「たった5%の行動で世の中は変わる」――Yahoo! JAPAN SDGs編集長が語るSDGsの未来

Yahoo! JAPANは、SDGsをテーマにしたメディア「Yahoo! JAPAN SDGs」を2021年9月に公開した。多くのコンテンツパートナーとともに、企業や人々のSDGsに関する取り組みを伝える記事を提供している。編集長に就任したのは、自らも東日本大震災のボランティアをきっかけに、10年間にわたり漁業や環境の課題に取り組んできた長谷川琢也氏。Yahoo! JAPAN SDGsの狙いや伝えたい思いを聞いた。

長谷川琢也(はせがわ・たくや)
(ヤフー株式会社 SR推進統括本部)
1977年3月11日生まれ。自分の誕生日に東日本大震災が起こり、運命や縁を感じ東北に関わり始める。
ヤフーの力を東北に活かすため、宮城県石巻市にヤフー石巻復興ベースをつくり、移住。ECで復興を後押しする「復興デパートメント(現エールマーケット)」の立ち上げ等を経て、東北で出会った漁師たちと漁師団体「フィッシャーマン・ジャパン」を設立。
その活動を通じて、日本の海が抱える多くの課題を知り、SDGs14「海の豊かさを守ろう」をテーマにしたWebメディア「Gyoppy!」を立ち上げる。海や水産業だけでなく、日本全国の社会起業家や自治体とのネットワークを広げ、石巻と全国を行き来しながら脱炭素や再生可能エネルギーの普及などの取り組みを継続中。
2021年9月22日、Yahoo! JAPAN SDGsの編集長に就任。

持続可能性への気付きとアクションのきっかけを提供したい

―――Yahoo! JAPAN SDGsはどんなサイトでしょうか。

長谷川 「豊かな未来のきっかけを届ける」をコンセプトに、これからの地球環境や持続可能性について、ひとりでも多くの人に伝え、課題解決に向けたアクションを後押しするメディアです。

Yahoo! JAPAN SDGsには、オリジナルコンテンツのほか、外部コンテンツパートナーの配信記事、「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーによる執筆記事やインフォグラフィックス、「DOCS for SDGs」の動画などを統合して掲載しています。情報や記事だけでなく、人や会社、メディアなどのハブになりたいと考えています。

―――前身は海に関するメディア「Gyoppy!(ギョッピー)」でした。リニューアルした理由は何だったのでしょうか。

長谷川 「Gyoppy!」は、海の課題に関心を持ち、解決へのアクションを起こしてもらうことで、海の豊かさを次世代へつなぐことを目的としたメディアでした。2018年から3年間運営してきました。

一方でここ数年、企業や政府などでSDGsを推進する動きが活発になり、SDGsがビジネスチャンスにつながるという認識も広まってきました。Yahoo!ニュースなどの関連記事へのアクセス数からも、世間の関心が高まっていることがわかっています。加えて私たちのなかに、社会課題をテーマにしたメディア運営のノウハウも溜まってきました。そこで海や環境だけでなく、SDGs全体をテーマにしたメディアにしようということで、Yahoo! JAPAN SDGsを立ち上げたわけです。

―――記事を作成、編集する上で気をつけられているポイントは?

長谷川 一つは幅広いテーマを扱うことですね。私はこれまで環境問題を扱うことが多かったので、どうしてもそちらに引っ張られてしまいがちです。しかしSDGsは貧困やジェンダーなど、さまざまな問題の解決を目指していますから、当メディアでも偏りなくコンテンツを提供していきたいです。

また、「物事の複数の側面を伝えること」にも気をつけたいです。ジェンダー論などもそうですが、誰かが傷つく結果につながらないように、伝え方には細心の注意を払っています。

―――連携する外部コンテンツパートナーはどのように選定していますか。

長谷川 Yahoo! JAPAN SDGsとしてはSDGs全体を扱うので、幅広いメディアとパートナーを組む必要がありました。そこで編集部のメンバーがネット上にあるSDGsをテーマにしたさまざまなメディアを調査して、よいコンテンツを発信しているメディアに一つ一つ声をかけていきました。

SDGsは“ゴールの達成をみんなで目指そうぜ”という話ですので、たとえ競合する企業であっても、積極的にパートナーになって、ゴールに向かいながら話し合えるコミュニケーションの流れをつくれたらいいなと思っています。

東日本大震災のボランティアから石巻市に移り住んだ

―――そもそも長谷川さんがこのメディアに関ったきっかけは?

長谷川 2011年3月11日、私の誕生日に東日本大震災が起こり、何かの巡り合わせのようなものを感じて、東北に赴きボランティア活動を始めました。

そして、ちょうどヤフーが「IT(情報技術)で人々や社会の課題を解決する」をミッションに掲げたタイミングだったこともあり、会社として被災地に関わる方法を考え、ECサイト「復興デパートメント」を立ち上げました。その運営のためにヤフー石巻復興ベースを設立し、自分も現地に移住し、より深く東北に関わるようになりました。

また2014年には、地域の漁業をなんとかしたいという思いで、一般社団法人フィッシャーマン・ジャパンを立ち上げ、漁業従事者を増やす活動をしてきました。これらの経験を生かして2018年に、海をテーマにした「Gyoppy!」を立ち上げました。そしてその「Gyoppy!」を引き継ぐかたちで、「Yahoo! JAPAN SDGs」にも携わったということです。

―――ポータルサイトを主体とされる貴社が、課題解決メディアを運営する意義はどのようなところにあるとお考えでしょうか。

長谷川 ヤフーの企画力や多様性、情報発信力を生かせることです。例えば今年3月11日の特集では、多くの企業がYahoo!ニュースに関連記事を出してくれました。記事以外にも、防災シミュレーションのアプリをつくったり、LINEやtwitterと連携したりなど、ものすごい力で東北の10年を伝えることができました。

その裏側にはヤフーの社員がいます。さまざまなアイデンティティを持った社員たちのノウハウやアイデア、モチベーションがあります。ヤフーの多様性を再認識した出来事でした。

そうした多様性や強みを発揮することで、多くの人に、SDGsという話題に関心を持ってもらうことができます。募金プラットフォーム「Yahoo!ネット募金」や、エシカル消費をテーマにしたメディアコマース「エールマーケット」との連携で、ユーザーのアクションを後押しすることもできます。多様な方法を組み合わせて、ユーザーのSDGsのアクションを促すことも、ヤフーだからこそできる取り組みといえるでしょう。

未来の世代が笑顔で暮らせる世界

―――SDGsに関して、日本の企業経営者にどんなことを期待しますか。

長谷川 SDGsへの取り組みは、私が期待するようなものではなく、当たり前に行動に移さなければならないものなんです。SDGsに取り組まなければ、ビジネスが死に、経済が死んじゃいますから。ただ、あえて私からお願いするなら、SDGs17の「パートナーシップで目標を達成しよう」ですね。みんなでゴール達成のためにどうしたらいいか、健全に話し合いながら進めていきましょう。

また、この機会をチャンスだと思い、楽しく創造的に考えましょうと言いたいですね。例えば先日、『サーキュラーエコノミー実践 オランダに探るビジネスモデル』(学芸出版社)の著者である安居昭博さんに取材し、海外の先進的な事例を伺いました。

そのなかで印象的だったのは、「Fairphone」というメーカーのスマートフォンです。これは簡単にいえば、ユーザーが部品を交換しながら使い続けられるスマホ。部品を自分で交換できるので、壊れても直せるし、必要な部品だけ交換すれば最新スマホにもなる。不要になった部品は返却して再利用されます。とてもよい考え方だし、楽しくて創造的だと思いました。

このような世界中の優れた事例を、Yahoo! JAPAN SDGsを通して多くの人に知ってもらい、パートナーとしてつながって、みんなでクリエイトしていく。そんなムーブメントをつくれればと考えています。

―――長谷川さんがこのサイトを通じて目指す未来とはどのようなものでしょうか。

長谷川 私たちのタグラインにもある「豊かな未来のきっかけを届ける」ですね。100%の行動は無理でも、一人ひとり5%だけの行動でも、それが積み重なれば世の中を変えることができます。Yahoo! JAPAN SDGsが伝えたコンテンツをきっかけに、気付いてくれた人が少しずつ行動することで、世の中が良くなっていくことを期待しています。その結果、みんなが笑っていられる社会をつくれればいいですね。そのために今後も、きっかけとなる情報をどんどん発信していきます!

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