“焼肉のファストフード店”をコンセプトに、2018年に誕生した「焼肉ライク」。一人焼肉が楽しめる独自の店舗づくりが多くの消費者から支持され、コロナ禍で外食業界が低迷するのをよそに、店舗数を増やし続けている。有村壮央社長を取材した。
(※2021年10月号「トップインタビュー③」より)
12月以降は
昨対を超える売上に
―直営6店舗を含め、国内で69店舗(8月末時点)を展開しています。2018年に1号店を出店して以降、順調に店舗数を増やしています。
毎月、3、4店舗のペースで新店がオープンしています。今のところ関東をメーンに店舗展開していますが、今後は地方都市にも積極的に出店していく方針です。
―現時点で、店舗の多くはビジネス街にあります。新型コロナウイルスが流行した直後はどの程度の影響がありましたか。
特に昨年の4月、5月は緊急事態宣言で人流が大きく減った影響で、売上はかなり厳しかったです。対策として、弁当の販売や朝焼肉などを始めて、時短を守りながら営業を続けました。そうこうするうちにいろいろなメディアが、「焼肉ライク」 は〝個食〞に力を入れていて、換気設備もしっかり整っていることから時代に合ったお店だということを盛んに取り上げてくれるようになり、売上は徐々に上向いていきました。12月には昨対の売上を超えるところまで回復し、現在ではコロナの影響はまったくありません。
―コロナ後、客層に目に見える変化 はありましたか。
以前は8対2で、圧倒的に男性客が多かったのですが、少しずつ女性の利用が増えています。現在では7割が女性客です。ただ、これはコロナの影響というよりも、「焼肉ライク」が一人焼肉を楽しめるお店であるということが、広く浸透した結果だと考えています。それだけ、一人でも気軽に焼肉を楽しみたいという方が潜在的に多くいらっしゃるということです。年齢層は30代、40代が中心で、最近は若い方の利用も増えています。
―「焼肉ライク」は炊飯をオートメーション化するなど、従来の焼肉店とは異なる店づくりをしています。
1号店のオープンから2年で、さらに進化した部分があれば教えて下さい。
タッチパネル注文機やセルフウォーターサーバー、セルフレジなどを導入するなど、かなり進化していると思います。以前は出来上ったメニューはスタッフが席に運んでいましたが、非接触を求める方が増えていることから、一部の店舗はセルフ式にしています。今後もタイミングや 費用対効果を見計らいながら、モバイルオーダーや事前決済などの仕組みを導入していく予定です。
―事業開始から2年でFC加盟店数が60店舗を超えました。どのような企業の加盟が多いのでしょうか。
飲食業者が半分、建設や不動産などの異業種が半分といったところです。異業種の方は、事業のリスク分散を考えて加盟するケースが多いようです。
―さまざまなFCビジネスがある中で、異業種の方はなぜ「焼肉ライク」を選ぶのでしょうか。
特に高く評価して頂いているのは、人材面での負担が他の外食チェーンに比べて少ないという点です。「焼肉ライク」は、自動調理設備の導入や工場でカットした肉を使用するなどして、店内での調理作業を極力減らし、少ない人員で店舗を運営することができるようにしています。ご存知のように、外食業界は深刻な人手不足で採用コストが年々上がる傾向にありますから、この点は加盟を決める重要なポイントになっているようです。
―以前の取材では、1店舗を5名で運営するというお話をされていました。
現在は4人で運営できるようになりました。昨年、弁当の販売を始めた際にも、調理の負担が増えないように肉を自動で焼くための機械を導入しました。とにかくオペレーションがシンプルなので、研修も最長で週間と短く、戦力化が早い点も加盟店から評価していただいています。
―収益性の高さも業態の大きな特徴です。
もちろん、その点についても高く評価してもらっています。「焼肉ライク」は多いところで 1日18回転します。人気ラーメン店も同じくらいなのですが、ラーメンの場合は客単価は平均800円であるのに対し、我々の店舗は1350円と、1・5倍以上あります。同じ場所でやったら圧倒的にうちの方が儲かるわけです。
ロードサイドでの店舗展開にも着手
―加盟企業の顔触れを見ていると、すでに複数店舗を展開している企業も多いようです。
現在、加盟企業は32社になりますが、そのうち2社が5店舗、1社が4店舗出店しています。加盟企業のほとんどは最初から増店することを前提に事業に取り組んで頂いていますし、本部としても多店舗展開を進めていってもらいたいと考えています。
―開業にかかる初期費用について教えて下さい。
加盟金や保証金などを含めて、総額5000万円前後の投資が必要です。これには物件取得費も含まれます。投資回収期間は3年以内を想定しています。
―今後、さらに店舗出店を加速化させていく上で、何か課題はありますか。
一番の課題は出店立地をいかにして確保するかということです。都心部については、基本的に一等地への 出店を狙っているのですが、コロナ禍で撤退する飲食店が増えていると言われている中でも、本当に良い場所はなかなか空きません。今後は、一等立地の物件を持っているオーナーや、業態変更を検討されている経営者の方との接触機会をもっと増やしていかなければならないと思っています。またエリアとしては、広島と仙台にはまだ店舗がないので、年内には出したいと思っています。
―年内には新たな試みとして、ロードサイドにも直営店を出店するそうですね。
ロードサイド店の場合、ファミリー層の取り込みが重要になるので、 都心部とは若干異なる店作りが必要になります。その辺のことを検証する意味も含めて、トライアルで直営店舗を出してみて、問題がなければFCでの展開を進めていくつもりです。今後は、一等地に出店するモデルと両輪で加盟店開発を進め、さらに店舗網を広げていければと考えています。