企業がSDGsに取り組む理由とは? そのメリットや中小企業ができることを解説
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SDGsは、ビジネスにおいて無視できないものとなっている。SDGsへの取り組みをアピールする会社も増加傾向だ。しかし何をどう取り組めばいいかわからない経営者も多いのではないだろうか。SDGsの必要性を把握して、取り組んでいかなければ時代に取り残されてしまいかねない。企業がSDGsに取り組む理由とメリットについて解説していく。

目次

  1. SDGsの取り組みは企業も例外ではない
    1. SDGsとは
    2. 政府の取り組みではなく企業の行動が求められている
  2. SDGsはビジネスチャンスにつながる
    1. 「まち・ひと・しごと創生基本方針2021」とは
    2. 働き方改革の推進につながる
    3. SDGsに取り組むことによる企業のメリット
  3. SDGsに取り組む企業の事例
    1. 外務省「JAPAN SDGs Action Platform」
    2. 企業の取り組み事例を紹介
    3. 中小企業はできることから始めよう
  4. SDGsは今できることから

SDGsの取り組みは企業も例外ではない

SDGsが必要とされる理由は、経済成長と雇用の問題に深く関わりがある。最初にSDGsの概要や取り組みについて解説する。

SDGsとは

SDGsとは、Sustainable Development Goalsの略で和訳すると「持続可能な開発目標」を意味する。「地球上の誰一人取り残さない持続可能でよりよい世界を目指す」という世界共通の目標のことだ。17のゴール(目標)と169のターゲットから構成されており、日本でも積極的な取り組みが行われている。

政府の取り組みではなく企業の行動が求められている

SDGsは「誰一人取り残さない」という理念のもとに、「社会」「経済」「環境」の3側面から17のゴールを統合的に解決し、持続可能な未来を築くことが目標だ。この17のゴールは、地球環境や飢餓・貧困の問題に限定せず、働く人にとっても望ましいこれからの経済活動のあり方を追求する内容が含まれている。

SDGsは政府の取り組みだけではなく、地方自治体や企業などのあらゆる団体から個々人にいたるまでのすべての人の行動が求められていることが特徴だ。例えば目標8の「経済成長と雇用」では、経済成長や生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用の促進を求めている。また目標9の「インフラ、産業化、イノベーション」の項目は、企業と関係が深い。

さらに目標12の「持続可能な消費と生産」は、「つくる責任」として企業の取り組みが重要であることは、イメージしやすいだろう。

SDGsはビジネスチャンスにつながる

SDGsの17のゴールを達成するには、政府だけでできるものではなく企業の協力が必要不可欠だ。企業としても世界的に必要とされるSDGsの取り組みは、サービスや商品としての付加価値があり、ビジネスチャンスにつながるだろう。生産過程で廃棄物をなくしたり再利用したりする取り組みは、すでに行われており、今後も増えていくことが予想される。

また技術やノウハウを外国に提供することは、SDGsの目標達成に貢献するだけでなく事業拡大にもつながるだろう。

「まち・ひと・しごと創生基本方針2021」とは

2021年6月18日に閣議決定された「まち・ひと・しごと創⽣基本⽅針2021」もSDGsと関係が深い。この基本方針は「訪れたい」「住み続けたい」と思えるような魅力的な地域の実現が目的だ。地域自らの特色や状況を踏まえて自主的かつ主体的に取り組めるようにすることで、都市から地方への新たな「ひと」や「しごと」の流れを生み出すことを目指している。

この基本方針の中のひとつが「地方創生SDGsの実現を通じた持続可能なまちづくり」だ。持続可能なまちづくりや地域活性化に向けた取り組みは、SDGsの理念と共通するものであり、今後の地方創生の展開にあたって脱炭素化の流れを地方創生に活かそうとしている。

さらに「中小企業等による地域・社会課題の解決を通じた、地域の持続的発展の促進」として地域内外の中小企業等が連携し、ビジネスの手法により解決を図る取り組みに支援することも取り上げている。地方公共団体と連携して新たな需要の創出につなげる機能が導入されることは、中小企業にとって大きなビジネスチャンスになるだろう。

また2021年8月に外務省が公表している「持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて日本が果たす役割」では、2020年12月21日に閣議決定された「SDGsアクションプラン2021」が記載されている。その中の重点事項のひとつとして「SDGsを原動力とした地方創生、経済と環境の好循環の創出」をあげている。

働き方改革の推進につながる

SDGsや地方創生の取り組みは、働き方改革につながることにも触れておきたい。「まち・ひと・しごと創生法」は、以下の3つを目的としている。

企業がSDGsに取り組む理由とは? そのメリットや中小企業ができることを解説

持続可能なまちづくりや地域活性化に向けた取り組みの推進は、SDGsの理念と共通するものがある。そのため地方創生SDGsの実現は、政策全体の最適化と地域課題解決の加速化による相乗効果が期待できるだろう。また以下の内容は、働き方改革だけでなくSDGsにも共通する問題である。

  • テレワークの促進
  • 雇用の促進
  • 働きがいのある人間らしい職場環境づくり
  • 健康的な生活を確保
  • ワーク・ライフ・バランスの推進など

SDGsに取り組むことによる企業のメリット

SDGsは、経営やマーケティングの観点からも無視できない。そこで企業の視点に立って取り組むことによるメリットを考えてみよう。

・新たな事業の創出につながる(ビジネスチャンスの増加)
投資家や消費者にもSDGsの認知度が高まってきているため、相乗効果によりSDGsの目標にかなうマーケットが増えていくことが予想される。SDGsに関する事業は、これまでなかったマーケットを生み継続的な需要が見込めるだろう。環境に配慮した商品やサービスを新たに開発すれば商品やサービスに付加価値が生まれ、売上増加につながる可能性がある。

・企業イメージの向上
SDGsに取り組む企業は、企業としての社会的責任の観点からもイメージアップにつながるだろう。取り組み内容を社外に公表することでイメージアップが図れれば、採用の面で有利となり優秀な人材の確保が期待できる。これは、企業組織の強化にもつながる。

・ワーク・ライフ・バランスの実現による人材定着、生産性の向上
政府が推進する働き方改革の実現による生産性の向上も期待できる。多様で柔軟な働き方が選べる働き方改革の実現は、人材の定着率や従業員のモチベーションアップにつながり生産性の向上が期待できるだろう。

・企業価値が高まる
近年、ESG投資が注目を集めている。ESGとは、企業の成長に重要といわれる環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の3つの頭文字をとったものだ。日本の年金資金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立法人)も2017年10月からESG投資を取り入れている。欧米ではすでに広く浸透しており投資残高も増加傾向だ。

SDGsの取り組みを企業経営の方針に取り込むことで、ESG投資を呼び込むことができれば企業価値の向上につながるだろう。

SDGsに取り組む企業の事例

SDGsに取り組むことによる企業のメリットがあることを説明してきたが、すでに取り組んでいる企業は多数ある。SDGsに取り組む企業の事例を紹介しよう。

外務省「JAPAN SDGs Action Platform」

SDGsに関連した取り組みを幅広く紹介することを目的に運営しているプラットホームで、さまざまな事例を見ることができる。外務省「JAPAN SDGs Action Platform」では、SDGsに関する各種資料や日本政府の取り組み方針、取り組み事例などの多くの情報を調べることが可能だ。SDGsについてより詳しく調べたい企業は、活用をおすすめする。

企業の取り組み事例を紹介

プラットホームの中からいくつか取り組み企業を見てみよう。

・インドにおける器楽教育導入の取り組み(ヤマハ株式会社)
ヤマハは音楽文化の普及活動の一環として音楽教育事業を展開。音楽や楽器を通じた学習機会を創出してきた。SDGsの目標4「すべての人々に質の高い教育を」の達成に向け、世界の子どもたちに音楽・楽器演奏の喜びを伝え続けている。

インドでは公教育のカリキュラムに音楽教育が導入されていない。2018年からヤマハが展開しているインドのスクールプロジェクトでは、小学校3年生以上を対象とし、リコーダーを使った器楽教育の機会を提供している。

・エネルギー“ゼロ”の住宅・建築物の普及を目指す(大和ハウス工業株式会社)
住宅や建築物は、長期間居住・使用されるためCO2の排出量も多大だ。環境問題が深刻化する現代、個々の建物の対策を街全体に広げ、効率的かつ広範囲でのエネルギーゼロ化が求められている。

大和ハウス工業では、脱炭素社会実現とエネルギーの効率利用を図るため「エネルギー“ゼロ”の住宅・建築・街づくり」に注力。さらに今後は、住宅や建物間、電力融通による地域でのエネルギー自給、太陽光発電所の住まいてによるシェアなど、新たなカタチを追求。より快適で暮らしやすい街づくりを目指している。

中小企業はできることから始めよう

中小・零細企業の中には、資金面・人員面からSDGsへの取り組みをためらうこともあるであろう。新たな商品やサービスを開発するには、資金や取り組みに向けた組織づくりも必要となる。忙しい日ごろの業務の中で新たな取り組みをすることは、負担が大きいと考える経営者もいるのではないだろうか。しかし従業員も安心できてやりがいがある職場づくりは、中小企業においても効果は同じくある。

取引先に渡す名刺をエコ素材に変更することもSDGsへの取り組みのひとつだ。テレワークの導入やペーパレスの導入も業務の効率化につながる。業務の効率化により残業を減らすこともSDGsの取り組みといえるのだ。働きやすい環境を作ることは、従業員の業務の効率化や生産性の向上に結び付く。ビジネスに直結したSDGsの取り組みが難しくても身近で簡単にできることから始めることが大切だ。

SDGsは今できることから

SDGsに貢献できる活動は大きなものから小さなものまでさまざまだ。その活動は、政府だけの取り組みではなく企業や個々人にいたるまでのすべての人に求められている。また企業や消費者にもSDGsがすでに認知されてきておりSDGsの目標にかなうマーケットは今後増えていくだろう。SDGsの取り組みは、企業にもメリットがあるため、ビジネスチャンスにつながる可能性がある。

時代に取り残されないためにも、今自社でできることから始めてみよう。

加治 直樹
著:加治 直樹
特定社会保険労務士。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。銀行に20年以上勤務。融資及び営業の責任者として不動産融資から住宅ローンの審査、資産運用や年金相談まで幅広く相談業務を行う。退職後、かじ社会保険労務士事務所を設立。現在は労働基準監督署で企業の労務相談や個人の労働相談を受けつつ、セミナー講師など幅広く活動中。中小企業の決算書の財務内容のアドバイス、資金調達における銀行対応までできるコンサルタントを目指す。法人個人を問わず対応可能であり、会社と従業員双方にとって良い職場をつくり、ともに成長したいと考える。
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