昨今「FIRE」という考え方への関心が高まりつつあります。FIREとは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字をとった言葉であり、直訳すると「経済的自立と早期リタイア」という意味になります。FIREは投資などの不労所得で生計を立てるのが一般的です。しかし、なかなか投資だけで安定的な収入を得られるほどの金融資産をもっている方は少ないでしょう。
本記事では、FIREと同様に早期退職の一種である「セミリタイア」について紹介します。セミリタイアであれば、投資だけで生活できるほどの資産がなくても早期退職ができます。わかりやすく説明しますので、ぜひ参考にしてください。
セミリタイアとは
セミリタイアとは、早期退職の一種です。完全に仕事を辞する退職とは違い、一定の仕事 (収入源)を残しつつ、自分の自由な時間を増やすことを指します。完全に仕事を辞めるわけではありませんが、かなり仕事量を抑えるため、現役時代に比べて自分の自由な時間は格段に増えます。
完全退職の場合、収入源がなくなるため、退職するまでに蓄えた資産だけでその後の生活をしなければなりません。当然、かなり大きな資産が必要になり、ハードルは高くなります。
一方セミリタイアの場合は、リタイア後も一定の収入は確保しているので、完全に仕事を辞める退職ほどの金融資産は不要です。退職に比べてセミリタイアはかなりハードルが低いといえるでしょう。
セミリタイアは、正社員からパートやアルバイトに切り替えて、自由な時間を確保する方法が主流です。しかし最近は、ネットを活用した在宅業務で生計を立てるなど選択肢が広くあります。
収入は現役時代に比べると大きく減るのが一般的です。蓄えてきた金融資産も取り崩さなければならないため、金銭に不安を感じる方も多いでしょう。そうした不安を取り除くために、セミリタイアを選択された方の多くは投資を行っています。
セミリタイアするメリット
セミリタイアにはさまざまなメリットがありますが、大きくは以下の2つに集約されます。
- 社会との接点を保ったまま、自由に使える時間が増える
- 適度なペースで仕事に取り組める
それぞれについて見てまいりましょう。
社会との接点を保ったまま、自由に使える時間が増える
言わずもがなですが、正社員時代に比べて自由な時間が圧倒的に増えます。セミリタイア前はできなかった、家族のために時間を作ることや、自身の趣味に時間を充てることなどができるようになるでしょう。セミリタイアは、完全に仕事を辞めるわけではないため、社会との接点を保つことが可能です。完全リタイアをすると社会との接点がなくなり、まったく刺激がない生活を送ることになってしまう方も一定数いらっしゃいます。
もちろん社会との接点はなにも仕事だけではなく、地域活動やボランティアなどをすることによっても得られます。しかし、長年仕事に没頭してきた方はとくに、仕事以外のコミュニティとの接点がない方は多いのではないでしょうか。
仕事を退職してから社会との接点がないと、刺激がなくて認知機能に支障をきたす可能性もあります。完全リタイアにはメリットだけではなく、デメリットがあることも把握しておきましょう。
その点セミリタイアの場合、自由な時間を確保しながら自分のペースで仕事を行えます。仕事をする時間は社員時代に比べて短くなりますが、社会との接点を保つことが可能です。社会との接点を保つことで一定の刺激を受けられますし、仕事先を通して新たな友人などのネットワークも手に入れられるでしょう。新しいことにチャレンジもしやすくなります。このように、社会との接点を保ちながら自由な時間を確保できることは、セミリタイアの大きなメリットであり特徴です。
適度なペースで仕事に取り組める
以前に比べて適度なペースで仕事に取り組めるのは、セミリタイアをする大きなメリットです。
自分で時間が仕事量を調節しながら取り組めるため、ストレスが軽減される人も多いでしょう。
正社員ではなくパートやアルバイトに働き方を切り替えれば、仕事の責任も以前に比べて大きく減少します。このように、セミリタイアをすることで仕事におけるストレスを大幅に減らすことが可能です。
セミリタイアする注意点
セミリタイアにはさまざまなメリットがありますが、注意点もあります。この章では、とくに注意すべき点について5つ紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
- 社会的信用が得づらい
- 明確な目標がないとやりがいを感じないかもしれない
- 老後資金の準備をしっかり行う必要がある
- 保障や福利厚生がなくなる
- 健康面に注意が必要
社会的信用が得づらい
セミリタイアをすると、社会的信用を得づらくなります。とくにセミリタイア前が会社員だった場合、それを実感する局面はたくさんあるでしょう。
たとえば、会社員時代はクレジットカードやローンの審査を簡単に通っていたのに、セミリタイアをした瞬間に審査が通りづらくなった方は多いのではないでしょうか。また、賃貸物件の入居審査にも通りにくくなることが一般的です。このように、社会的信用が得づらくなってしまうのは、セミリタイアをする大きなデメリットといえます。
明確な目標がないとやりがいを感じないかもしれない
セミリタイアをすると、以前より多くの時間を自由に使えるようになります。しかし多くの時間を自由に使えても、明確な目標がないと日々にやりがいを感じないかもしれません。無気力になり、時間が過ぎるのを待っているような生活だと、非常に辛くなってしまいます。セミリタイアは、目標を達成するための手段というイメージを持たれることをお勧めします。
老後資金の準備をしっかり行う必要がある
セミリタイアをすると、会社員時代に比べて、将来受け取れる公的年金の金額が少なくなる可能性があります。なぜなら、厚生年金を途中で脱退することになるからです。もちろん、セミリタイアをしたあとも、iDeCoや小規模企業共済など老後資金を準備する方法はたくさんありますが、厚生年金を脱退した分、老後資金が少なくなってしまう可能性を考慮すると、老後資金を貯める計画は会社員時代以上にしっかり行わなければなりません。
保障や福利厚生がなくなる
セミリタイアをすると、会社員時代に受けていたさまざまな保障や福利厚生がなくなります。多くの企業では、病気や怪我などで入院した場合、組合などから見舞金が出ます。そのほかにも、さまざまな福利厚生を用意している企業が多いです。しかしセミリタイアをすると、そのような保障や福利厚生は一切なくなります。いざというときに困らないよう、資金を貯めておく必要があるでしょう。
健康面に注意が必要
セミリタイアをすると、会社員時代に比べて時間の制約がありません。毎日同じ時間に仕事が始まるわけではないので、不規則な生活を送るようになる方も一定数はいらっしゃるでしょう。
また、暴飲暴食をしたり、運動不足になったりなど、健康面に問題が出る可能性も考えられます。会社での健康診断も受けられないため、定期的に自分自身で健康診断を受ける必要も出てくるでしょう。身体を動かすことが好きな方や、日ごろから健康に気をつかっている方は問題ありませんが、健康面には注意が必要です。
セミリタイアするにあたっての準備
セミリタイアを成功させるためには、セミリタイアをする前にしっかり準備をする必要があります。セミリタイアを成功させるための主な準備は、以下の3つです。
- STEP1:かかる生活費を把握する
- STEP2:十分な資金を用意する
- STEP3:今後の人生で受け取れるお金を確認する
セミリタイアを成功させるための準備について、わかりやすく解説します。
STEP1:かかる生活費を把握する
セミリタイアを成功させるためには、まずかかる生活費を把握するようにしましょう。総務省が発表している「家計調査報告」 によると、2人以上世帯の生活費の平均は以下のとおりです。
こちらの表には、住宅ローンや賃貸費用については含まれていません。持ち家でない場合、さらに住宅ローンや家賃が必要です。仮に住宅ローンや家賃が10万円だとすると、毎月約38万円かかります。もちろん、地域や生活スタイルによって生活費は大きく異なりますが、目安として参考にしてください。
STEP2:十分な資金を用意する
生活費について把握できたら、次はセミリタイア後の収入面を考える必要があります。セミリタイアをしたあとの仕事でいくら稼げるかも重要ですが、十分な資金があれば投資によって生活費の足しにすることが可能です。投資には、株価などが値上がったときに得られるキャピタルゲインと、配当金などのインカムゲインがあります。キャピタルゲインは投資の醍醐味ですが、リスクも高いものです。セミリタイア後はインカムゲイン中心の投資を行うといいでしょう。
一般的にFIREを行う際、投資資金の 4%インカムゲインで生活がまかなえるようになると、うまくいくといわれています。セミリタイアを行う際も、参考になるでしょう。
たとえば、投資できる資金が3,000万円あれば、年間4%の運用で120万円、毎月10万円を得ることが可能です。先ほどお示しした支出が約38万円なので、仕事で28万円稼ぐ必要があるとわかります。
このようにセミリタイア前に多くの資金を貯めていれば、より経済的な不安がなくセミリタイアを実現できます。
STEP3:今後の人生で受け取れるお金を確認する
セミリタイアを成功させるためには、経済的な不安を少なくすることが非常に重要です。今後の人生で受け取れる主なお金についても、しっかり確認するようにしましょう。今後の人生で受け取れる主なお金は、以下の3つです。
- 早期優遇退職制度で受け取れるお金
- 65歳から受け取れるお金
- 親から相続されるお金
それぞれ期待できる金額を中心に、ご説明していきましょう。
早期優遇退職制度で受け取れるお金
最近は、大企業を中心に早期退職を募集するケースが増えています。以前は50歳以上を対象にしているケースが多くありましたが、45歳以上を対象にするケースも増加中です。早期退職の対象は年々若くなっているといえるでしょう。
早期退職に応募した場合、一般的に割増退職金が受け取れます。受け取れる割増退職金は企業によって異なり、大企業の場合は、通常の退職金より年収の2倍以上を割増してくれるケースもあるようです。 このような早期優遇退職制度を実施している会社にお勤めの場合、割増退職金がいくらもらえるかについて、しっかり確認するようにしましょう。
65歳から受け取れるお金
老後資金の中心は公的年金です。公的年金の平均受給額をみてみましょう。
- 老齢厚生年金の支給額:月額14万6,162円
- 老齢基礎年金の支給額:月額5万6,049円(対象は会社員など老齢厚生年金加入者を含む)
このように、厚生年金と国民年金では受け取れる金額に大きな違いがあります。先述したとおり、セミリタイアをした場合は受け取れる年金額が少なくなってしまうため、相応の準備が必要です。
親から相続されるお金
親から相続されるお金は人によってそれぞれです。相応の資産や不動産を親がもっている場合、ある程度計算に入れてもいいでしょう。ただし、相続金に頼りすぎるのは非常に危険です。
子どもの場合は遺留分という制度があるため、必ず相続金は受け取れます。しかし親が遺言を書いている場合、法定相続分以下の取り分になってしまうことは十分ありえます。
また相続は、金額が大きい場合に揉めるものだと思われている方も多いかもしれませんが、実態は金額が少ないケースほど揉めるケースが多いようです 。相続で揉めてしまうと、親族間の関係が悪くなってしまう可能性があります。やはり相続に過度に期待しないほうが無難でしょう。
専門家の支援を活用することも一つの手!
セミリタイアする際、事業承継に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。事業承継は中小企業の大きな課題です。なかなか当事者だけで事業承継を成功させるのは難しいので、M&Aの仲介会社をはじめプロの力を借りるようにしましょう。
当社に譲渡のご相談に来られるお客様の中にはご自身の引き際を予め設定して、ハッピーリタイアを目指し数年前から準備に取り組まれていらっしゃる方も多くいらっしゃいます。
そのほか事業承継のサポートを行う会社はたくさんありますが、おすすめは「事業承継ナビゲーター」です。事業承継ナビゲーターでは、事業承継に関する勉強会を頻繁に実施しており、事業承継のノウハウが豊富にある専門家が対応するため、安心して相談ができます。また、事業承継全体のプランニングや、財産の配分などについても相談に乗ってくれるので、最善の事業承継を行えるでしょう。セミリタイアをするにあたって事業承継の悩みがある方は、ぜひ相談してみてはいかがでしょうか。
終わりに
今回は、セミリタイアについてご説明しました。セミリタイアを目指している方は、近年非常に増えています。セミリタイアをすることによって、自分や家族のために使える時間が大幅に増え、豊かな人生を送れることでしょう。多くの方の憧れであるセミリタイアを成功させるためには、綿密な準備が必要です。ぜひ本記事を参考になさってください。