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(画像=chakisatelier/stock.adobe.com)

2021年9月1日、デジタル庁が発足した。デジタル政策の司令塔という役割を担い、各省庁におけるデジタル化のスピードアップは同庁の舵取りにかかっていると言ってもいい。この記事では発足したばかりのデジタル庁に焦点を当て、今後の動きなどを解説する。

そもそも「デジタル庁」とは?

省庁や自治体など行政機関のデジタル化を進めることを目的に、設立されたデジタル庁についてどのような組織であるかを見ていこう。

発足の経緯と役割は?

デジタル庁の立ち上げは、菅義偉内閣の肝いりのプロジェクトだ。2020年9月に政権が発足後、同年11月、デジタル庁を2021年9月に発足させることを決定した。デジタル庁発足の検討から設置の決定まではわずか2ヵ月ほどしかかかっておらず、異例のスピードだったと言える。

これまで、政府のデジタル戦略を所管してきたのは「内閣官房IT総合戦略室」で、デジタル庁はこの内閣官房IT総合戦略室をより発展させた組織という位置付けだ。各省庁に対する権限もより強くなった。

つまり簡単に言えば、各省庁のアナログ的な行政手続きなどに、堂々と口を出すことができる組織ということだろう。

ちなみに、デジタル庁の公式サイトでは「デジタル庁は、デジタル社会形成の司令塔として、未来志向のDX(デジタルトランスフォーメーション)を大胆に推進し、デジタル時代の官民のインフラを今後5年で一気呵成に作り上げることを目指します」と説明されている。

どのような組織なのか?

デジタル庁のトップは内閣総理大臣で、その下にデジタル大臣を置き、デジタル大臣は副大臣と大臣政務官とともに組織の動きを決めていく。

初代のデジタル大臣にはデジタル改革担当大臣の平井卓也氏が就任し、デジタル副大臣とデジタル政務官には、それぞれ自民党衆議院議員の藤井比早之氏と岡下昌平氏が就いた。

デジタル庁の事務方のトップは「デジタル監」となり、初代のデジタル監には一橋大名誉教授の石倉洋子氏を充てる人事がすでに発表されている。米ハーバード大学院を修了し、さまざまな企業で社外取締役を務める経済学者として知られる人物だ。

どのようなことに取り組むのか?

デジタル庁が取り組む政策は、すでに発表されており、大きく以下の4つに分類される。

・デジタル社会に必要な共通機能の整備・普及
・国民目線のUI・UXの改善と国民向けサービスの実現
・国等の情報システムの統括・監理
・その他

「デジタル社会に必要な共通機能の整備・普及」では、個人・法人を特定してその真正性・完全性などを保証するID・認証機能を整備するとしている。具体的には、マイナンバー(個人番号)制度の普及・拡充のほか、サイバーセキュリティの強化なども担っていく。

「国民目線のUI・UXの改善と国民向けサービスの実現」では、さまざまな行政手続きをワンストップ化するサービスの展開などを目指す。その過程で、政府のウェブサイトの標準化・統一化などにも取り組んでいくこととなっている。

このほか、デジタル人材の育成・確保もデジタル庁の重要な役割だ。

デジタル庁に対しては懸念の声も

ここまでデジタル庁の概要を説明してきたが、取り組み内容に斬新さは特に感じない。いずれの内容もこれまで国が抱える課題として何度も指摘されてきたことだ。しかし、1つ1つの政策を着実に実行していけば、国全体のデジタル化が少しずつ前進していくことは間違いない。

ただし、そこで重要となるのが「実行力」だ。掲げた内容が立派であったとしても、必要不可欠なことであったとしても、実行力がなければ改革は進んでいかない。では、新たに発足したデジタル庁はその実行力を備えているのか。

この点については、さまざまな声があがっている。例えば、石倉氏をデジタル監に充てる人事については「優秀な方ではあるが高齢すぎるのでは」といった声がある。

デジタル監に関しては当初は、米マサチューセッツ工科大(MIT)メディアラボの伊藤穣一元所長を充てる方向で最終調整していた。そのため、伊藤氏と石倉氏のデジタルに対する知見のギャップを指摘し、デジタル庁の今後を懸念する人も少なからずいるわけだ。

発足したことが「ゴール」ではない

デジタル庁に対しては、官民連携事業においてもどれだけ存在感を発揮できるかも、注目されるところだ。例えば、自動運転車やコネクテッドカーの分野では、ソフトウェアや通信技術が鍵となり、インフラのデジタル化などが非常に重要なポイントとなる。

このほか、今後の人事も注目されるべき点のひとつだ。初代のデジタル監には石倉氏が就いたが、以後どのような人材を登用していくのだろうか。「天才デジタル大臣」と呼ばれる台湾のオードリー・タン氏のように、日本政府は大胆な人事戦略を打ち出していけるか、関心が集まっている。

ただ、次官級幹部の接待問題が明るみになるなど、発足早々に不祥事が相次いでいる。平井卓也デジタル相も接待を受けており、週刊文春から同件で取材依頼を受けた日に「割り勘」という形で接待費の支払いをするなど、見苦しい部分は否めない。今後こうしたコンプライアンスの部分も、姿勢が問われそうだ。

デジタル庁は発足したが、発足したことがゴールではない。まだ何もかも始まったばかりで、デジタル庁が期待外れに終わるのかどうかは、すべて今後にかかっている。まずは走り始めの最初の1年に注目したいところだ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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