目次

  1. ゲルハルト・リヒターとは?
  2. ゲルハルト・リヒターの代表的な作品シリーズ
  3. ゲルハルト・リヒターの作品を見るには
  4. もっとゲルハルト・リヒターを知るには
  5. まとめ
  6. ゲルハルト・リヒターの作品のオーナーになる ANDARTではリヒターの人気シリーズ「アブストラクト・ペインティング」のひとつ《 Abstraktes Bild (P1) 》のオーナー権を販売している。オーナー権は1万円から購入できるので、ぜひチェックしてみてほしい。 ANDARTで《Abstraktes Bild (P1)》を見る ANDARTでは、オークション速報やアートニュースをメルマガでも配信中。無料で最新のアートニュースをキャッチアップできるので、ぜひご登録をご検討いただきたい。 文:ANDART編集部 まずは無料会員登録 >>「ANDART」のトップページはこちら >>「NEW ART STYLE」のトップページはこちら

ゲルハルト・リヒターとは?

ゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter)は1932年にドイツ・ドレスデンで生まれ、2022年には90歳を迎える現代アーティスト。20世紀後半に登場した新欧州絵画のパイオニアであり、「ドイツ最高峰の画家」と呼ばれている。

旧東ドイツ領に生まれたリヒターは、ドレスデン美術大学でアカデミックな美術教育を受けた。当時、社会主義リアリズムが国家的に推進されており、印象派以降の芸術を扱う書籍を借りることすらかなわない状況だったが、大学での基礎教育自体は有益だったという。

西ドイツへの旅行中に抽象表現主義などの現代美術に触れて強い影響を受け、1961年、西ドイツに移住。ベルリンの壁が建設されるわずか数ヶ月前のことだった。デュッセルドルフ芸術大学に入学してからは、政治的な制約を受けることなく、独自の作風でペインティングを展開していく。

画像引用:https://www.gerhard-richter.com/

リヒターは多彩なスタイルで絵画の本質を追求し続け、1964年にはミュンヘン、デュッセルドルフ、ベルリンで個展を開催。以降、現在に至るまで目覚ましい活躍を見せている。現代アートの国際展にも数多く参加しており、1972年には西ドイツ代表として第36回ヴェネチア・ビエンナーレに参加、1997年の第47回ヴェネチア・ビエンナーレでは金獅子賞を受賞。5年に1度開催されるドクメンタには6回参加した。1997年には高松宮殿下記念世界文化賞を受賞している。

世界最大のゴシック建築として知られるケルン大聖堂には、リヒターがデザインしたステンドグラスがはめ込まれている。これは、第二次世界大戦による破損の修復プロジェクトの一貫として、政府から依頼されて制作したもの。また、ライヒスターク(国会議事堂)の正面入口にも、ドイツの国旗をイメージした作品《黒、赤、金》が飾られている。このように多くの国家的なプロジェクトを手がけ、あらゆる人々が目にする場所に作品が展示されていることは、リヒターがまさに国家を代表するアーティストだということを示している。

ケルン大聖堂のステンドグラス
(画像=ケルン大聖堂のステンドグラス)

画像引用:https://www.koelner-dom.de/

作品が高額で取り引きされることでも有名で、オークションでの落札価格がたびたび世間を騒がせてきた。2012年、ロンドンで開催されたサザビーズのオークションに、ギタリストのエリック・クラプトンが所有していた抽象絵画《Abstraktes Bild (809-4) 》が出品された際には、約26億9000万円で落札され、当時生存中のアーティストの作品では史上最高額を記録。また、2020年にはサザビーズが香港で開催したオークションで、《Abstraktes Bild (649-2) 》をポーラ美術館が約30億円で落札。アジアのオークションに出品された西洋のアーティストの作品として、当時の最高価格となった。

《Abstraktes Bild(809-4)》(左)とエリック・クラプトン(右)
(画像=《Abstraktes Bild(809-4)》(左)とエリック・クラプトン(右))

画像引用:https://news.sky.com/

ゲルハルト・リヒターの代表的な作品シリーズ

リヒターの作風は「style-less(スタイルレス)」と言われるほど、表現手法やコンセプトが多彩であり、同じく20世紀絵画の巨匠であるパブロ・ピカソらの系統に位置づけられている。人物を描いた具象画からカラーチップを並べた抽象画まで、あるいは伝統的なキャンバスを支持体とした平面から巨大なガラス板を使った立体まで、幅広いスタイルが同時並行的に展開されてきた。中でも代表的な7つのシリーズについて解説する。

「アブストラクト・ペインティング」シリーズ

《Schwefel / 硫黄》1985
(画像=《Schwefel / 硫黄》1985)

画像引用:https://www.gerhard-richter.com/

リヒターの作品は世界中のコレクターやセレブに注目されているが、中でも人気が高いのが「アブストラクト・ペインティング」シリーズである。最も作品数の多いシリーズで、40年以上にわたって制作されてきた。スキージ(シルクスクリーンで使われるゴムベラ)やキッチンナイフなど、時代によって新たな画材を導入しながら、色彩や筆致といった絵画的な要素で画面を構成している。

ANDARTでは、「アブストラクト・ペインティング」シリーズの作品を取り扱っている。2014年に制作された16の限定版プリントのうち、最初のエディションであるP1だ。スキージの痕跡が残る表層の絵具をキッチンナイフでそぎ取り、何層にもなった色彩を露出させることで複雑な画面を実現した、ダイナミックな作品となっている。

「フォトペインティング」シリーズ

《Ema (Akt auf einer Treppe) /エマ(階段を下りるヌード》1966
(画像=《Ema (Akt auf einer Treppe) /エマ(階段を下りるヌード》1966)

画像引用:https://www.gerhard-richter.com/

「フォトペインティング」は写真投影法とも呼ばれ、新聞や雑誌の切り抜きやスナップ写真を模写した油彩画のシリーズである。オリジナルの写真に忠実に描きながらも、輪郭を微妙にぼかすことによって、イメージを不明瞭に浮かびあがらせる。

このシリーズの作品はリアルではあるものの、現実そのものではなく写真を想起させる。フォトリアリズム(スーパーリアリズム)のように本物らしく描かれた絵画は、まるで現実のように見えてしまうが、ピントのボケやブレを意図的に再現することによって、「現実を写そうとした写真」のような絵画を生み出すことに成功している。

「オーバーペインテッド・フォト」シリーズ

《9. Nov. 1999》1999
(画像=《9. Nov. 1999》1999)

画像引用:https://www.gerhard-richter.com/

「オーバーペインテッド・フォト」と呼ばれるシリーズでは、写真の上に油彩やエナメルでペインティングを施すことで、具体的なものを再現するはずの写真を抽象的な絵画に変換している。リヒターの制作の根底に流れるテーマのひとつに、「写真と絵画」の境界の探求があった。写真のように描いた絵画を、さらに写真に撮って作品とする、といった複雑な試みも行われている。

「カラーチャート」シリーズ

《1025 Farben / 1025色》1974
(画像=《1025 Farben / 1025色》1974)

画像引用:https://www.gerhard-richter.com/

さまざまな色のチップをモザイクのように並べたシリーズで、1960年代から1970年代にかけて集中的に制作された。画材店で見かけた色見本帳をもとに、絵画として構成している。リヒターは「デュシャン以来、作られるものはレディメイドだけである」、「デュシャンが登場して絵画は死んだ」と語っており、市販の色見本帳と絵具からつくられたカラーチャートシリーズには、マルセル・デュシャンの「レディメイド(既製品)」の概念と通じるものがある。

この試みはケルン大聖堂のステンドグラスにも応用された。高さ22mに及ぶ大画面に、1万枚以上の72色の正方形ガラスが敷き詰められているが、主観的な判断を排除するため、色の配置はコンピュータの乱数発生装置を用いて精密に計算されている。

「グレイ・ペインティング」シリーズ

《Grau / 灰色》1972
(画像=《Grau / 灰色》1972)

画像引用:https://www.gerhard-richter.com/

色が細分化していくカラーチャートとは対照的に、グレイ(灰色)のみに集約される「グレイ・ペインティング」シリーズ。アメリカを代表する現代音楽家ジョン・ケージは、「私にはなにも言うことはない。だからそのことを言う」という言葉とともに、自分を超越する「無」の概念を提唱し、無音の楽曲《4分33秒》などを発表した。ケージにインスピレーションを受けたリヒターにとって、グレイという色は無を表すものだった。

「ミラー・ペインティング」シリーズ

《11 Scheiben / 11枚のガラス》2004
(画像=《11 Scheiben / 11枚のガラス》2004)

画像引用:https://www.gerhard-richter.com/

「現実と仮像」というテーマにも興味を示すリヒターは、鏡やガラスなど反射する素材を積極的に用いてきた。「“何をどう見るか”にこそ意味がある」と述べるリヒターは、重ね合わせて立てかけただけのガラスパネルを作品として発表している。ぼんやりと景色が映し出されたガラスは絵画のようにも見え、“何をどう見るか”を鑑賞者にゆだねるというリヒターの姿勢を表している。

「アトラス」

《Zeitungs- & Albumfotos / 新聞とアルバム写真》 1962-1966
(画像=《Zeitungs- & Albumfotos / 新聞とアルバム写真》 1962-1966)

画像引用:https://www.gerhard-richter.com/

写真を制作の材料として用いてきたリヒターは、自身が収集した写真素材を「アトラス」として整理した。それぞれを50 x 60cmから73.5 x 51.7cmサイズのボール紙に貼り付け、時系列ではなくイメージの種類ごとに分類している。規格化された膨大なイメージは、それ自体で抽象作品のようでもあり、リヒターのペインティングの源を知る重要な資料でもある。

家族アルバムに貼られるようなスナップ写真、殺人事件の新聞記事のスクラップ、海や山の風景写真など、さまざまなイメージで構成される「アトラス」は、リヒター自身の厳密な指示によって展覧会で展示されるほか、コラージュなどと合わせて作品集としてもまとめられている。

ゲルハルト・リヒターの作品を見るには

日本の美術館が所蔵しているリヒターの作品は少ないが、美術館やギャラリーでたびたび展覧会が開催されているので、作品を目にする機会は巡ってくるだろう。2005年には金沢21世紀美術館とDIC川村記念美術館で回顧展が実現した。日本の美術館に収蔵されているのは次の2点。

《14枚のガラス/豊島》(愛媛県・豊島)

《14 Glasscheiben für Toyoshima (der Vergeblichkeit gewidmet) / 14枚のガラス/豊島(無目的のために)》2011
(画像=《14 Glasscheiben für Toyoshima (der Vergeblichkeit gewidmet) / 14枚のガラス/豊島(無目的のために)》2011)

画像引用:http://setouchi-art.org/

瀬戸内海に浮かぶ豊島には、大がかりな立体作品《14枚のガラス/豊島》がある。リヒターは2011年秋に初めて瀬戸内海を訪れ、穏やかな海に囲まれた静かな無人島を気に入ったといい、展示スペースのデザインも行った。

190 x 180cmの透明なガラス板を少しずつ角度を変えて並べた本作は、現存するリヒターのガラス作品として最大のもの。豊島への定期船は1日2便しかないが、サイクリングロードとして有名なしまなみ海道が走る島々とも近い。随時一般公開されているので、ぜひ足を運んで鑑賞してほしい。

《ステイション》(高知県立美術館)

《Station / ステイション》1985
(画像=《Station / ステイション》1985)

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マルク・シャガールの世界的なコレクションを有することで知られる高知県立美術館。ドイツ表現主義およびニュー・ペインティング(新表現主義)に属する収蔵品も多く、2019年に開催された展覧会「ニュー・ペインティングの時代」ではジャン=ミシェル・バスキアやアンゼルム・キーファーと合わせ、リヒターの作品が公開された。

ニュー・ペインティングは、1970年代に主流だったミニマル・アートやコンセプチュアル・アートに反発して生まれた具象絵画を中心とする潮流。本作は1985年に発表された油彩画で、大画面にぶつけられた制作の痕跡が生々しく感じられる。

ハンガリー国立美術館「Gerhard Richter. Truth in Semblance」展

ブダペストのハンガリー国立美術館では、2021年8月27日から9月14日まで、ハンガリーで初めてとなる大規模な回顧展「Gerhard Richter. Truth in Semblance」を開催している。初期の「フォトペインティング」から、鮮烈な色彩の抽象画やモノクロのポートレート、さらには最新の鉛筆画まで、約80点を展示をとおして、およそ60年にわたるリヒターの画業を俯瞰。あらゆるものに疑問を持ち分析を試みてきたリヒターが、時の流れや見かたによって変化する現実の表現方法を模索してきたことを示す。

展覧会の様子を動画で見ることができるので、少しでも現地の雰囲気を味わい、リヒターの世界をのぞいてみてほしい。日本でも再び大規模な展覧会が開催されるのが待ち遠しくなる。

もっとゲルハルト・リヒターを知るには

1960年代から現在まで活躍し続けているリヒターの人生や作品は、映画でも扱われている。リヒター自身の言葉は、書籍『ゲルハルト・リヒター写真論/絵画論』などでも語られているが、まずは手軽に映画を鑑賞するのがおすすめだ。より深くリヒターを知るための映画を3作紹介する。

『ある画家の数奇な運命』

『ある画家の数奇な運命』
(画像=『ある画家の数奇な運命』)

画像引用:https://www.neverlookaway-movie.jp/

2020年に日本でも公開された『ある画家の数奇な運命』はリヒターの半生をモデルにした長編映画で、第91回アカデミー賞外国語賞にノミネートされた名作。『善き人のためのソナタ』で有名なフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルクが監督を務めた。

リヒターへの何週間にもわたる取材をもとにしているが、「人物の名前は変えて、何が事実か事実でないかは、互いに絶対に明かさないこと」が映画化の条件とされており、ドキュメンタリーではなくフィクションとして制作された。

作中に登場する作品は、退廃芸術としてナチスに破壊されたものも多いが、ワシリー・カンディンスキーやピエト・モンドリアンといった巨匠の名画が高度な技術で再現されている。リヒターの「フォトペインティング」は、実際にリヒターの制作を手伝っていた弟子アンドレアス・シェーンが描いたもの。限りなく本物に近い作品と合わせて、リヒターをモチーフにしたストーリーを楽しめる。

『ゲルハルト・リヒター・ペインティング』

『ゲルハルト・リヒター・ペインティング』
(画像=『ゲルハルト・リヒター・ペインティング』)

画像引用:http://www.gerhardrichterpainting.com/

リヒターの制作の裏側を追ったドキュメンタリー。2020年には日本語字幕付きのDVDも発売された。アトリエで制作している様子や、若かりし頃のインタビューも収録されている。監督のコリンナ・ベルツは、ケルン大聖堂のステンドグラス制作のドキュメンタリー映画『ケルン大聖堂のステンドグラス』も手がけている。さらに、2019年に京都・清水寺で開催された「CONTACT つなぐ・むすぶ 日本と世界のアート展」では、リヒターの平面作品をベースにした映像作品《Moving Picture(946-3), Kyoto Version》が公開されたが、この制作にもベルツは携わっている。

リヒターと親密な関係を築いてきた監督だからこそ実現した、3年以上にわたる密着取材。その成果である本作を鑑賞すると、リヒターがどのように作品を生み出しているのかを深く知ることができる。

『アートのお値段』

『アートのお値段』
(画像=『アートのお値段』)

画像引用:https://www.pen-online.jp/

『マイ・アーキテクト ルイス・カーンを探して』でアカデミー賞にノミネートされたナサニエル・カーン監督による、アートとお金の関係をめぐるドキュメンタリー映画。著名なギャラリストやコレクターのほか、ジェフ・クーンズやジョージ・コンドなど超一流アーティストが登場する。リヒター本人や作品も出てくるので要チェックだ。

まとめ

ゲルハルト・リヒター
(画像=ゲルハルト・リヒター)

画像引用:https://www.tagesspiegel.de/

世界的に高い評価を得ながら、90歳を目前にしてなお芸術的探求を続けるアーティスト、リヒター。絵画の可能性を飽くことなく追求し、20世紀後半から現在に至るまで現代アートを牽引してきた。現在はケルンを活動の拠点とし、特にドイツでは国民的芸術家として老若男女問わず愛されている。

作品は世界各地の主要な美術館に収められており、存命ながらすでに美術史の文脈に位置づけられている。さらに、美しさを重視したリヒターの作品は純粋に視覚的な美しさを備えており、インテリアとしてポスターなども人気がある。

ジャンルを超越して多彩な表現方法を試みるリヒターだが、その根底には「見ることとは何か」「現実とは何か」という問いが横たわっているように思える。オークションでの高額な取引価格だけでなく、リヒターの作品そのものや、アーティストとしての考え方にも触れてみてほしい。そこに流れる深淵なテーマに向き合うことで、当たり前だと思っていた現実が違うふうに見えてくるかもしれない。

ゲルハルト・リヒターの作品のオーナーになる

ANDARTではリヒターの人気シリーズ「アブストラクト・ペインティング」のひとつ《 Abstraktes Bild (P1) 》のオーナー権を販売している。オーナー権は1万円から購入できるので、ぜひチェックしてみてほしい。

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文:ANDART編集部