2021年9月5日、東急プラザ渋谷(渋谷区道玄坂1)2階に「世界一小さな美術館@GMO デジタル・ハチ公」がオープンし、話題となっている。その入り口にはデジタルハチ公と呼ばれる、最先端のホログラムディスプレイ技術を用いて再現されたハチ公が設置されており、渋谷のシンボルとして長きに渡り世界中から愛されてきたハチ公が再注目されている。渋谷はこれまで現代美術家ジュリアン・オピーのパブリックアートが設置されたり、渋谷PARCO建替え工事の仮囲いに漫画『AKIRA』の美術演出が施されたりと、アートを積極的に取り入れている町でもある。
そこで今回は、東京都渋谷で無料で誰でも見ることができるパブリックアートを紹介する。昔から親しまれているのものから最新の名所まで、パブリックアートを通して是非改めて渋谷という土地の独自性に目を向けていただきたい。
目次
- 鈴木康広《渋谷の方位磁針|ハチの宇宙》
- 大津英敏《海からのかおり》絹谷幸
- 絹谷幸《きらきら渋谷》
- Colliu《きゅうちゃん》
- WA! moto “MOTOKA WATANABE”《YOUwe.》
- Stone Designs《Any》
- 伊藤陽一郎/大竹彩子/NABSF/ヒロ杉山《Break through your heart》
- 東恩納裕一《ARROW TREE》
- 渋谷・トルコ 日本友好碑 平和の鐘
- 岡本太郎《こどもの樹》
- 岡本太郎《明日の神話》
- 高田洋一《石に咲く花》
- 河合隆三《NANAKO》
- 北原龍太郎《ハチ公ファミリー》
- 安藤忠雄 The Tokyo Toilet「神宮前トイレ」
- 坂 茂 The Tokyo Toilet「代々木深町小公園トイレ」
- 天津恵《Bright Time》
- 安藤照《ハチ公像》
- 大後友市《モヤイ像》
鈴木康広《渋谷の方位磁針|ハチの宇宙》
画像引用:https://colocal.jp/
2020年に開館した複合施設「MIYASHITA PARK」の屋上にある宮下公園に設置されている作品。渋谷の方位を全身で感じられるような方位磁針を模したベンチの中心には、渋谷のシンボルとも言える忠犬ハチ公像が設置されている。都会の屋上とは思えないほど緑に囲まれた空間で、空を見上げながらアートと一緒にゆったり寛ぐのもいいだろう。
設置場所:宮下公園
所在地:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6丁目20−10
大津英敏《海からのかおり》絹谷幸
画像引用:http://anglef.jugem.jp/
2008年に開業した東京メトロ副都心線。池袋駅から8駅にパブリックアートが設置されており、終点の渋谷駅にあるのが本作だ。洋画家の大津英敏が原画を担当し、娘・香織がモデルを務めた。富士山を望む七里ヶ浜の海景は、人々がせわしなく行き交う雑多な改札付近で、オアシスのような存在となっている。
設置場所:東横線・副都心線 渋谷駅(改札外)
所在地:〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-20
絹谷幸《きらきら渋谷》
画像引用:https://4travel.jp/
絹谷幸二は1943年奈良県生まれの洋画家。1997年長野冬季オリンピック・ポスターの原画を制作。2014年、文化功労者選出のほか国内で数々の賞を受賞している。2008年に制作された《きらきら渋谷》は、7ヶ月かけて焼成された670ピースの信楽焼(しがらやき。滋賀県甲賀市信楽を中心に作られる陶器のこと)で渋谷駅周辺を描いた作品。絹谷は「渋谷は若さがあって、音楽があって、美味しい食事も良いファッションもある。そういうものや生まれ出た喜びがきらきらしたイメージ」で制作したという。改めて「渋谷」という街が持つパワーを感じながら鑑賞したい。
設置場所:東横線・副都心線 渋谷駅(改札外)
所在地:〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1丁目14
Colliu《きゅうちゃん》
画像引用:https://tsao.co.jp/
2020年7月、渋谷の新たなランドマークとして誕生した「MIYASHITA PARK(ミヤシタ パーク)」の入り口を飾るのが、《きゅうちゃん》。名前の由来は宮下公園の「宮(きゅう)」。渋谷駅近くに長年堂々と鎮座する忠犬ハチ公像の末裔をイメージして、制作された。ビビッドな赤、青、緑、黄色に彩られた愛らしくポップな彫刻は、現代の「渋谷の顔」となる可能性も大!?
設置場所:宮下公園南側エントランス
所在地:〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1丁目25
WA! moto “MOTOKA WATANABE”《YOUwe.》
画像引用:https://prtimes.jp/
MIYASHITA PARKの屋上の宮下公園内にて、一際目立つボルダリングウォール。それを台座とした全高 7.3mの大型彫刻が本作。作品タイトルの「YOUwe.」はYou(あなた)と、We(私たち)を組み合わせた造語で、「私たちは共同体であると同時にオリジナリティを持った唯一無二な個の集まりなんだよ。」という意味を持つ。よじ登って遊べるアート作品という珍しいコンセプトを是非体感していただきたい。
設置場所:宮下公園内ボルダリングウォール上
所在地:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6丁目20−10
Stone Designs《Any》
画像引用:https://prtimes.jp/
リニューアルオープンしたMIYASHITA PARKの野外彫刻。スペイン発のデザインオフィスStone Designsが手がけた。トイレなどで見かけるピクトグラムのような見た目で、男女をが融合した形になっている。渋谷区は日本で初めて同性カップルに「パートナーシップ証明書」を発行するなど、ジェンダーをめぐる問題に積極的に取り組んできた。多様な人々によって新しい文化が生まれる街を象徴する作品だ。
設置場所:明治通り沿い歩道
所在地:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-20-10
伊藤陽一郎/大竹彩子/NABSF/ヒロ杉山《Break through your heart》
画像引用:https://prtimes.jp/
JR東日本の高架下をくぐる途中で目につくのが、伊藤陽一郎氏、大竹彩子氏、 NABSF氏、ヒロ杉山氏の計4名のアーティストによる、ペインティング。こちらは「シブヤ・アロープロジェクト」の一環で、渋谷区の一時避難場所(青山学院大学、代々木公園)の位置を外国人を含めた多くの来街者に認知してもらうために、日頃から人々の注目を集めるという目的で描かれたもの。高架下の目立たない場所にありながらも、緊急時にどちらの方向に避難すればよいかわかる「矢印サイン」がパッと一目で認識できるもが嬉しい。言葉の壁を超えて、誰もが理解できる矢印をわかりやすく盛り込んだアートは、いざという時に「記号」が役立つことを示唆しているようだ。
設置場所:渋谷宇田川架道橋下
所在地:〒150-0041 東京都渋谷区神南1丁目9-2
東恩納裕一《ARROW TREE》
画像引用:https://shibuya-arrow.jp/
東恩納祐一(ひがしおんな ゆういち)は、身の回りのものをモチーフに制作をする東京都出身のアーティスト。無数のカラフルな矢印が葉っぱのように生い茂っている作品《ARROW TREE》。よく見てみると、矢印が同じ方向を指し示しているのが分かる。これは《Break through your heart》と同様に、2017年の「シブヤ・アロープロジェクト」の一環で制作、設置されたもの。この作品は一時避難場所である青山学院大学の方向を示している。
渋谷というファッショナブルな街に溶け込むようにアートのエッセンスを加えた「人々を救う矢印」。5年後の2022年を目標に認知と理解を進めているプロジェクトなので、この記事をきっかけに認識しておきたい。
設置場所:渋谷キャスト前
所在地:〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1丁目23
渋谷・トルコ 日本友好碑 平和の鐘
画像引用:https://at-art.jp/
1932年10月1日、3つの町が合併して渋谷区が誕生した。2002年に10月1日を「平和・国際都市 渋谷の日」と条例を制定。2005年から、トルコ共和国イスタンブール市ウスキュダル区と「友好都市協定」を締結し、以来交流を深めてきた。この平和の鐘は、2010年にトルコから贈られた記念碑である。中に敷き詰められているのは、モスクなどでもよく見られる「イズニックタイル」という、1000年以上の長い歴史を誇るトルコの伝統手工芸。慣れ親しんだ街の新たな発見を与えてくれるモニュメントである。
設置場所:渋谷区役所前
所在地:〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町1
岡本太郎《こどもの樹》
画像引用:https://at-art.jp/
戦後、日本の前衛芸術の立役者として、旺盛な活動を展開した岡本太郎。生涯に渡って多くの作品を制作し、絵画をはじめ巨大モニュメントや詩やデザインまで、様々な作品を残した。その中の一つ《こどもの樹》は、こどものための福祉と文化活動の拠点として1985年に開館した「こどもの城」のシンボルモニュメントとして制作されたもの。幹から伸びる枝先に広がる、個性豊かな表情が印象的な作品からは、こども達が自由に伸び伸びと、感性を育むことにも関心を寄せていたという太郎の情熱が、直に伝わってくるかのようだ。
設置場所:旧こどもの城跡地前
所在地:東京都渋谷区神宮前5-53-1
岡本太郎《明日の神話》
画像引用:https://taro-okamoto.or.jp/ 撮影:日比野武男
「芸術は爆発だ!」や大阪の《太陽の塔》でお馴染みの岡本太郎。1968〜1969年にかけて製作された巨大壁画《明日の神話》はしばらく行方が分からなくなっていたが、2003年にメキシコで発見された。日本へ移送後、修復作業を行い、2006年に汐留で一般公開。2008年から渋谷マークシティに恒久設置された。原爆が炸裂する瞬間を描いた本作は、ピカソの代表作《ゲルニカ》の影響を受けている。禍々しい雰囲気を放つも美しい岡本太郎の作品は圧倒される力強さがある。
設置場所:渋谷マークシティ内、京王井の頭線渋谷駅とJR渋谷駅を結ぶ連絡通路
所在地:〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1丁目12-1
高田洋一《石に咲く花》
画像引用:https://at-art.jp/
旧こどもの城跡地の隣に凛と佇む《石に咲く花》は、石の上から伸びている赤い花をモチーフにした幾何学形状のパーツが、風によって回転するという、ユニークな仕掛けとなっている。身の回りに当たり前にある空気の存在を提示するために、モノが風に反応する様子の作品を多く製作している作家・高田洋一による本作は、そこはかとなく道端に咲いている花のイメージをガラリと変えてしまうような、実に力強い作品である。
設置場所:アライブ美竹(こどもの城隣)
所在地:〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1丁目2
河合隆三《NANAKO》
画像引用:https://at-art.jp/
大阪出身の彫刻家・河合隆三が制作した、招き猫のようなキュートな像。西武渋谷店Movida館の開館に合わせ、1986年に設置された。作品タイトルは一般公募で、渋谷の定番待ち合わせスポット「ハチ公」にちなみ、「ナナコ」と名付けられた。知名度ではハチ公に劣るものの、公園通りの看板猫として愛されている。
設置場所:西武渋谷店Movida館 1F入口前
所在地:〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町21-1 西武渋谷店Movida館 1F入口前
北原龍太郎《ハチ公ファミリー》
画像引用:https://at-art.jp/
渋谷のシンボルとも言えるハチ公をモチーフにしたパブリックアートはいくつかあるが、本作ではその家族が登場する、たて4m×よこ15mの大型の陶板壁画となっている。待ち合わせ場所に指定されることも多いので、渋谷を訪れたことがある人なら一度は目にしているのではないだろうか。壁画にはハチ公の子供「クマ公」がいた事実に基づき、ハチ公の大家族20匹が描かれている。
設置場所:JR渋谷駅 ハチ公口
所在地:〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂2-1-1
安藤忠雄 The Tokyo Toilet「神宮前トイレ」
画像引用:https://tokyotoilet.jp/
「おもてなし」文化の象徴として、渋谷区内の公共トイレを生まれ変わらせるプロジェクト「The Tokyo Toilet」のひとつ。神宮通公園トイレは、世界的に活躍する建築家・安藤忠雄が担当し、「あまやどり」と名付けた。桜の木に囲まれて佇む円形の建物は、風、光、利用者が自由に通り抜けられる憩いの空間になっており、汚い、怖いといった公共トイレのイメージを払拭する。
設置場所:神宮通り公園
所在地:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-22-8
坂 茂 The Tokyo Toilet「代々木深町小公園トイレ」
画像引用:https://tokyotoilet.jp/
こちらも前述の渋谷区内の公共トイレを生まれ変わらせるプロジェクト「The Tokyo Toilet」のひとつで、建築家の坂 茂が設計した透明なトイレ。人が入って鍵をかける前は外壁が透けているため、「中がキレイかどうか」「中に人が潜んでいないか」の2つの心配点を解決してくれる。トイレの外壁が透けているという前代未聞な設計だが、安全面での機能性だけでなく、夜には公園を鮮やかな色で照らし明るい雰囲気をもたらすというアート的側面を併せ持つパブリックアートと言えよう。
設置場所:代々木深町小公園
所在地:〒151-0063 東京都渋谷区富ケ谷1丁目8
天津恵《Bright Time》
画像引用:https://at-art.jp/
名古屋市出身の天津恵(1945-2016)は、宇宙や太陽、花、街などをテーマに、和紙を貼ったキャンバスの上に油彩や墨など、様々な素材を重ねて材質感を出した作品を制作し、国際的に活躍したアーティスト。《Bright Time》は、陶板レリーフというパブリックアートではお馴染みの素材を使用して制作された。目が覚めるような明るい色彩に映える、「希望」や「幸運」などというポジティブなイメージを思い起こす白い鳥をあしらった本作は、通勤で行き交う人の多い渋谷の地下鉄にぴったりな作品だ。天津本人のメッセージも添えられているので、時間のある時は足を止めて見て欲しい。
設置場所:東京メトロ銀座線・渋谷駅(乗換通路)
所在地:〒150-8319 東京都渋谷区渋谷2丁目24-1
安藤照《ハチ公像》
画像引用:https://www.gotokyo.org/
渋谷のパブリックアートの元祖とも言える「忠犬ハチ公像」。1933年(昭和8年)頃、新聞にハチ公の美談が掲載されたことによって広く知られるようになり、それに感動した彫塑家・安藤照氏の手によって1934年(昭和9年)に造られたのが始まりだという。ちなみにGMOインターネットグループの第2本社でもある渋谷フクラスの2階には2019年、渋谷の新しいランドマークとして「待ち合わせスポット GMOデジタル・ハチ公」が誕生した。時を超えて愛される不滅の人気者、忠犬ハチ公は新たなマッチするよる形で、今日も渋谷の街を見守り続けている。
設置場所:渋谷スクランブル交差点にほど近い場所
所在地:〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂2丁目1
大後友市《モヤイ像》
画像引用:https://www.asoview.com/
本作は1980年に伊豆諸島新島の東京都移管100年を記念して、新島から渋谷区へ寄贈されたもの。このモヤイ像は元々は新島の名産品で、モヤイには「力を合わせる」という意味がある。また、2009年にはアニメキャラクターの「ルパン三世」に盗んで欲しいものを募集する企画にて、新島観光協会や渋谷警察署の協力のもと実際にモヤイ像が盗まれ、一時新島に輸送され洗浄などを行った後、約2週間後に同所に戻された。
設置場所:JR渋谷駅南口出てすぐ
所在地:〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1丁目1-1
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