アートやグラフィック、映像、イラストレーション、絵本などジャンルを超えた作品が一堂に会する展覧会「WAVE TOKYO 2021」が3331 Arts Chiyodaで開催され、2021年10月17日で幕を閉じた。新世代の若手アーティストからベテランまで、日本のメディアアートの未来を予測するクリエーター111人が集結した本展は、ロサンゼルスで同時開催され、2022年にはサンパウロ、ロンドンへと巡回する。空山基、湯村輝彦、宇野亞喜良、寺田克也、吉田ユニ、浅野忠信、友沢こたお、片桐仁など、多彩な作品が並ぶ圧倒的な空間で、現在(いま)を体感させた本展の様子をお届け。

WAVE TOKYO 2021
(画像=WAVE TOKYO 2021)

入り口を入ると、左右に広く抜けた空間が広がり、真っ白な壁を色とりどりの作品が埋め尽くす。どこから、どれから見ようかと思わず迷ってしまうくらい、それぞれの作品が強いエネルギーを放っているようにさえ感じられる。

WAVE TOKYO 2021
(画像=WAVE TOKYO 2021)
WAVE TOKYO 2021
(画像=WAVE TOKYO 2021)

特に、入ってすぐに目に入ってくるのは、今大注目の若手作家・友沢こたおの作品。スライム状の物質と有機的なモチーフを組み合わせた独特な人物画は、一度見たら忘れられないインパクトの強さがある。思わず「写真?」と疑ってしまうほどの写実性の高さで、近くで見ると、その緻密で精密な筆さばきに驚かされる。インターネット上のスクリーンからは100%マックスに感じることのできない質感を、間近で鑑賞できるのがオフライン展示の最大の持ち味だ。

WAVE TOKYO 2021
(画像=WAVE TOKYO 2021)
WAVE TOKYO 2021
(画像=WAVE TOKYO 2021)

奥へ進むと目に飛び込んでくるのは、俳優としても活躍する片桐仁が制作した作品。不気味な顔をしたサメの頭の部分は、ゲーム機「Nintendo Switch」を覆うように作られている。そして奥には、注目のファッションデザイナー・Anna Choiによる、見事なテーラリングの赤一色の服。それぞれどんな意図で作られたのか、どんなメッセージが込められているのか?くるりと歩きながら作品を眺めていると、想像が広がる。

WAVE TOKYO 2021
(画像=WAVE TOKYO 2021)
WAVE TOKYO 2021
(画像=WAVE TOKYO 2021)

さまざまなアーティストの作品が背後を彩り、中には人気アートディレクター・吉田ユニの作品も。キャンバスや写真などの平面作品と立体作品。そして風景画やアニメ風の人物画、グラフィックから油彩まで、良い意味でバラバラな統一感のなさが静かでエネルギッシュな空間をつくる。

一番右の作品:吉田ユニ
(画像=一番右の作品:吉田ユニ)

足を進めて違うセクションに行くと、また少し違った雰囲気を楽しめる。「セクシーロボット」で知られる空山基(そらやま はじめ)の作品や、フランスを拠点に活動する画家・田中麻記子の動画作品が鎮座DOPENESSの音楽に合わせて流れる。

WAVE TOKYO 2021
(画像=WAVE TOKYO 2021)
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WAVE TOKYO 2021
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WAVE TOKYO 2021
(画像=WAVE TOKYO 2021)

本展の企画・キュレーションを担当した、ヒロ杉山が手がける作品は遠目に見ると黒のシルエットしか見えないが、厚塗りした絵の具で対象の立体感を出している。黒一色の突起だけで表現された目の鋭さや顔の表情は、余計なものが削ぎ落とされた分、訴えかける力が増しているようにも感じる。位置が変わると見えてくるものや感じ方が変わるのは、アートの面白いところ。

WAVE TOKYO 2021
(画像=WAVE TOKYO 2021)
WAVE TOKYO 2021
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WAVE TOKYO 2021
(画像=WAVE TOKYO 2021)

本展で一際目を引くのが、「ヘタうまスタイル」の創始者テリー・ジョンスンこと、湯村輝彦の作品。「ヘタ」と「うまい」のバランスが絶妙で、クスッと笑わせてくれる絵の中のコトバも魅力的。マスクをつけた絵は、まさに私たちの「現在(いま)」を表しているようだ。

WAVE TOKYO 2021
(画像=WAVE TOKYO 2021)
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WAVE TOKYO 2021
(画像=WAVE TOKYO 2021)

「現在(いま)」というと、石浦克(TBG design.)のQRコードを作品の一部のように配置する手法も、インターネットの発達が進み、SNSでのコミュニケーションが必須な現代ならではである。

WAVE TOKYO 2021
(画像=WAVE TOKYO 2021)

そして、写真や音楽などのデジタル化も進みきった今、アナログレコードやカセットテープ、インスタントカメラなどのアナログに回帰する人も増えている。一定の年代の人は懐かしく感じるであろう、一昔前にブームになった「チェキ」で制作された米原康正の作品は、「過去」と「現在(いま)」の感覚がミックスされたポートレート作品だ。

WAVE TOKYO 2021
(画像=WAVE TOKYO 2021)

新世代の若手からベテランまで、総勢111人ものクリエーターがオンリーワンの個性を持ち寄り、各作品がその作家特有の空気を放ち合う。年代やジャンル、バックグラウンドもバラバラな中で、ただ一つ共通しているのは、日本アートを表す「現在(いま)」であることだ。

一滴の水が集まると海になり、そこへ風が吹くと大きな「波(WAVE)」が生まれるように、日本アートの波は世界も揺れ動かしていくだろう。「WAVE TOKYO 2021」は、そんな力強さを感じられる展覧会だ。次回の開催も待ち遠しい。

WAVE TOKYO 2021

WAVE TOKYO 2021
(画像=WAVE TOKYO 2021)

【主催・運営】株式会社エンライトメント  WAVE2021 実⾏委員会
【企画・キュレーション】⾼橋キンタロー ヒロ杉⼭
【WEB SITE】http://elm-art.com/wave/

Artists

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取材・文・写真:千葉ナツミ