、自身の彫刻を「弱い彫刻」と呼んでいるそうだ。それは悪い意味の弱さではなく、「身体性」と「流動性」をもって「変化する」「自由で」「流動的な」彫刻のことなのかもしれない。おそらく、見る人はその「柔軟さ」にこれまでの彫刻とは違う新しさや洗練さを感じて魅了されるのではないだろうか。(安井鷹之介個展「The Plaster Age」より。参考)
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平面に落とし込まれた立体と色彩
安井鷹之介を唯一無二にしているのは、制作方法だけにあらず、絶妙な色彩感覚も大きく寄与している。特に平面のペインティング作品に見られる色彩は必見。このペインティング作品も立体と同じ方法で制作されている。
通常、絵画はキャンバスと油絵具が使われるのが一般的だが、安井鷹之介のペインティング作品はキャンバスではなく、石膏でベースである支持体から作るところが特徴。そのため平面でありながら、油絵具だけでは出しきれない立体感とボリューム感を併せ持つ。彫刻の良さを平面に落とし込んだ作品である。
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そして色彩には決して野暮ったさがない。それぞれの作品に様々な色が使われているが、どの色も互いに邪魔しない繊細なバランスで成り立っている。存在感はあるのだけれども悪目立ちせずに、静かで、見る人の心にすっと入るような色だ。また立体に当たる光が生み出す陰影によって、絵の表情が変わるところも見応えがある。
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伝統的でありながらも、新しくオリジナルな制作方法で生み出される作品たち。シンプルに色彩の美しさに目を奪われるし、石膏と布を使って「弱さ」を孕んで作り上げられた作品には、良い意味での「脆さ」を感じる情緒感が漂っている。一過性のものを微塵も感じさせない作品を制作し続ける安井鷹之介。今後の活動には引き続き注目だ。
ANDARTでの共同保有が決定
2021年6月に開催された個展「The Plaster Age」より、等身大彫刻《Oscar》がANDARTで共同保有が決定。販売開始までしばらくお待ち下さい。作品詳細はこちらから。
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文:ANDART編集部