所得証明書の見方とは?確認するときの事前知識や注意点を解説
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鈴木 まゆ子
鈴木 まゆ子(すずき・まゆこ)
税理士・税務ライター。税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒業後、㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。「ZUU online」「マネーの達人」「朝日新聞『相続会議』」などWEBで税務・会計・お金に関する記事を多数執筆。著書「海外資産の税金のキホン(税務経理協会、共著)」。

住宅ローンや保育園の申し込みの際、所得証明書が求められることがある。所得証明書は市区町村で発行しているが、慣れていないと見方がわからりづらい。今回は、所得証明書の概要をはじめ、確認するときの事前知識や注意点などを解説しよう。手取りと収入の違いや、所得控除の意味もおさらいしている。あらためて関連用語をチェックしてみてほしい。

目次

  1. 所得証明書とは何か
  2. 所得証明書と納税証明書の違い
    1. 違い1.発行元
    2. 違い2.証明の対象
  3. 所得証明書を確認するときの3つの事前知識
    1. 事前知識1.収入・所得・手取り
    2. 事前知識2.所得控除
    3. 事前知識3.合計所得金額・総所得金額等・課税標準額
  4. 所得証明書に関する3つの注意点
    1. 注意点1.定義や内容は市区町村によって異なる
    2. 注意点2.証明年度と所得の対象年度が異なる
    3. 注意点3.申告しないと証明書は発行されない

所得証明書とは何か

所得証明書とは、市区町村で発行される所得内容の証明書だ。住民税を計算するときの基礎となる所得額が記載されている。

所得証明書の主な記載事項は以下の通りだ。

・証明書の年度
・証明の対象者の宛名
・証明する所得の期間
・所得の内訳
・所得控除の内訳
・課税標準額
・年税額

すべての所得証明書が、同じ形式で同じ内容が書いてあるわけではない。形式や名称は自治体ごとに少しずつ異なり、課税証明書と一体になっていることもある。

所得証明書と納税証明書の違い

所得証明書とよく似た書類として、納税証明書がある。両者は似ているが、いくつか違いがある。

違い1.発行元

所得証明書は、市区町村にしかない。つまり、地方自治体でしか発行されないのだ。

その一方で納税証明書は、税務署発行の書類と市区町村発行の書類がある。税務署発行の書類では所得税などの国税、市区町村発行の書類では住民税などの地方税が証明対象だ。

所得額が一定金額以下だと住民税は課税されない。そのため、課税証明書の代わりに非課税証明書が発行される。名称は異なるが、納税証明書と所得証明書が同じ自治体なら、非課税証明書も所得証明書として使える。

違い2.証明の対象

所得証明書の証明対象は所得内容である。一方、納税証明は税金を納めたことの証明書だ。つまり、納税証明書は所得内容を明らかにするのではなく、国や地方自治体に納税した事実を示すに過ぎない

所得証明書を確認するときの3つの事前知識

所得証明書は、見慣れない人からすると、用語に混乱してしまいがちだ。所得証明書の内容を確認するときの事前知識を3つお伝えしていく。

事前知識1.収入・所得・手取り

所得証明書に書かれているのは1年間の所得だ。自治体によっては収入まで記載された所得証明書を発行するところもあるが、あくまでメインの項目は所得である。

所得を見て、収入と手取りの違いに混乱してしまうこともあるだろう。所得証明書を確認する前に、各用語の違いを整理しておくとよい。

【収入】

収入は、働いたり投資したりして得たお金の全額だ。額面金額ともいう。給料なら会社からの支払額全体(給与年収)、事業収入なら売上や雑収入など事業に関連して得た収入全体をさす。

所得税や住民税では、その稼得形態に応じて収入を10種類に区分する。所得税では、毎年1月1日から12月31日まで、1年間の収入合計を「総収入金額」や「〇〇年収」と呼ぶ。

【所得】

所得は、10種類に分けた収入を各区分に応じ、必要経費や所得控除を差し引いて計算した金額だ。利益のような金額だと考えるとわかりやすい。いずれも毎年1月1日から12月31日までに生じた金額だ。

なお、各所得の例と計算方法は以下の通りである。

所得証明書の見方とは?確認するときの事前知識や注意点を解説

各所得は、所得税と住民税の納税額や、各種控除額を決める重要な指標となる。

【手取り】

月給や賞与の総支給額から社会保険料や所得税、住民税などを差し引いた残額をさす。給与明細なら、差引支給額や銀行振込額など、最後の項目に表示される。

預貯金の口座に振り込まれたり、現金として手渡されたりする金額だ。受給側が特に意識する項目だが、所得証明書にはまったく関係ない数字である。

事前知識2.所得控除

所得控除とは、個人の事情に合わせて所得から一定額を差し引く制度だ。

現実生活では、同じ給与所得でも、子供の数で生活費の負担は大きく異なる。それぞれの状況を鑑み、所得から一定額を差し引いて税負担を調整する。

所得控除の種類は主に以下の通りだ。

所得証明書の見方とは?確認するときの事前知識や注意点を解説

事前知識3.合計所得金額・総所得金額等・課税標準額

所得証明書には、合計所得金額や総所得金額等、課税標準額などの用語も登場する。

【合計所得金額】

合計所得金額は、総合課税の対象となる所得と退職所得・山林所得を合計した金額に、申告分離課税の対象となる所得額を足した額である。ただし譲渡所得の特別控除額や、事業所得、雑所得、上場株式の売買にともなう譲渡所得の繰越損失は適用しない。

この金額は、配偶者控除や配偶者特別控除、ひとり親控除、勤労学生控除、基礎控除といった所得控除額、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の可否を決定する要素となる。

【総所得金額等】

総所得金額等とは、合計所得金額に前年以前から繰り越した損失や、譲渡所得の特別控除を適用した後の金額だ。各事情に応じた所得控除を適用する前の金額である。この金額は、医療費控除の額やふるさと納税の上限額を決定する要素となる。

【課税標準額】

課税標準額は、住民税の所得割を決定する金額だ。総所得金額等から各種所得控除を差し引いた残額を示す。残額に住民税率(都道府県4%、市区町村6%)を乗じて計算した金額が住民税の所得割額だ。なお、課税標準額を「課税総所得金額」として表示するところもある。

所得証明書に関する3つの注意点

所得証明書に関する3つの注意点を解説する。

注意点1.定義や内容は市区町村によって異なる

所得証明書は全国で共通して使われる呼称ではない。理由は、住民税が地方税のひとつであるからだ。地方税の概要は全国で同じだが、細かい名称は自治体が決められる。したがって、全国一律の国税である所得税と異なり、名称が市区町村によって変わるのだ。

もし窓口で請求するのなら「住宅ローンの所得証明として使える用紙が欲しい」などと、使用目的まで一緒に伝えるのが望ましい。窓口担当者に理解してもらいやすいし、発行ミスを防げる。

注意点2.証明年度と所得の対象年度が異なる

市区町村の窓口で所得証明書を出してもらうとき、証明年度と証明する所得の対象年度が違う点にも注意したい。たとえば、2021年6月に所得証明を出してもらうと、証明年度は2021年度となるが、証明する所得の対象年度は2020年度となる。

なぜ、証明年度と証明する所得の対象年度が異なるのだろうか。理由は住民税の仕組みにある。

年末調整や確定申告を通じて、個人の所得額や扶養等の情報は税務署に届く。その後、所得情報は各市区町村に伝送される。そして、所得が発生した翌年の3月後半から5月上旬にかけ、所得情報を元に住民税の所得割額が計算され、6月上旬に住民税の決定通知書が個人や勤務先に届く。

つまり、住民税の課税年度は今年の4月から翌年3月でも、その計算基準となる期間は前年の1月1日から12月31日なのだ。

所得証明書は、金融機関における住宅ローンの審査や、保育園の入園を申請する場面で必要となる。申請にあたって、証明が必要な所得の対象年度を確認しておきたい。

注意点3.申告しないと証明書は発行されない

年末調整や確定申告で所得や税金を申告しないと、税務署や市区町村に所得情報が届かない。結果、市区町村では所得証明書を発行できなくなる。

「給与所得と退職所得以外の所得の合計額が20万円以下なら確定申告しなくてよい」といわれるが、あくまで税務署に対する所得税の確定申告だけだ。副業などの所得が20万円以下であっても、住民税は市区町村で確定申告しなくてはならない。

また、「課税所得額が0円なら申告しなくても問題ない」ともいわれるが、申告しないでいるとローンやクレジット、保育園などに関する公的サービスの申請で困る可能性がある。

いざというときに備えて、年末調整や確定申告の手続きは済ませておこう。

(文/税理士・税務ライター 鈴木まゆ子)

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