ABC分析,マーケティング,活用方法
(写真=alphaspirit/Shutterstock.com)

「ABC分析」について、聞いたことがない人もいるかもしれないが、企業の経営戦略の立案やマーケティングの強化を行うための基本的なデータ分析法の一つである。世の中のさまざまな事象は決して平均的でなく、偏りがあるという考え方だ。代表的なのは「80:20の法則」である。以下はその例である。

・売上の8割を生み出すのは、2割の顧客である。
・売上の8割を生み出すのは、2割の社員である。
・ウェブサイトのアクセスの8割は、2割のページから生まれる。
・業務時間の2割で、8割の結果が生み出される。

この考え方をもとに、製品の売上・コスト・在庫などの指標で比重が大きい順に並べ、ランク分けして管理・分析する方法をABC分析という。ABC分析の具体的な手法と活用方法を紹介していこう。

目次

  1. ABC分析とは?
  2. ABC分析の手順
    1. 手順1:ABCの分類
    2. 手順2:パレート図の作成
    3. エクセルを活用したABC分析
  3. ABC分析の目的とメリット
    1. パレート図による分析の目的
    2. ABC分析のメリット
  4. ABC分析の活用法
    1. ABC分析の活用事例6つ
    2. ABC分析を現状の分析でなく将来の売れ筋商品へと役立てる
    3. ABC分析の注意点
  5. ネットショップ(Eコマース)におけるABC分析
    1. ネットショップではABC分類が優れているとは限らない
    2. ロングテールの法則
  6. ABC分析は重点的に注力する商品を明らかにし、スムーズな経営判断を促進

ABC分析とは?

ABC分析とは、製品の売上・コスト・在庫など重視する指標を決め、ウェイトが大きい順に並べて分類し、管理する方法ことだ。これは、ウェイトを大きく占めるアイテムに対して優先的に経営資源を配分したり、施策を実行したりすることで、効率よく売上や利益を向上させるという考え方に基づいている。

ABC分析は非常にシンプルではあるが、企業の経営戦略の立案やマーケティングのためのデータ分析の基本であり、コンサルティング会社などが初期分析としてよく使う手法でもある。

ABC分析は、「パレードの法則」とも言われる、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート(1848~1923)が提唱した「80:20の法則」がもととなっている。さまざまなアイテムを重要度の順に並べてランク分けすることから。「重点分析」とも呼ばれる。

アイテムを優先度順に並べることで現状を把握し、取り組むべき戦略やビジネスについて簡単に判断できるので、経営やマーケティングなどさまざまな場面で活用しやすい。

たとえば、会社の売上の8割が2割の製品の売上で占められているのなら、それらの製品のマーケティングに注力することが、時間やヒューマンリソースなどの経営資源を最も効率的に配分することになり、効率よく売上や利益を向上できる。

重視する指標は、製品別の売上でなくてもよい。顧客別売上や生産コストや販売コスト、在庫数、原材料費率など数値化できるデータで分析する。それぞれの項目をランク付けし、いくつかの項目を組み合わせてあらゆる面から分析することもできる。ABC分析は応用範囲が広いのが特徴だ。

ABC分析の手順

まずは分析項目を決めて、A・B・Cのランクを付けるABC分類から始めよう。それでは、ABC分類とパレート図の作成方法・手順を紹介する。

手順1:ABCの分類

ABC文具店(架空の商店)を例に、製品の売上を指標としてABC分析をしてみよう。

まずは、重要度順にランク分けする。一定の期間の製品別の売上データを抽出し、売上の多い順に並べる。各製品について売上構成比と累積構成比を計算する。

累積売上構成比50%までをランクA、次の40%をランクB、残りの10%をランクCとする。どこでランクを分けるかは後で変更できるので、細かいところを気にせずに決めておけばいい。

ABC文具店の製品別売上を降順に並べ、ABC分類をしたのが(表1)だ。売上トップのボールペンが売上構成比30%、サインペンが20%であり、この2アイテムで累積売上構成比が50%になるので、これらをランクA(赤文字)とする。鉛筆、シャープペン、消しゴムまでで次の40%を占めるので、ここまでをランクB(緑文字)とする。残りの10%をランクC(青文字)とする。

ランクAは売上貢献度が高い最重要アイテムであり、ランクBはランクAの次に重要で、ランクCは最も重要度が低いアイテムということになる。

ABC分析とは?具体的な手法とメリット、活用方法を紹介

ここまでがABC分類だ。製品の売上は金額だけでなく、数量で分析することもできる。製品によって単価が異なるため、売上金額は売上数量に比例するとは限らないからだ。製品別の粗利額で分類するのも効果的かもしれない。売上が多くても利益額が多いとは限らないからだ。

ABC文具店の製品別利益でABC分析したのが(表2)だ。売上のABC分析と利益のABC分析は一致していない。売り上げではボープペンとサインペンがA分類であったが、シャープペンの利益率が高いため、利益ではシャープペンとサインペンがA分類になった。

売上と利益のABC分析表を組み合わせ、販売数が少なくても利益貢献の大きいものを把握することで、売上と利益を最大化する戦略をとることが可能になる。

ABC分析とは?具体的な手法とメリット、活用方法を紹介

ABC分析は、売上、売上の成長率、数量、利益、コスト、在庫、不良品など、ランク付けできるデータ項目なら何でも分析できる。いくつかの観点から、複合的に分析することが可能だ。

たとえば、コスト分析では原材料費や人件費、運送費、光熱費などを金額で分類し、累積構成比に応じてランク付けすればいい。在庫分析では、製品の単価や数量、在庫している日数別などで管理できるだろう。不良品分析では、製品別や生産した工場別、ロット別などで管理すればいい。同様に、営業パーソンの成績や工場別の売上なども分析・管理できる。

手順2:パレート図の作成

ABC分類の次は、それをベースにパレート図を作成してみよう。売上などの項目で多い順に並べたアイテムを棒グラフ、累積構成比を折れ線グラフにして、1つのグラフにしたのがパレート図だ。ABC文具店の(表1)のABC分類をベースに作ったパレート図が(グラフ1)で、アイテム別の重要度が一目でわかる。

ABC分析とは?具体的な手法とメリット、活用方法を紹介

さらに、(表2)の利益別のABC分析をもとに作ったパレート図が(グラフ2)だ。それぞれの項目における重要度をわかりやすく可視化できている。

ABC分析とは?具体的な手法とメリット、活用方法を紹介

このように、数値だけではわかりにくい重要度が、パレート図を作成すること認識しやすくなる。パレート図は、ABC分類を見える化したものと言えるだろう。

エクセルを活用したABC分析

ABC分類とパレート図の作成は、エクセルなどの表計算ソフトで簡単にできる。高度なシステムやソフトウェア、データベースは必要ない。個別アイテムのデータをエクセルに入力し、降順に並べ変え、累積構成比を出せばABC分類は完了する。

また、エクセルのグラフ作成のテンプレートには「パレート図」がある(図1)ため、ABC分類ができていればエクセルが瞬時に作成してくれる。おそらくエクセルを使い慣れた人なら、数秒で終わる作業だろう。

ABC分析とは?具体的な手法とメリット、活用方法を紹介
(図1 エクセルで作成するパレート図)
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ABC分析の目的とメリット

パレート図でランク分けした分類を可視化したことにより、どのようなことが可能になるのだろうか。また、ABC分析のメリットもあわせて紹介する。

パレート図による分析の目的

パレート図を作成することは、重点的に取り組むべき課題をあぶりだし、事業における合理的な判断を促進することが目的である。Cランクに分類された商品よりも、Aランクに分類した商品にリソースを注力する方がいいことが確認でき、さらにCランクに分類された商品を別の商品に入れ替えたときの売上への影響についてもシミュレーションできる。

パレート図のランクの累積構成比や集計期間を変えて変数を調整すれば、より現実的な戦略を立てることができるだろう。1ヵ月ごと、6ヵ月ごとというように定期的に数値を比較していけば、時系列で施策の効果を可視化できる。

視覚的にわかりやすいため、レポートや経営に関するプレゼンテーションにも活用しやすい点もメリットだ。

ABC分析のメリット

ABC分析の最大のメリットは、さまざまな項目で比較、分析でき、簡単かつ合理的に製品やサービスの重要度を把握できることだ。ABC分析による現状の可視化で、注力すべき製品を即座に確認でき、増産やコストコントロール、在庫管理に生かせる。

たとえば、Aランクである売れ筋商品は顧客の目につきやすい場所に陳列したり、陳列する面積を拡大したりする戦略を実行する。販売に時間や人材をより多く配分するときの判断材料となるはずだ。在庫についても、Aランクの商品の確保を最優先とし、欠品することがないようにしなければならない。

一方、ランクCの製品は、陳列面積を減らしたり、取扱数や在庫数を減らしたりするという戦略を実行することになる。ランクCの売上が上がらないようならば、取り扱いをやめる、もしくは別の商品に入れ替えるといった思い切った改善をした方がいいかもしれない。

コストコントロールにおいては、ABC分析により現在のコストの配分比率を把握し、重要度に応じたコスト配分への改善を促すことができるだろう。

ABC分析の活用法

ABC分析を、実際に売上増やコスト削減などに活用した事例を紹介しよう

ABC分析の活用事例6つ

ABC分析の重要度に応じて行う施策には、以下のようなものがある。

  1. 売上貢献度の高い商品を把握し、マーケティングを強化
    CMを強化する、DMを送付する、店舗での占有率を見直す、ランクCは刷新もしくは見直す。
  2. 売上貢献度の高い商品の在庫管理に注力
    在庫を小まめに確認して欠品を防ぎ、ランクBとCは欠品してから発注する。
  3. コストが高い項目を見直しする
    仕入先を発注金額でランク付けし、ランクAにはボリュームディスカウントを打診する、あるいは別の取引先に変更することを検討する。
  4. 売上貢献度の高い商品に対する、人材と時間の配分を増やす
    ランクの低い商品への人材と時間の配分を減らす。
  5. 売上貢献度の高い顧客へのアプローチとサービスを強化
  6. 商品別の在庫金額、在庫日数をランク付けして、売上貢献度と比較する

ABC分析を現状の分析でなく将来の売れ筋商品へと役立てる

現状をわかりやすく把握できるのがABC分析のメリットだが、今後の販売戦略などにも応用できる。

どのような製品が、ランクAになるかを分析することで商品開発にも生かせるし、ランクB、Cの商品を見せ方やマーケティングを変えることで、ランクアップを図ることができる。また、売上貢献度の高い顧客を年齢層などでランク付けすることで、新規顧客の創出にも活用できる。

ABC分析の注意点

ABC分析で注意しなければならないのは、ランクAの中に流行や特需などで一時的に売上が急増したものが含まれていても判別できないことだ。このような商品は、時間の経過とともに売上が落ちてランクが下がるケースが多い。

ABC分析は、あくまでも各アイテムの重要度を可視化するためのものであり、その結果は自分の目でしっかり確認しなければならない。一時的な売上増を把握するためには、期間を変えて分析・比較することも大切だ。

また、ランクCの商品も軽視し過ぎないことも注意が必要である。少なくても安定して需要がある商品である場合や、ランクCの商品があるからランクAの商品を購入するという場合もあるためだ。

ネットショップ(Eコマース)におけるABC分析

ネットショップの場合は、ABC分析の活用方法が異なるので紹介する。

ネットショップではABC分類が優れているとは限らない

現在は、ネットショップ(Eコマース)全盛の時代になってきた。Eコマースでは、在庫を維持するコストを抑えることができ、商品のディスプレイのスペースも必要としない。A分類でないC分類やD分類に属する「死に筋商品」であっても、販売や在庫管理にそれほどコストをかけずに売り上げや利益に貢献できる。今までと同じ項目だけのABC分析では現状を正しく把握することは難しいかもしれない。

ロングテールの法則

たとえば、ABC文具店のネットショップでは、ありとあらゆる商品を探すことができるならば、文房具の愛好家に支持されるサイトになる可能性がある。商品一つひとつの売り上げは少なくても、商品の種類を増やし、それらを合わせれば利益にも貢献する。これをロングテールの法則と言う。

ABC分類では、死に筋商品を重視していなかったが、ネットショップにおいては多くの商品を提供できることも戦略の一つと考えられる。むしろ、「死に筋商品」を含めた多くのラインナップを持つことで、顧客を引きつけることもできるのだ。

その場合は、売り上げ、数量などよりも、アクセス数、アクセスした顧客の行動、コンバージョン率(成約率)、利益などについて、違った見地からABC分析をすることで、ロングテール戦略をより効率的に運営することが重要だろう。

ABC分析は重点的に注力する商品を明らかにし、スムーズな経営判断を促進

ABC分析について、手法や手順、メリットおよび具体的な活用事例などを紹介した。ABC分析は、さまざまな項目で分析することにより現状を的確に把握できる分析方法であり、活用すれば効率よく売上向上に向けた施策を実施できる。この機会にABC分析を始めてみてはいかがだろうか。

文・THE OWNER 編集部

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