ABC分析,マーケティング,活用方法
(写真=alphaspirit/Shutterstock.com)

「ABC分析」。聞いたことがない人もいるかもしれないが、企業の経営戦略の立案やマーケティングの強化を行うための基本的なデータ分析法の一つである。世の中の様々な事象は決して平均的でなく、偏りあるという考え方だ。代表的なのは「80:20の法則」である。以下はその例だ。

・売上の8割を生み出すのは、2割の顧客である。
・売上の8割を生み出すのは、2割の社員である。
・ウェブサイトのアクセスの8割は、2割のページから生まれる。
・業務時間の2割で、8割の結果が生み出される。

この考え方をもとに、製品の売上・コスト・在庫などをウェイトが大きい順にランク付けして管理・分析することをABC分析という。ABC分析の具体的な手法と活用方法を紹介していこう。

ABC分析の手順

ABC分析とは?

ABC分析とは、製品の売上・コスト・在庫などをウェイトが大きい順にランク付けして管理・分析することだ。これは、ウェイトが大きいアイテムに対して重点的に経営資源を配分することで、売上や利益を効率的に向上させることができるという考え方に基づいている。

ABC分析は非常にシンプルではあるが、企業の経営戦略の立案やマーケティングのためのデータ分析の基本であり、コンサルティング会社などが初期分析としてよく使う手法でもある。

ABC分析のベースは、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート(1848~1923)が提唱した「80:20の法則」にあり、これは「パレードの法則」とも言われる。様々なアイテムをランク付けして重要度別に分析することから。「重点分析」とも呼ばれる。

アイテムをランク付けすることで、ビジネスをシンプルに管理・分析し、効率的に運用することができるので、経営やマーケティングなどさまざまな場面で活用できる。

たとえば、会社の売上の8割が2割の製品の売上で占められているのなら、それらの製品のマーケティングに注力することが、時間やヒューマンリソースなどの経営資源を最も効率的に配分することになり、売上や利益を効率よく増やすことに直結するだろう。

製品別の売上だけでなく、顧客別売上やコスト、在庫、原材料、社員成績など数値化されたデータなら何でも分析できる。それぞれの項目をランク付けし、それらを組み合わせて多角的に分析することもできる。ABC分析は応用範囲が広いのだ。

まずは分析項目のデータをもとに、A・B・Cのランクを付けるABC分類から始めよう。それをもとにパレート図を作成し、各項目の重要度を確認する。それでは、ABC分類とパレート図の作成方法・手順を紹介しよう。

手順1:ABCの分類

ABC文具店(架空の商店)を例に、製品の売上でABC分析をしてみよう。

最初のステップは、ABC分類だ。期間を決めて製品別の売上データを抽出する。売上の多い順に並べ、製品別の売上構成比と累積構成比を計算する。

累積売上構成比50%までをランクA、次の40%をランクB、残りの10%をランクCとする。この分類は後で調整できるので、始めは便宜的に決めておけばいい。

ABC文具店の製品別売上を降順に並べ、ABC分類をしたのが(図1)だ。売上トップのボールペンが売上構成比30%、サインペンが20%であり、この2アイテムで累積売上構成比が50%になるので、これらをランクA(赤文字)とする。鉛筆、シャープペン、消しゴムまでで次の40%を占めるので、ここまでをランクB(緑文字)とする。残りの10%をランクC(青文字)とする。

ランクAは売上貢献度が高い最重要アイテムであり、ランクBはランクAの次に重要で、ランクCは最も重要度が低いアイテムということになる。

(図1: ABC分類)
(図1: ABC分類)

ここまでがABC分類だ。製品の売上は金額だけでなく、数量で分析することもできる。製品によって単価が異なるため、売上金額は売上数量に比例するとは限らないからだ。製品別の粗利額で分類するのも効果的かもしれない。売上が多くても利益額が多いとは限らないからだ。

ABC文具店の例では、製品の売上金額でABC分類を行った。ABC分析のいいところは、売上だけでなく、コストや在庫、不良品など、データをランク付けできる項目なら何でも分析できることだ。

たとえば、コスト分析では原材料費や人件費、運送費、光熱費などを金額で分類し、累積構成比に応じてランク付けすればいい。在庫分析では、製品別や金額別、日数別などで管理できるだろう。不良品分析では、点数や金額などで管理すればいい。同様に、セールスマンの成績や工場別の売上なども分析・管理できる。

手順2:パレート図の作成

ABC分類の次は、それをベースにパレート図を作成してみよう。売上の多い順に並べたアイテムを棒グラフ、累積構成比を折れ線グラフにして、1つのグラフにしたのがパレート図だ。ABC文具店のABC分類をもとに作ったパレート図が(図2)で、アイテム別の重要度が一目でわかる。

このように、数値だけではわかりにくい重要度が、パレート図を作成すること認識しやすくなる。パレート図は、ABC分類を可視化したものと言えるだろう。

(図2: パレート図)
(図2: パレート図)

エクセルを活用したABC分析

ABC分類とパレート図の作成は、エクセルなどの表計算ソフトで簡単にできる。高度なシステムやソフトウェア、データベースは必要ない。個別アイテムのデータをエクセルに入力し、降順に並べ変え、累積構成比を出せばABC分類は完了する。

また、エクセルのグラフ作成のテンプレートには「パレート図」があるため、ABC分類ができていればエクセルが瞬時に作成してくれる。おそらくエクセルを使い慣れた人なら、数秒で終わる作業だろう。

(図3 エクセルで作成するパレート図)
(図3 エクセルで作成するパレート図)

ABC分析の目的とメリット

パレート図による分析の目的

パレート図の目的は、アイテムをランク付けすることで、重点的に取り組むべき問題をあぶり出すことにある。重点項目であるAランクを容易に確認できるだけでなく、たとえばCランクを思い切って別の商品に入れ替えた場合の売上への影響もシミュレーションできるので、戦略を立てやすい。

パレート図では、ランクの累積構成比や集計期間を簡単に変えることもできる。変数を調整することで、より実践に則した戦略を立てることができるだろう。

さらに期間ごとに比較すると、時系列で施策の効果を測定できる。ランクAのマーケティングに注力したり、ランクCを入れ替えたりした場合、ビフォーアフターをパレート図で比較すると、効果を一目で把握できる。

したがって、業務報告や経営に関するプレゼンテーションでも利用しやすいというメリットもあるのだ。

ABC分析のメリット

ABC分析はシンプルだが、現状を可視化して把握できることが最大のメリットだ。

ABC分析をすることで、製品やサービスの重要度を把握した上で、コストコントロールや在庫管理などを戦略的に行うことができる。たとえば、売れ筋であるランクAの製品を店舗内の目立つ所に陳列したり、陳列する場所を広げたりすることを検討する際に重要な指標となるだろう。また、ランクAの製品に人材や時間、費用を配分する際の判断材料にもなるはずだ。

在庫管理においても、ランクAの商品の確保を優先し、欠品を防ぐことが大切なのは明らかだ。一方ランクCの製品は、店舗での占有面積を下げ、在庫を減らすという戦略が有効だろう。ランクCは取り扱いをやめる、もしくは別の商品に入れ替えるといった抜本的な改革を検討すべきかもしれない。

コストコントロールにおいては、ABC分析でコストのウェイトを把握することで、効率的なコスト管理ができるだろう。

このように、重要度別に様々なアイテムをランク付けし、重視するもの・重視しないものを可視化できるのがABC分析なのだ。

ABC分析の活用法

ABC分析を、実際に売上増やコスト削減などに活用した事例を紹介しよう。

ABC分析の活用事例

  1. 売上貢献度の高い商品を把握し、マーケティングを強化
    CMを強化する、DMを送付する、店舗での占有率を見直す、ランクCは刷新もしくは見直す。

  2. 売上貢献度の高い商品の在庫管理に注力
    在庫を小まめに確認して欠品を防ぎ、ランクBとCは欠品してから発注する。

  3. コストが高い項目を見直しする
    仕入先を発注金額でランク付けし、ランクAにはボリュームディスカウントを打診する、あるいは別の取引先に変更することを検討する。

  4. 売上貢献度の高い商品に対する、人材と時間の配分を増やす
    ランクの低い商品への人材と時間の配分を減らす。

  5. 売上貢献度の高い顧客へのアプローチとサービスを強化

  6. 商品別の在庫金額、在庫日数をランク付けして、売上貢献度と比較する

ABC分析を現状の分析でなく将来の売れ筋商品へと役立てる

現状をわかりやすく把握できるのがABC分析のメリットだが、どのような商品が売れ筋なのかを分析することにも応用できる。

どのような製品がランクAになるかを分析することで商品開発にも生かせるし、ランクB、Cの商品を見せ方やマーケティングを変えることで、ランクアップを図ることができる。また、売上貢献度の高い顧客を年齢層などでランク付けすることで分析し、新規顧客の創出に活用できる。

ABC分析の注意点

ABC分析で注意しなければならないのは、ランクAの中に流行や特需などで一時的に売上が急増したものが含まれていても判別できないことだ。このような商品は、時間の経過とともに売上が落ちてランクが下がるケースが多い。

ABC分析は、あくまでも各アイテムの重要度を可視化するためのものであり、その結果は自分の目でしっかり確認しなければならない。一時的な売上増を把握するために、期間を変えて分析・比較することも大切だ。

ABC分析について、手法や手順、メリットおよび具体的な活用事例などを紹介した。この機会にABC分析を始めてみてはいかがだろうか。

文・平田和生(ストラテジスト)