世界各国で独創的な作品を発表し、いまやデジタルアートを代表する存在となったアートコレクティブ「チームラボ」。アート、サイエンス、テクノロジー、そして自然など、あらゆるものの境界を曖昧にしながら進化を続けている。

2021年10月8日、豊洲の「チームラボプラネッツ TOKYO DMM」(以下:チームラボプラネッツ)に、ヴィーガンラーメン専門店「Vegan Ramen UZU Tokyo」、食事ができる3つの新スペース、作品で使用したランを持ち帰ることができるフラワーショップ「teamLab Flower Shop」がオープン。

チームラボが展開するアート空間で、ヘルシーな食事まで楽しめるというのだ。しかもインスタ映えするラーメンとのことで、大変気になる。さっそくANDART編集部で取材に向かった。

「チームラボプラネッツ TOKYO DMM」外観(東京都・豊洲)
(画像=「チームラボプラネッツ TOKYO DMM」外観(東京都・豊洲))

期待以上のおいしさ!花咲くヴィーガンラーメン
「Vegan Ramen UZU」は、京都発のヴィーガンラーメン専門店。2020年に京都・御所南にオープンした「Vegan Ramen UZU Kyoto」は、行列ができることもある人気店となった。ヴィーガンとは、肉や魚だけでなく、乳製品や動物性油などを一切排除した菜食主義のこと。このたびオープンした「Vegan Ramen UZU Tokyo」でも、京都店と同じく、完全に植物性の素材のみでつくられたラーメンが提供される。

ヴィーガンラーメン花(冷) 価格:1,980円(税込)
(画像=ヴィーガンラーメン花(冷) 価格:1,980円(税込))

まずはこちら、「ヴィーガンラーメン花(冷)」。チームラボプラネッツで2021年7月に公開された作品《Floating Flower Garden: 花と我と同根、庭と我と一体》をイメージしてつくられた、東京限定のオリジナルメニューだ。

まずカラフルで華やかな見た目にテンションが上がるが、なんと花まで全て食べることができる。使われているのは、パリの三ツ星レストランにもハーブを提供する、広島の「梶谷農園」から取り寄せたエディブルフラワー。花と葉がてんこもりで見た目以上に食べごたえがあるが、ひんやりとしたスープは爽やかな味わいで、つるつると箸がすすむ。最後にローズの香りが漂うソーダ水でスープを割って頂いた。

ヴィーガンラーメン茶 価格:1,650円(税込)
(画像=ヴィーガンラーメン茶 価格:1,650円(税込))

続いて、同じく東京オリジナルメニューの「ヴィーガンラーメン茶」。こだわりの茶葉で知られる「EN TEA」の日茶と、羅臼昆布と国産椎茸の出汁を使った温かいラーメンだ。ヴィーガンラーメンと聞いて限りなく薄味のものを想像していたが、いい意味で裏切られた。植物性で一体どうやっているのかと不思議なくらい、コクと旨味がある。国産小麦と無農薬全粒粉を使った中太麺にピリ辛のスープが絡み合い、止まらないおいしさだった。

デザートの「ヴィーガンアイスクリーム ピスタチオグリーンティー」(税込660円)と「水出し緑茶」(税込550円)も、緑茶の風味が濃厚で贅沢な味わい。ヴィーガンとは思えない満足感だ。

新作アート空間で、ワクワクの食事体験

《虚像反転無分別》
(画像=《虚像反転無分別》)

「Vegan Ramen UZU」の食事スペースは3つあり、どれもチームラボの新作空間となっている。

《虚像反転無分別》は、「空書」(空間に描く書)が3Dで無限に現れる映像空間。通常は作品と分断されがちなテーブルと椅子も鏡面仕立てにすることで、空間全体がキャンヴァスとなって宇宙のように広がっている。本来平面に書かれるはずの文字が、立体的な墨跡を感じさせながらくるくると回転しており、二次元と三次元の間にいるような感覚を体験できる。

床にも映像が流れているため、宙に浮いているような不思議な感覚に。今回、ここでは試食はせず鑑賞のみだったが、方向感覚も曖昧になる空間での食事は間違いなく新鮮な体験になるだろう。

《空と火のためのロングテーブル》
(画像=《空と火のためのロングテーブル》)

ふたつめは、屋外のフードスタンド前に設置された《空と火のためのロングテーブル》。天気もよかったので、ANDART編集部はこちらでラーメンを頂いた。こちらのテーブルも鏡面仕立てなので、青空にラーメンが浮かんでいるように見える。周りの人たちがいろいろなフードを運んでくると、テーブルがどんどんにぎやかになって楽しい。

《空と火のためのロングテーブル》
(画像=《空と火のためのロングテーブル》)

短い辺から施設入り口のほうを眺めると、ランドマークのようにそびえ立つ作品《空から噴き落ちる、地上に憑依する炎》がテーブルに映り込み、空へとつながっているように見える。夜になるとライトアップされ、炎が燃え上がる作品だ。「生きること、そして食べることは、世界とつながり続けることである」というコンセプトを感じながら、丁寧につくられた食事を味わおう。

《ひとつなぎのベンチ》
(画像=《ひとつなぎのベンチ》)

そして、アスレチックのような《ひとつなぎのベンチ》。「フードを販売しているカウンターまで、一筆書きのように続いているんですよ」とスタッフの方に教えてもらい、ベンチをたどっていくと、たしかに途切れることなくぐるりとつながっていた。座るところと物を置くところが交わっており、空いていれば寝そべってひと休みすることもできる。自由な発想での使い方ができそうだ。

《ひとつなぎのベンチ》
(画像=《ひとつなぎのベンチ》)

大自然に迷い込んだ感覚に!新エリア「Garden Area」
もちろんチームラボプラネッツ館内にも、魅力的な作品空間が広がっている。2021年7月、オープン当初からの「Water Area」に新しく加わった「Garden Area」には、とりわけ注目したい。

《Floating Flower Garden: 花と我と同根、庭と我と一体》
(画像=《Floating Flower Garden: 花と我と同根、庭と我と一体》)

館内を進んでいくと、緑にあふれた空間が現れた。《Floating Flower Garden: 花と我と同根、庭と我と一体》は、13,000株を超えるラン科の生花で埋め尽くされている。大量の花が天井からカーテンのように吊り下げられており、人が近づくと上にあがって道ができる。自然に迎え入れられ、自分もその一部になっていくような感覚だ。

屋内だということが信じられないような花園の出現に、ただただ圧倒されてしまった。前述の「ヴィーガンラーメン花(冷)」はこの作品をイメージしてつくられたとのこと。ラーメンにのった草花を食べたあとだったので、身体の中までアートとつながったような気さえする。あらゆるものの境界を曖昧にするというチームラボのコンセプトどおり、自分と作品、自然と人工のボーダーラインが消えてしまったようだった。

《呼応する小宇宙の苔庭 – 固形化された光の色, Sunrise and Sunset》(日中)
(画像=《呼応する小宇宙の苔庭 – 固形化された光の色, Sunrise and Sunset》(日中))

もうひとつの庭園は、うってかわって瞑想空間のよう。敷き詰められた苔の上に、銀色の卵型の物体が輝いている。合わせ鏡でどこまでも続くような景色に、ミストが噴き出して幻想的な雰囲気が漂い、「異世界に迷い込んだかも?」とドキドキしてしまった。

なんだか生き物のような不思議なフォルムの物体。触ってOKとのことなので、軽く押してみると……ゆらゆら揺れながら鈴のような音色が鳴り響き、周りの物体が共鳴していった。倒れそうで倒れない心地いい反発があるので、つい何度も揺らしてみたくなる。みんな同じ気持ちらしく、あちこちから発せられた音色が重なって、空間がハーモニーで満たされた。自分や他の鑑賞者の動きによって、作品が変容していくのがおもしろい。なお、天井が開いており外とつながっているので、風や雨の動きにも反応する。

日中に訪問した際にはひっそりした佇まいだったが、日没後にはライトアップされるとのこと。61色ものカラフルな光が移り変わるとのことで、こちらもぜひ体験してみたい。

《呼応する小宇宙の苔庭 – 固形化された光の色, Sunrise and Sunset》(日没後)
(画像=《呼応する小宇宙の苔庭 – 固形化された光の色, Sunrise and Sunset》(日没後))

既存の「Water Area」には、膝くらいまで水に浸かるところもあり、まさに作品に没入してアートと一体化していくように感じられる。

また、いたるところに五感をフルに刺激する仕掛けが満載。館内を裸足で歩いていると、床がザラザラしていたり、ふかふかだったり、質感に変化があるのがよくわかった。さらに、マスク越しでも感じられる芳香が漂ってきて、リラックスさせてくれることも。薄暗い館内では感覚が研ぎ澄まされ、普段は見過ごしてしまいそうなことにも気づくことができる。

作品の花を持ち帰れる!環境にもやさしいフラワーショップ
館内でランが咲き誇る光景はとても美しいが、ひとつの作品にこれだけの花を使うのはもったいないと思う人もいるかもしれない。そんな心配を解消してくれるのが、新たにオープンしたフラワーショップ「teamLab Flower Shop」。

「teamLab Flower Shop」店内
(画像=「teamLab Flower Shop」店内)

ここでは、チームラボプラネッツのオリジナルトートと合わせて、作品で使用したランを購入できる。ランは花が散って1年も経つと再び花が咲く。寿命が長く、丁寧に世話をすれば数十年生きることもあるという。作品内での役目を終えたランも、人々の手にわたって生き続けることができるのだ。

ラン単体でも買うことができるが、一度トートバッグを購入すると、空のバッグを持参するたびにランを無料で受け取ることができる。これから来館する友人にバッグを託し、花をもらう体験ごとプレゼントしても喜ばれそうだ。

トートバッグ入りのラン 価格:3,960円(税込)
(画像=トートバッグ入りのラン 価格:3,960円(税込))

「Vegan Ramen UZU Tokyo」と「teamLab Flower Shop」がある敷地内スペースは、チームラボプラネッツ来館者以外でも利用可能。ラーメンを食べたり、ランを補充してもらったりするために、ふらっと立ち寄ることもできる。ショップにはランだけでなく茶葉やポストカードなども販売しているので、おみやげ探しにもぴったりだ。

アート空間で心身ともに癒やされよう
最先端テクノロジーを駆使し、進化し続けるチームラボ。今回は食事と植物というアナログな要素を通して、新鮮な驚きを味わわせてくれた。

チームラボの作品は華やかなものが多く、今回取材したチームラボプラネッツもひと目見ただけで心を奪われるような美しい作品がそろっている。同時に、視覚だけでなく五感全体に訴えて全身を包んでくれるような空間が広がっているので、心身ともに癒やされたように思う。苔庭の作品《呼応する小宇宙の苔庭 – 固形化された光の色, Sunrise and Sunset》や、花のプラネタリウムのような作品《Floating in the Falling Universe of Flowers》では、作品空間に没入した自分自身とも向き合う瞑想の時間が持てた。

作品によっては寝そべってのんびり鑑賞できるので、現実から離れてリフレッシュしたい時や、クリエイティブなひらめきが欲しい時など、アート空間でゆっくり過ごしてみてはいかがだろうか。そして、「Vegan Ramen UZU Tokyo」のヴィーガンフードは、決して見かけ倒しではない予想以上のおいしさなので、ぜひ作品鑑賞と合わせて試してみてほしい。

概要
チームラボプラネッツ TOKYO DMM
会場:東京都江東区豊洲6-1-16 teamLab Planets TOKYO
会期:2018年7月7日〜2022年末
公式サイト:https://planets.teamlab.art/tokyo/jp/

Vegan Ramen UZU Tokyo
公式サイト:https://vegan-uzu.com/pages/uzu-tokyo
※チームラボプラネッツの来館者以外もご利用できます。

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文:稲葉詩音