コロナ禍で債務超過に陥り、上場廃止の危機に瀕している企業が増えている。債務超過に陥ると、上場廃止基準に抵触するからだ。タメニー、鴨川グランドホテル、フレンドリーなどの企業が挙がっている。この記事では、コロナ禍で上場廃止の危機を迎えている企業を紹介する。
債務超過を1年以内に解消しなければ…
新型コロナウイルスの感染拡大は、さまざまな企業の業績に大きなダメージを与えた。観光業や宿泊業、交通、アパレル関連の小売店などのほか、ウェディング事業を展開している企業など、影響を受けている業種は非常に幅広い。
これらの業種に属する上場企業の決算発表では、売上の大幅減や赤字転落などが次々と明らかになり、債務超過に陥った企業も少なくない状況だ。
上場企業の場合、債務超過に陥るということは、上場廃止の危機を迎えることと同義だ。例えば、東証一部と東証二部に上場している企業の場合、上場廃止基準における「債務超過」の項目では、以下のような説明がある。
「債務超過の状態となった場合において、1年以内に債務超過の状態でなくならなかったとき(原則として連結貸借対照表による)」
ちなみに「審査対象事業年度の末日以前3ヵ月間の平均時価総額が1,000億円以上の場合」や「法的整理、私的整理、地域経済活性化支援機構の再生支援により債務超過でなくなることを計画している場合」は、この限りではない。
しかし、上場廃止を避けるためには、1年以内に債務超過の状態を解消しなければならないのが基本的なルールとなっている。
上場廃止までの「猶予期間」に入っている上場企業は?
上場企業が債務超過に陥ると、上場廃止までの「猶予期間」が定められる。例えば、債務超過となった事業年度の末日が2021年3月31日の場合、猶予期間は2021年4月1日から2022年3月31日まで、といった具合だ。
そして、東京証券取引所などを運営する日本取引所グループは、上場廃止の猶予期間に入った銘柄を公表している。2021年9月6日時点では以下の15社がリスト入りしている。
猶予期間が1年間の企業と2年間の企業があるが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響に起因する債務超過と認められた場合は、猶予期間が2年間となっている。
コロナ禍によるダメージが大きかった企業
上場廃止の猶予期間に入っている企業の中から、特にコロナ禍によるダメージが大きかった企業をいくつか紹介していこう。
タメニー:ウェディング事業が大幅な減収
婚活ビジネスやウェディング事業を展開するタメニーは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でウェディング事業の収益が大幅に落ち込んだ。実施の延期やキャンセルが相次ぎ、債務超過に陥った。
鴨川グランドホテル:緊急事態宣言でキャンセル多発
鴨川グランドホテルが債務超過に陥った理由は、新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言の発令で、個人客や団体客のキャンセルが多発したことや、感染拡大防止の観点から一時休業を余儀なくされたことなどだ。
フレンドリー:コロナ禍の影響で居酒屋事業の売上が急減
居酒屋などを展開するフレンドリーは、コロナ禍による外出自粛などによって売上高が激減したほか、感染防止対策に協力するために店舗の休業を決めたことで、債務超過に陥った。
コロナ禍の収束時期は不透明、厳しい状況が続く
コロナ禍の影響が認められた場合、上場廃止までの猶予期間が1年長くなるが、コロナ禍がいつ収束するか不透明な中、債務超過の解消はなかなか厳しいものがある。猶予期間入りしている企業の経営者には、非常に難しい舵取りが求められる。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)