株式分割をするのはなぜ? メリット・デメリットなど解説
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内山 瑛
内山 瑛(うちやま・あきら)
公認会計士。名古屋大学法学部在学中に、公認会計士試験に合格。新日本有限責任監査法人に入所し、会計監査・コンサルティング業務を中心に研鑽を積む。2014年に同法人を退所し、独立。「お客様の成長のよきパートナーとなる」ことをモットーに、記帳代行・税務申告にとどまらず、お客様に総合的なサービスを提供している。近年は、銀行評価を向上させる財務コンサルティングや内部統制構築支援、内部監査の導入支援にも力を入れている。

株式分割といってもピンとこない人も多いかもしれない。株式投資を行っている人であればよく知っているかもしれないが、どちらかといえば、中小企業の経営者やスタートアップにとっては、会社分割や事業分離といった言葉のほうがなじみ深いと思う。ここでは、株式分割がどのようなものなのか、そのメリットやデメリットとともに概観していきたい。

目次

  1. 株式分割とその2つの理由
    1. 理由その1:株式の流動性を高めるため
    2. 理由その2:証券市場における指定替えを目指すため
    3. 【参考】東証一部への上場審査基準
    4. 流通性の乏しい株について
  2. 株式分割の3つのメリット
    1. 1)株価を下げて小口投資を促進
    2. 2)株価の上昇効果により資金調達しやすくなる
    3. 3)株主優待により資金調達しやすくなる
  3. 株式分割のデメリット
  4. 株式分割を行った会社の4つの例
    1. 1.株式会社ライブドア
    2. 2.株式会社セブン&アイ・ホールディングス
    3. 3.ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社
    4. 4.ヤフー株式会社
  5. 株式分割を行うタイミングや割合は慎重に

株式分割とその2つの理由

株式分割とは、まさに文字通り「株式を分けること」である。会社分割のように、会社の事業実態や組織に影響を及ぼすものではなく、単に株式を例えば1株を2株に分割することを指す。単に分けるだけであるので、1株あたりの価値は小さくなるが、理論上は会社の実態は変わっていないので、株式の価値の総量は変化しない。

通常は、1株を2株に分けるという方法で行われることが多いが、場合によっては、1株を1.248株に分割する、というように半端な係数で分割することもある。ではなぜ、会社は株式分割を行うのであろうか。その理由は大きく2つあるといわれている。

理由その1:株式の流動性を高めるため

流動性を高めるという点については、例えば、時価1株100万円の株式を分割し、1株10万円となった場合を想定するとわかりやすい。

最低取引単位を1株とした場合に、最低100万円支払わないと買えない会社の株式よりは、10万円から購入できる会社の株式のほうが圧倒的に買いやすい。そのため、株式分割を行えば、多くの小口投資家の投資を呼び込むことができ、ひいては株式の流動性を高めることができるのだ。

なお、株式の流動性とは、その株式の取引のしやすさであり、市場で活発に取引されている株式は流動性が高く、あまり取引の成立しない株式は流動性が低いといえる。

理由その2:証券市場における指定替えを目指すため

これは例えば、マザーズやジャスダックなどの新興企業向けの市場や東証二部から、東証一部への指定替えを目指す場合などが想定される。東証一部への指定替えを行うためには、株主数、流通株式数、売買高、時価総額などの条件を満たさなければならない。特に株主数については、株式分割により流動性を高めることによって、目標達成が可能である。

【参考】東証一部への上場審査基準

参考までに、東証一部への上場審査基準を紹介する。各基準は以下の通りだ。

・株主数:法人、個人あわせて800人以上の株主数
・流通株式数:2万単位以上の流通株式数
通常、日本の株式市場においては、1単位100株で取引されることが多いため、一般的には流通株式数が200万株以上必要となる。
・流通株式時価総額:100億円以上
流通株式数を200万株とすれば、1株当たりの時価が5,000円以上である必要だ。
・流通株式数の比率:上場株券等の35%
・時価総額:250億円以上
・事業継続年数:新規上場申請日から起算して、3ヵ年以前から取締役会を設置して、継続的に事業活動をしていること
・純資産の額:連結純資産の額が50億円以上(かつ、単体純資産の額が負でない)
・利益の額及び売上高:「最近2年間における利益の額の総額が25億円以上」または、「最近1年間の売上高が100億円以上 かつ 時価総額が1,000億円以上」

流通性の乏しい株について

またここでは、流通株式数の発行済株式の総数は異なることに注意されたい。流通株式とは、上場有価証券のうち、大株主及び役員等の所有する有価証券や上場会社が所有する自己株式など、その所有が固定的でほとんど流通可能性が認められない株式を除いた有価証券を言う。流通株式数は、直前の基準日等現在における上場株式数から、流通性の乏しい株券等の数を合算した数を減じて算出する。

東証では、以下の者が所有する株式を流通性の乏しい株券等として定めている。

・上場会社(自己株式)
・上場会社の役員
・上場株式数の10%以上を所有する者又は組合等
なお、新規上場申請や一部指定申請に係る有価証券については、上記に加え、以下の者が所有する株券等についても流通性の乏しい株券等として定めている。
・上場会社の役員の配偶者及び二親等内の血族
・上場会社の役員、役員の配偶者及び二親等内の血族により総株主の議決権の過半数が保有されている会社
・上場会社の関係会社およびその役員

株式分割の3つのメリット

株式分割には、上場している会社の目的を達成できるのみならず、投資家にとってのメリットがある。それは、裏返すと会社にとっても本来の目的以外の副次的なメリットとなる。

1)株価を下げて小口投資を促進

株価が下がると、買いやすく売りやすくなる。1単位あたりの時価が高い場合には、小口の投資をしたい投資家にとっては手を出しづらくなり、一部だけ売ってリスクを調整することもできなくなってしまう。特に、機関投資家やプロの投資家だけではなく、小口の投資家が増加している昨今、小口の投資資金を呼び込めば、会社にとっても大きなメリットとなる。

2)株価の上昇効果により資金調達しやすくなる

株価の上昇は、既存株主にとってはもちろん大きなメリットだ。株式分割を行うという観測が出されると先行して株価が上昇することもあるほどである。また、会社にとっても資金調達がしやすくなるというメリットがある。

ところでなぜ、株式分割を行うと、株価が上昇するのだろうか。上述のように、株式分割を行うことによって、株式が買いやすくなり、流動性が高まる。そして、流動性が高まることによって、投資対象としての会社の評価が高まり、機関投資家などの投資対象にもなる。そうなることによって、その会社の株式自体の需要が高まり、株価の上昇につながるのだ。

3)株主優待により資金調達しやすくなる

さらに、投資家にとっては、株主優待をもらいやすくなるといったメリットがある。通常、株主優待をもらうための最小の投資単位は、100株と設定されていることが多い。株式が買いやすくなることによって、株主優待を目的とした個人投資家からの資金が大きく流入することになる。さらに、株主優待目的の投資家は通常安定株主となることが多いので、その点においてもメリットといえるだろう。

株式分割のデメリット

株式分割のデメリットは少ない。強いて言えば、株式分割をあまりにもしすぎると、株価が非常に低くなり、株式市場において値が付かなくなってしまう(取引が成立しなくなってしまう)ことだ。俗にいう低位株と呼ばれる株式のなかには、株価が数円となってしまっている場合もあり、その場合取引価格が1円ずれるだけで、取引の総体としては、非常に大きな影響が出てしまう。

株式分割を行った会社の4つの例

株式分割を行った例を4つほど紹介しよう。

1.株式会社ライブドア

株式分割によって一躍有名になった会社といえば、ライブドアである。ライブドアは、2000年代前半に急成長を遂げた企業だが、株式分割を用いて一種のバブルを起こしたことでも有名となった。2001年5月に1株を3株に、2003年6月には1株を10株に分割するなど、積極的に株式分割を実施する姿勢を見せていた。

そして2003年12月には、当時あまり見られなかった100分割を実施した。10億を超える株を発行し、多くの個人投資家が投機的売買を行ったために、需給が混乱し、異常な価格形成となった。その結果、市場ではさまざまな思惑が交錯し、15営業日連続ストップ高後、連日のストップ安が続くなど値動きが荒くなり、市場に混乱をもたらした。

2.株式会社セブン&アイ・ホールディングス

セブン・アイ・ホールディングス(セブンイレブンやイトーヨーカ堂などを展開)は、代表的な株式分割を行ってきた企業であり、成長過程で何度も株式分割を行ってきた。企業が成長し、株価が上がってくると、株式を買いづらくなってしまい、流動性が低下するからである。

1979年10月の上場から現在までに16回株式分割を実施している。株価が概ね1万円を超えると分割をすることが多い。上場時点から比較すると、当時100株もっていた株主は、38倍の3800株を保有していることになる。

3.ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社

「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」の大ヒットにより企業を急成長させたスマホゲーム会社のガンホーも、何度も株式分割を行っている。アプリ配信開始時点では17円しかなかった株価が、2013年5月には1,600円と大きく成長を遂げた。それまでの過程で大幅な分割を行っており、特に2013年には、10倍の分割を2回と100倍の株式分割を行った。

ガンホーの場合、株式分割をしすぎたせいで1単元あたりの株価が大きく低下し、問題となった。東証一部では、必要最低投資金額を「5万円以上50万円未満」にするのを推奨しているからである。そのため、株式分割によって大きく下がった株価を調整するために、その後株式併合を実施した。

株式併合とは、株式分割の逆で、複数の株式を1つにまとめることを意味する。最近はビジネス環境の変化が激しく、株価が下がり過ぎてしまった結果、1単元あたりの株価が低迷してしまい、株式併合を行う会社も増えてきている。

4.ヤフー株式会社

そして、株式分割を多く行っている企業として外せないのがヤフーだ。ヤフーは1997年に上場して以来、現在までに株式分割を繰り返して成長してきた会社である。上場以降、今までに1株を2株にする株式分割を13回、1株を100株にする株式分割を1回実施した。

ヤフーの株式は、上場以来、株式分割とともに急成長を遂げてきたため、もし上場直後の株を1株ずつ持っていると、2017年の時に分割した株が約80万株になる計算で、株価にして4億円に値する資産総額になる結果となる。そのため、会社は非常に大きな成長を遂げて、長い間ヤフーの株を持ち続けてきた株主が億万長者になるまで株価が急上昇した。

株式分割を行うタイミングや割合は慎重に

株式分割を行う理由や、メリットやデメリットについて解説した。企業にとって株式分割は、資金調達しやすくなるというメリットがあるが、リスクもないわけではないため、株式分割するタイミングや分割割合などは慎重に検討する必要がある。株式分割を実施するときには、専門家に相談することをお勧めする。

文・公認会計士 内山瑛

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