どんなに気をつけて採用活動をしても、多くの人材を雇うと「使えない部下」が現れる。使えない部下の存在は会社全体のストレスにつながるため、気づいた時点で早めの対処が必要だ。人材教育に悩みを抱えている経営者は、効果的な指導法をチェックしていこう。
目次
使えない部下と使える部下の違いとは?
企業が社員全体のレベルを高めるには、人材を絞って重点的に教育を行う必要がある。効率的に人材教育を進めたいのであれば、まずは「使えない部下」と「使える部下」の違いを理解しておかなくてはならない。
では、両者には具体的にどのような違いがあるのか、「能力・性格・やる気」の3つの観点から紹介していこう。
能力の違い
優秀な人材とは違って、使えない部下は以下のような能力が不足している場合が多い。
・上司とのコミュニケーション能力
・一般的な業務をスムーズにこなす能力
・企画やリソースの配分などを考える能力
つまり、使えない部下は基本的な業務遂行能力が不足しているため、「これぐらいなら任せられるだろう」と安易に仕事を振り分けることは危険だ。与えられた仕事を最後までやり遂げられなかった場合、そのしわ寄せは同じ部署の上司や同僚が受けることになる。
性格の違い
性格に何かしらの難がある点も、使えない部下によく見られる特徴だ。具体的には以下のような人材が多いため、上司から見ると使えない部下は非常に扱いづらい。
・失敗をしたときに責任転嫁をする
・雑用などの地味な仕事を嫌がる
・怒られたときに言い訳が多い
・聞いているふり、返事をしたふりをする
簡単に言えば、使えない部下は仕事に対する責任感が弱く、目立たない仕事を嫌う傾向がある。一方で、使える部下は向上心が強いため、仮に上司に怒られても「なぜ怒られているのか?」「どう改善すべきか?」を考えながら失敗を次に活かしてくれるだろう。
やる気(モチベーション)の違い
使えない部下は、仕事に対するモチベーションも低い。なかでも仕事を「給料を受け取るためのもの」と捉えている人材は、会社や社会に貢献しようとする気持ちが薄いため、与えられた仕事をだらだらとこなしがちだ。
一方で使える部下は、昇進・昇給はもちろん社会貢献への意識も高いので、特に指示をしなくても必要な動きをしてくれる。また、キャリアアップを目指している人材であれば、自ら積極的に研修やセミナーなどに参加し、次々と必要な知識・スキルを習得してくれるだろう。
使えない部下がいるときの3つの選択肢!それぞれのメリットとデメリット
社内に使えない部下が見つかったときには、何かしらの対処をする必要がある。そこで次からは、使えない部下がいるときの主な選択肢と、それぞれのメリット・デメリットを簡単にまとめた。
無理に指導することが必ずしも正解とは限らないので、広い視野をもって今後の方針を考えてみよう。
1.使えるように教育・指導する
最初に考えておきたい選択肢は、使えない部下を教育・指導することだ。人材教育によってうまく能力を伸ばせれば、採用コストを無駄にすることなく社員全体のレベルアップを図れる。
ただし、教育・指導には以下のようなデメリットもあるため、安易に人材教育に乗り出すべきではない。
いくら上司が熱心に教育・指導をしても、そもそも部下側にモチベーションがなければスキルアップにはつながらない。また、あまりにも強引な方法を選ぶと、パワハラやセクハラなどにつながってしまう点も注意しておきたいポイントだ。
したがって、使えない部下を教育・指導する際には、事前に綿密な計画を立てておく必要がある。
2.そのまま放置する
成長の見込みがない部下がいる場合は、そのまま放置する方法もひとつの選択肢になる。採用コストは無駄になってしまうものの、教育・指導を諦めれば余計な教育コストや労力は発生しない。また、教育担当者のストレスを軽減できる点も、使えない部下を放置するメリットと言えるだろう。
ただし、使えない部下を放置すると全体のレベルアップを図れないばかりか、以下のようなデメリットが生じる恐れもある。
なかでも優秀な人材の業務負担が増える点は、経営者や上司が特に注意しておきたいポイントだ。使えない部下を放置すると、本来その部下が行うはずであった業務が優秀な人材に集中してしまう。その結果、優秀な人材だけが続けて退職してしまうケースも考えられるので、業務の配分には細心の注意を払わなくてはならない。
3.退職を促す
使えない部下を見つけたときに、上司が退職をやんわりと促すケースも見られる。その結果、部下が自分に合った転職先を見つけられれば円満退社となるが、実は退職を促す方法はリスクが高い。
では、具体的にどのようなデメリットがあるのか、メリットと合わせて確認していこう。
不当解雇やパワハラにつながる可能性がある点は、経営者や上司にとって頭を悩ませるポイントだろう。また、自然に退職を促すことは難しいので、場合によっては伝える側の上司が大きなストレスを抱えることになる。
使えない部下の効果的な指導方法とは?特徴・タイプ別に解説
では、「使えない部下を教育・指導する」と決めた場合は、具体的にどのような方法が考えられるだろうか。ベストな方法は人材によって異なるため、ここからは部下の特徴・タイプ別に効果的な指導方法を解説していこう。
仕事ができない部下の指導方法
仕事ができない部下に対しては、とにかく丁寧に業務の遂行方法を教える方法が効果的。シンプルな言葉で分かりやすく教えることを心がければ、物分かりが悪い部下でも理解してくれる可能性がある。
ただし、いきなり難しい仕事を任せると、スキルアップのモチベーションを失ってしまう。したがって、最初は誰でもこなせるような仕事から任せて、徐々にステップアップさせていく方法がおすすめだ。
また、常に部下の仕事ぶりをチェックするわけにもいかないため、「報告・連絡・相談の適したタイミング」も事前に教えておきたい。必要なタイミングで報告・連絡・相談がくるようになれば、仮に失敗したとしてもダメージを最小限に抑えられる。
一般常識が身についていない部下の指導方法
一般常識やビジネスマナーは教えるべきものが多いので、すべてを口頭で伝えきることは難しい。また、一度に多くの情報を伝えられると、指導を受ける部下側も混乱してしまう恐れがある。
そのため、一般常識が身についていない部下が見つかったら、セミナーに参加させることを検討したい。例えば、覚えた知識を実践で練習させてくれるセミナーを選べば、効率的に常識やマナーを身につけられる。
なお、書籍や自社制作の資料を活用する方法もあるが、そもそもモチベーションがない部下は自主的に学習しない可能性が高いので注意しておこう。
性格に難がある部下の指導方法
責任転嫁や言い訳が多い部下に対しては、とにかく褒める指導方法をおすすめしたい。褒めることで部下の自尊心を満たせば、自然と仕事に対するプライドや責任感が生まれるためだ。
逆に悪い部分を怒るだけの指導方法を選ぶと、性格に難がある部下は「誰も認めてくれない…」のように卑屈な考えをもってしまう。褒めることはモチベーションの刺激にもつながるので、部下から報告・連絡を受けた際にはできるだけ褒める部分を探してみよう。
やる気がない部下の指導方法
そもそもやる気がない部下に対しては、「長所を伸ばす方法」が効果的だ。部下の長所を見つけてうまく伸ばしてあげれば、少しずつ仕事に興味をもってくれるかもしれない。
それでもモチベーションが高まらない部下に対しては、「なぜやる気が起きないのか?」について優しくヒアリングする方法も考えられる。もし仕事に集中できない特別な事情がある場合は、ひとまずその問題が解決するまで気長に待つことを考えたい。
なお、やる気がない部下を厳しい言葉で叱責すると、余計にモチベーションを奪ってしまうので注意しておこう。
マイクロマネジメントはNG!上司や経営者自身の感情コントロールも重要に
使えない部下を見つけたときに、その部下の仕事ぶりや行動を逐一管理しようとする上司は多い。しかし、「マイクロマネジメント」とも呼ばれるこの行為は、部下の大きなストレスにつながるので基本的にはNGだ。
マイクロマネジメントを防ぐには、部下を指導する上司や経営者も自分の感情をコントロールする必要がある。冷静に考えているつもりでも、「理想の部下を育てたい」という気持ちが強いといつの間にか過干渉してしまうことがあるので、指導する側も以下のことを心がけて感情をコントロールしよう。
・「こんな仕事ができて当たり前」と考えない
・カバーできる失敗は「成長の機会」と考えて許容する
・口を出す範囲をあらかじめ決めておく
いずれもシンプルな対策のように思えるが、マイクロマネジメントは意外と見落としがちな落とし穴なので注意しておきたい。
部下に選択肢を与える方法も効果的!正しい方法でマネジメントを
使えない部下やマイクロマネジメントへの対処法としては、「選択肢を与える方法」も考えたい。部下に自分自身で考えるきっかけを与えれば、仕事の重要性やポイントを自覚してくれるだけではなく、上司が部下の考え方を知るきっかけにもなるためだ。
具体的な手段としては、部下に「オープンクエスチョン(※はい・いいえで答えられない質問)」を投げかける方法が挙げられる。例えば、「この商品をネットで販売する予定だが、どうだろうか?」という質問を「どんな方法で販売すれば売上が伸びるだろうか?」のように言い換えれば、部下は自分の考えを話してくれるようになる。
ただし、なかにはオープンクエスチョンが苦手な人材もいるため、選択肢を与える方法はすべての部下に実践すべきではない。部下を効率的に指導するには、一人ひとりの能力や性格を見極めるところから始める必要があるので、指導する側はこの作業を怠らないようにしよう。
まずは一人ひとりの能力や性格を見極めるところから
最適な指導法は社員によって異なるため、人材教育の方法は統一化すべきではない。多少の手間はかかるが、一人ひとりの能力や性格を慎重に見極めることが会社全体をレベルアップさせる近道になる。
また、使えない部下に対しては放置や見限るなどの選択肢もあるが、これらの方法を選ぶと採用コストが無駄になってしまうので、まずは「どうにかして教育・指導できないか?」という方向性から考えてみよう。