中堅・中小企業がSDGs定量化で営業力を高める方法

 今やSDGsというキーワードは企業経営者にとって無視できないものとなり、企業の長期的な経営にどのように組み込むかが手腕の見せどころである。

 今回は中堅・中小企業の営業力アップにSDGsがどう関わってくるのか、SDGsを定量化することでどんな効果が期待できるのかを紹介したい。

経営者も営業現場もSDGs意識を持つ

 経営者は、事業全体の成果を考え、株主・投資家をはじめ顧客や取引先、従業員、地域社会といった各ステークホルダーの要請に応える責務がある。経営側で取り組むべきSDGs課題とその対応については多く語られているが、顧客接点の多い営業部門がSDGsの意識を持つことも非常に大切だ。

 営業部門での数値目標は欠かせないが、ともすれば利益最優先の顧客対応となりかねず、目標に対する焦りから押し売りやコンプラ違反を招くことにもつながる。公正な取引はSDGsの理念の基本であるため、数字を追求する姿勢に加え、顧客やその先の消費者や社会全体のニーズの変化をいち早くキャッチすることも営業にとって重要である。

費用対効果だけではなく、社会・環境効果も訴求する営業活動へ

 SDGsの意識を持つことによって、セールストークを幅広・重厚にし、エンゲージメントの高い良質な顧客と関係性を構築できる可能性がある。

 費用対効果(価格や機能性)の訴求に加えて、社会・環境効果の訴求を付加することで、より広い層に深く刺すセールストークが展開できる。また、顧客が抱える(または潜在的に感じている)SDGs課題に沿った提案を行えたり、新たな需要の創出につながったりする可能性も期待できる。自社の商品について、「どんな社会・環境効果があるのか」を深く知り、顧客に伝えるのも営業の仕事だ。

取引時にSDGs取り組み状況をスクリーニングする企業も

 大手企業ではSDGs経営推進の動きが年々拡大しており、グループ企業や取引先企業にまで及ぶケースが見られる。取引企業に対して、環境や地域貢献の取り組み状況を確認したり、CO2 削減目標数値をアンケートとして求めたりすることもあり、営業担当者が自社のSDGs取り組み状況にも関心を持ちSDGsデータを把握しておくことは、今後の取引継続に必要な要素となるだろう。

営業力を高めるSDGs定量化の例

では実際に営業力を高めるためには、どのようなSDGsデータ・取り組みが役立つのだろうか。

1.多様性(各社の事例より)

企業の多様性に関する各種データを収集し、AI解析によってスコア化した弊社プロダクト〈テラストβ〉の「ダイバーシティランキング」。上位2社の事例を紹介する。

1位は「パソナグループ」だ。直近の業績は2021年5月期の連結営業利益が前期比88.5%増、売上高2.9%増となった。好業績の直接的要因は、BPOサービスの需要増、拡大部門への人員の最適配置、コロナ禍での営業活動の抑制やオペレーションの効率化などによる販管費減少などが挙げられるが、自社グループの人材事業で多様化する働き方や価値観に先回りするサービスをかねてから充実させてきたことが、時代の状況にマッチして功を奏したとも言えそうだ。パソナグループは2019年に定年退職した65歳以上も雇用の対象とする制度を設け、豊富な経験と意欲のあるシニア人材の活躍の場を自社グループ内に取り入れる取り組みを率先して行っている。

2位は「リクルートホールディングス」だ。同社は2006年から専門組織を置いてダイバーシティインクルージョンを推進、とくに社員の約半分を占める女性を対象に活躍支援を進めてきた。2008年には当時としては稀有だった事業所内保育園を設置し、育児と仕事の両立を積極的に支援。2015年にはいち早くリモートワークの導入に着手するなど、多様な働き方に対応するための環境改善を継続している。2021年4月の管理職全体における女性比率は26.1%で約4人に1人が女性となった他、女性営業職のロールモデルを輩出し、自社グループ内にとどまらず社会全体へ影響力を発揮してきた。ダイバーシティ推進の歩みを止めることなく進めてきたリクルートホールディングスの株価は右肩上がりだ。多様性のある組織は時代や価値観の変化に対応する、しなやかで強い営業力を備えていて、その結果、好業績につながっていると推測できそうな例である。

もちろん、大手企業の施策をそのまま取り入れることは、経営規模の点から難しい場合もあるが、足元の小さなことからチャレンジしていただきたい。

ダイバーシティランキング

※東証一部上場企業約2,100社の非財務データを分析・スコアリング。ダイバーシティに富んでいる企業ほど高スコア、高順位。
※時価総額順位は2021年10月28日時点。

2.売上・利益に占めるSDGs関連商品の割合を見える化

 自社製品・サービスの中に、環境配慮型商品や地域課題解決サービスなどSDGsに関連するものがある場合は、年間売上高や利益に対してSDGs関連製品・サービスがどの程度の割合を占めているか、その割合の経年増加などを数値やグラフで示すことができる。HP上で公表したり提案資料に記載したりすることで、自社の強みとして競合との差別化ポイントにもなる。

3.顧客満足度やクレーム件数の定点観測

 顧客満足度やクレームに対する組織としての仕組みの見直しは、リスクマネジメントやガバナンス改善の取り組みの一端でもある。定点観測し見える化することで、営業やカスタマーサポートといった顧客接点の多い部署のCS向上意識の醸成に寄与する。高い顧客満足度を達成すれば、顧客に安心感を与えることができると同時に、営業現場の志気も向上も期待できる。真摯な企業姿勢をデータで示すことは、顧客との深い信頼関係を実現するための有効な手段だろう。

SDGsの自分ゴト化で「やらされている感」から「納得感を得て行動」へ

 営業社員がSDGsを自分ゴト化することで、自分たちの営業活動が、自社の成長だけでなく社会や地域のより良い未来にも関与している自負が得られるだろう。売上・利益目標が中心の「やらされている感」から、「納得感を得て行動」する自発的な営業活動の動機付けにもSDGsは有用だ。

サステナビリティ・トランスフォーメーションを促進する非財務ビッグデータ集団

●サステナブル・ラボは、非財務ビッグデータの専門家集団として、非財務データバンクを活用し、目立たないけれども環境・社会利益を多く生み出している企業や自治体に光を照らすこと、また、企業や自治体が、真に経済利益と環境・社会利益の創出を両立できる社会の実現を目指しています。

●AIを活用し企業・都道府県の非財務/SDGsデータをスコア化したオンラインデータバンク「テラストβ」で様々なランキングをご覧いただけます。
https://terrast.org/

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サステナブル・ラボ株式会社
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