ホワイトナイトとは? 具体的な3つの施策や成功・失敗事例を紹介
(画像=freehand/stock.adobe.com)

「ホワイトナイト」という言葉を耳にしたことがあるだろうか。敵対的買収自体がそれほど頻繁に起こるわけではないため、ホワイトナイトが登場した事例となると、なかなか思いつかないかもしれない。

そこで今回は、ホワイトナイトの具体的な事例や施策などについて解説していこう。

目次

  1. ホワイトナイトとは
  2. ホワイトナイトの具体的な施策3つ
    1. 1.ホワイトナイトが敵対的買収者よりも高い価格でTOBをかける(カウンターTOB)
    2. 2.ホワイトナイトに対象会社の第三者割当増資や新株予約権を付与する
    3. 3.クラウンジュエルを実施する
  3. ホワイトナイトの具体的な事例2つ
    1. 1.ドン・キホーテによるオリジン東秀への敵対的TOB
    2. 2.佐々木ベジ氏によるソレキアへの敵対的TOB
  4. 一般株主から見ると、敵対的買収者は必ずしも悪ではない

ホワイトナイトとは

ホワイトナイトとは、敵対的買収を仕掛けられた際の買収防衛策のひとつだ。具体的には、敵対的買収を仕掛けられた企業が、新たに友好的な買収者(ホワイトナイト)を見つけて買収もしくは合併してもらい、敵対的買収を阻止することを指す。友好的な買収者を白馬の騎士になぞらえて、ホワイトナイトと呼ばれている。

ホワイトナイトを実行するには、敵対的買収者よりも高い価格でTOB(上場会社の発行する株式を、不特定多数の人に対して、あらかじめ買付の「期間」「数量」「価格」を提示し、通常の市場売買でなく市場外で一括して買い付ける公開買付け)をかける、対象会社の第三者割当増資や新株予約権を付与する、クラウンジュエルを実施する、などが想定される。

ホワイトナイトにとっては予定外のM&Aとなることから、ある程度有利な条件が提示される場合が多い。敵対的買収を仕掛けられた会社にとっては、いずれにせよ他社の傘下になることには変わりなく、「敵対的買収者に買収されるくらいなら、ホワイトナイトの傘下になったほうが良い」といった苦渋の策とも言える。いわば身売りを公言することであり、さらに新たな買収者を引き寄せてしまう可能性も否定できない。

ホワイトナイトの具体的な施策3つ

それでは、ホワイトナイトの具体的な施策「敵対的買収者よりも高い価格でTOBをかける」「対象会社の第三者割当増資や新株予約権を付与する」「クラウンジュエルを実施する」の3つについて、もう少し詳しく解説しよう。

1.ホワイトナイトが敵対的買収者よりも高い価格でTOBをかける(カウンターTOB)

日本の金融商品取引法では、有価証券報告書を提出する義務のある会社の株式に対して、3分の1を超える株式を買い付ける場合には、原則としてTOBの形で行わなければならない。株式会社においては、議決権数の過半数(51パーセント以上)を取得しないと、経営権は握れないことから、敵対的買収においては、TOBを行うことが一般的だ。

例えば、買収者が1株2,000円で敵対的TOBを仕掛けてきたとしよう。その場合、ホワイトナイトは原則として、敵対的買収者が提示したTOB価格よりもさらに高い価格(1株3,000円など)でTOBをかける。一般の株式投資家は経済的合理性が高い判断を下す確率が高く、「いかに敵対的買収が不当なもので、ホワイトナイトのTOBが社会的意義の高いものであるか」を説いても、敵対的TOBに応じてしまう可能性があるためだ。

ホワイトナイトは、敵対的TOBよりも経済的合理性が高い価格を提示するのが原則だ。このように、敵対的TOBに対して、ホワイトナイトによるTOBをぶつけることを「カウンターTOB」と呼ぶこともある。

2.ホワイトナイトに対象会社の第三者割当増資や新株予約権を付与する

新株を発行して、ホワイトナイトに対象会社の第三者割当増資や新株予約権を付与する方法だ。具体的には、新株を発行することで、敵対的買収者が保有している買収先の株式の保有比率を下げて、目標比率に届かなくさせる方法である。

例えば、敵対的買収者が買収先の株式の41パーセントを買い集めている場合、あと10%の株式を集められてしまうと、敵対的買収者が議決権数の過半数(51パーセント)を握ることになってしまう。そこで新株を発行して、新株をホワイトナイトに付与することで、敵対的買収者の保有比率を押し下げてしまおうというわけだ。

仮に、発行株数を2倍にして、新株をすべてホワイトナイトに付与してしまえば、敵対的買収者の保有割合は41%から20.5%に下がる。一方、ホワイトナイトの保有割合は50%となり、あと1%取得すれば議決権の過半数を握れるため、敵対的買収計画は実質的に破綻したと言えるだろう。

実際は、既存株主の希薄化への配慮や、ホワイトナイトが新株を受け取るための現金が必要であることに注意が必要だ。

3.クラウンジュエルを実施する

「クラウンジュエル」とは、敵対的買収を仕掛けられた企業が自社でもっとも魅力的な事業部門や資産、子会社などを第三者に譲渡したり、分社化したりすることによって、自社を「買収するに値しない企業」に仕立てる行為を指す。

そもそもほとんどの場合、敵対的買収を仕掛けた企業は、買収先の企業に何らかの魅力を感じて、敵対的買収に動いている。その魅力をホワイトナイトに譲渡したり、合併してもらったりすることで、敵対的買収者の買収目的を無力化させることを狙っている。

敵対的買収を仕掛けられた企業を「王冠」に、魅力的な事業部門や資産、子会社などを「王冠の宝石」に例えて、王冠の宝石を外し、王冠の価値を低下させることになぞらえて「クラウンジュエル」と呼ばれている。

ホワイトナイトの具体的な事例2つ

それでは、ホワイトナイトの具体的な事例には、どのようなものがあるのだろうか。ここでは、2つの事例について紹介していこう。

1.ドン・キホーテによるオリジン東秀への敵対的TOB

ドン・キホーテによるオリジン東秀(「オリジン弁当」の運営を行っている会社)への敵対的TOBだ。結論として、ホワイトナイトは成功した(敵対的買収は失敗に終わった)。まずは登場企業を整理しよう。

 敵対的買収者:ドン・キホーテ
 敵対的買収を仕掛けられた企業:オリジン東秀
 ホワイトナイト:イオン

発端は2005年8月に、ドン・キホーテがオリジン東秀の創業者遺族から発行済株式の23.62%を取得したことだ。報道では、ドン・キホーテがオリジン東秀の店舗やノウハウを活かして、「新しいタイプのコンビニエンスストア」を作ろうとしたことが、創業者遺族からの株式取得の理由と言われている。

しかし、両者の業務提携は思うように進まない。そこで痺れを切らしたドン・キホーテが2006年1月、オリジン東秀に対して敵対的TOBを仕掛けたというわけだ。オリジン東秀側はドン・キホーテの買収を拒絶し、イオンにホワイトナイトを依頼した。ドン・キホーテとイオンによるTOB合戦の結果、2006年3月、オリジン東秀はイオンの子会社となった。

上記で言うと「ホワイトナイトが敵対的買収者よりも高い価格でTOBをかける」方法にて、敵対的買収を防衛できたというわけだ。オリジン東秀は2006年7月27日(木)に上場廃止となり、2021年現在でもイオングループの一員として事業を展開し続けている。

なお、前述のように、日本の金融商品取引法では、有価証券報告書を提出する義務のある会社の株式に対して、3分の1を超える株式を買い付ける場合には、原則としてTOBの形で行わなければならない。このルールは、このドン・キホーテによるオリジン東秀への敵対的TOBをきっかけに整備されたと言われている。TOB不成立のあと、ドン・キホーテが株式市場で約46%まで株式を買い進めていたためだ。

2.佐々木ベジ氏によるソレキアへの敵対的TOB

フリージア・マクロスの取締役会長であり実業家、投資家である佐々木ベジ氏によるソレキア(JASDAQ上場。業務プロセスやITに関する深い理解と幅広いノウハウを活かし、総合的なコンサルテーションを展開している企業)への敵対的TOBだ。結論として、ホワイトナイトは失敗した(敵対的買収は成功した)。まずは登場企業を整理しよう。

 敵対的買収者:佐々木ベジ氏
 敵対的買収を仕掛けられた企業:ソレキア
 ホワイトナイト:富士通

発端は2017年2月3日、佐々木ベジ氏が突然、ソレキアに対するTOBを発表した。これに対し、ソレキアは主要な取引先である富士通にホワイトナイトを依頼、TOB合戦に発展した。両陣営は相手の価格を上回るTOBを繰り返し、当初2,800円だったTOB価格は、最終的に5,450円まで上昇した。

上記の通り、TOB合戦の結果は佐々木ベジ氏の勝利に終わった。最終的な買付価格は佐々木氏が5,450円、富士通が5,000円であり、敵対的買収といえども経済的合理性が高いほうへ票が集まった格好だ。2021年3月31日現在では、フリージア・マクロス社が28.4%、佐々木ベジ氏が22.1%の株式を保有しており、佐々木ベジ氏陣営が議決権数の過半数を確保している。

一般株主から見ると、敵対的買収者は必ずしも悪ではない

ここまで、ホワイトナイトについて、手法や事例を解説してきた。

ホワイトナイトの注意点としては、どちらにしても自社を身売りすることには変わりがないということ、また、身売りを公言することで新たな買収者を誘引してしまう可能性があることなどが挙げられる。

さらに、一般株主から見ると、敵対的買収者は必ずしも悪ではないという点にも注意が必要だ。むしろ、既存経営者が適切な企業経営をできておらず、企業価値が向上していない状況では、敵対的買収者の言い分が一般株主の琴線に触れる可能性は大いにある。

敵対的買収を仕掛けられた企業の経営側から見ると、敵対的買収者は忌むべき対象であることが多いだろうが、「どちらのほうが一般株主により多くの富をもたらすか」という観点では、敵対的買収者の言い分のほうがロジカルであることも想定される。

中小企業経営者においては、オーナー経営者が多いこともあり、敵対的買収に発展することは少ないかもしれない。しかし、株式が分散されており、経営者が過半数を握っていない場合は、敵対的買収が発生する可能性はある。ホワイトナイトの事例も参考に、敵対的買収の防止策を想定しておくと良いだろう。

文・菅野

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