新卒採用支援市場,2019年
(写真=Art_Photo/Shutterstock.com)

2017年度の新卒採用支援市場規模は前年度比7.3%増の1,185億円

~採用活動の効率化・省力化に対するニーズの高まりにより、新卒採用支援サービスの需要は拡大~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の新卒採用支援市場を調査し、各種サービス別の市場動向、参入事業者の動向、将来展望を明らかにした。

新卒採用支援市場規模推移

新卒採用支援市場規模推移

1.市場概況

2017年度の新卒採用支援市場規模は、前年度比7.3%増の1,185億円であった。企業の新卒採用意欲は依然として高く、学生の売り手市場はより一層強まっている。概して学生にとっては、過度な就職活動をしなくても内定を獲得し易い状況になっているため、就職情報サイトや合同企業説明会への登録・参加の減少も見られ始めており、就職活動量(説明会への訪問回数や企業へのエントリー登録件数等)の減少が顕在化してきている。こうした昨今の学生の就職活動においては、より認知度の高い大手企業や有名企業に就職希望が集中する傾向が高く、中小企業や地方企業の多くは、より厳しい新卒採用活動を強いられている。

大手企業の採用部門では、インターンシップの準備と対応、本選考活動、採用した新入社員の受け入れなどに加え、学生の囲い込みや内定辞退の回避に向けて、学生への早期アプローチや繋ぎ止めの施策など、全体的に採用活動に関連する業務は増加しており、その期間も長期化している。さらに、就職情報サイトや合同企業説明会からの膨大な学生のエントリー登録の集中により、学生と企業間の相互理解不足などから起こるミスマッチや内定辞退も多く、採用ターゲットとなる学生の選別にも苦慮している。

一方、中小企業や地方企業の多くでは、就職情報サイトを介しても、概して学生の応募が集まらないことから、新卒紹介サービスの利用や中小企業向けの採用直結型イベントへの参加といった動きも活発化しており、就職情報サイトに依存せず、効果の見込める効率のよい新卒採用支援サービスの需要はより一層高まっている。

こうした求人企業各社の課題解決に向けて、新卒採用における採用手法やサービスに対する需要の多様化が進展している。

2.注目トピック

ダイレクト リクルーティング サービス

「ダイレクトリクルーティングサービス」とは、当該サービスを提供する企業の有する学生の登録情報を利用し、求人側である企業が自社の採用要件を満たす学生(または採用したい学生、気になる学生など)を選択し、主体的、且つ直接的にアプローチ・コンタクトをとるといった採用選考活動を可能にする採用支援サービスである。

大手企業や知名度のある企業では学生からの膨大なエントリー登録が集中するものの、自社に対する志望動機や関心度合いの見極めは困難であり、また相互理解不足などからミスマッチによる内定辞退のリスクもある。
一方、知名度が低く学生集客力の難しい中小企業や地方企業の多くでは、新卒採用に苦慮するケースも多く、従来型の採用選考手法においては様々な課題がある。

こうした状況下、ダイレクトリクルーティングサービスは、自社の採用要件を満たす学生に直接的にアプローチ・コンタクトできる採用手法であり、また自社に直接エントリー登録している学生の母集団とは異なる就職活動層への働きかけや、学生との相互理解に繋がる採用方法としても注目されている。ここ1~2年において、登録学生、およびユーザー企業(利用企業)は急速に拡大しており、就職活動・採用選考手法の主流である就職情報サイトや新卒紹介サービスに並ぶ手法になりつつある。

3.将来展望

2018年度の新卒採用支援市場規模は前年度比6.8%増の1,266億円の見込み、2019年度は同7.0%増の1,354億円を予測する。

学生の売り手市場のなか、採用部門における採用業務の負担増や長期化、さらには厚生労働省の「働き方改革」推進により、採用活動の効率化・省力化に対する需要はより一層強まっていくとみる。また、学生との相互理解の深耕によるミスマッチの軽減や内定辞退の回避、早期から学生の囲い込みなど、様々な課題に対する求人企業の需要も多様化していることから、今後も新卒採用支援市場は堅調に推移するものと考える。