1週間の国内外のアートニュースから、ANDART / YOUANDART取り扱いアーティストの情報を中心にピックアップ。今週は「アーティスト & 作品」「ファッション & カルチャー」「展覧会」「美術館」の4つのテーマでお届けします。気になるアーティストの話題をさくっとチェック！
アーティスト & 作品
撤去か保護か？イギリスに現れた新作バンクシー作品、その後。
先日、バンクシーの新作がイギリスに複数現れ、バンクシー自身もそのメイキング映像をInstagramに投稿し、実物であることを認めた。それから1週間経った今、作品ごとにその扱いは大きく変わっている。何者かによって白く塗りつぶされてしまった作品もあれば、その場にふさわしくないと判断され自治体に撤去された作品もある。一方で、屋外の作品に保護シートがかけられたり、盗難を防ぐためにレプリカとの入れ替えを検討されている作品もある。多くの人に愛されながらも、物議をかもす作品を残し続けてきたバンクシーらしい顛末だ。
連記事：バンクシーから夏休みのサプライズ！新作9点のメイキング映像公開
バンクシーらしきグラフィティに警備員を配備。過去の作品塗りつぶしに対する批判を受け。
画像引用：https://www.bbc.com/
8月18日、イギリスにあるエセックス州の護岸で、海で釣りをする少年を描いたステンシル作品が現れた。先日、この州と近いサフォーク州とノーフォーク州で、バンクシーの新作グラフィティシリーズ「A Great British Spraycation」が発表されたこともあり、地元の議会は、本作品もバンクシーの作品であることを期待して、グラフィティに警備を配置しているという。同地区の議会では、2014年に描かれたバンクシーのグラフィティを、バンクシーが自身のウェブサイトで公開する前に塗りつぶしたことで批判を受けていた。(BBC)
画像引用：https://www.bbc.com/
ダニエル・アーシャム、型破りな新作家具シリーズを発表。
画像引用：https://www.wallpaper.com/
ダニエル・アーシャムといえば、ポケモンやスーパーカー、スニーカーなど、どこにでもあるようなものを、1000年後に石灰化したり浸食されたりして出土する遺物に見立てたシリーズが有名だ。そんなアーシャムが、新たに家具のシリーズを発表した。2019年にデビューした家具コレクション「Objects for Living」に続くものであり、前回と同じくNYのデザインギャラリー「フリードマン・ベンダ」とともに発表する。
第1弾の作品には、アーシャム独特の化石のような美学を受け継いだものもあったが、今回はより有機的フォルムとなっている。これは、アーシャムがパンデミックの間、幼い家族と一緒に家で過ごした膨大な時間を反映したものだという。(Wallpaper*)
ピエロ・マンゾーニの「Artist’s Shit」をオマージュ。バンクシーやアンディ・ウォーホルの「排泄物」の缶詰をNFTオークションで販売。
画像引用：https://www.advocate.com/
トランスジェンダーでカナダ系アメリカ人のパフォーマンスアーティストであり、グッゲンハイム賞を受賞したことでも知られる・Cassilsが新作「$HTコイン」を発表した。消費主義への批判としてアーティストの排泄物を入れたブリキ缶を展示した物議を醸したピエロ・マンゾーニの「Artist’s Shit」にインスピレーションを受けた33個の缶詰の作品。その中身はそれぞれ、バンクシー、ダミアン・ハースト、ジェフ・クーンズ、アンディ・ウォーホルなど、一流の「白人男性」アーティストの食生活を綿密に調査し、彼が同じものを食したものだ。アーティストの経済的価値が高い順に、毎日価格を下げてNFTの形でwebオークションにかけられた。
現代のトップアーティストのうち、「シスジェンダー(非トランスジェンダー)の男性」でない人はわずか2％であり、主要な美術館に展示されているアーティストの85％が白人であるという点、また、マーケットのその傾向の打破を期待していたNFTでも変わらないヒエラルキーに対しての批判をこの作品は含んでいる。(ADVOCATE)
ファッション & カルチャー
山口歴の描くポケモン。「ポケモン ミーツ アーティストUT」が8月27日に発売決定。
山口歴 Instagram (@meguruyamaguchi)より
2021年で誕生25周年を迎えたポケモン。ユニクロのグラフィックTシャツブランド「UT」は、ポケモンと現代アーティストとのタッグによる「ポケモン ミーツ アーティストUT」を8月27日に発売する。アーティストは、NYを拠点に活動する山口歴と、革新的な作風に注目が集まるロンドンのアーティストジェームス・ジャービス。
山口歴の特徴的な手法である筆跡アートによって描かれたのは、ポケモンたちが戦う勇ましい姿が描かれて、ファッションアイテムとしても完成度の高い仕上がりとなっている。今の季節にぴったりの「UT」のほか、秋冬にも楽しめるスウェットも合わせて販売される。
なお、UTでは、これまでにも、アンディ・ウォーホル、ジャン＝ミシェル・バスキア、KAWSといった著名な現代アーティストたちとコラボレーションを行っている。
杉本博司のデザインするルームフレグランスボトル。「ディプティック」創業60周年を記念。
画像引用：https://www.fashion-press.net/
パリのフレグランスメゾン「ディプティック」は、創業60周年を記念し、アーティストとのコラボレーションやポップアップイベントなどの企画を行っている。8月26日には企画第4弾として、5人のアーティストが“香りのアート作品”「アーティスト・エディション」を制作。2021年9月10日(金)から10月10日(日)まで、東京・神宮前のジャイルにて期間限定ストアをオープンし展示・販売を行う。杉本博司は、ルームフレグランスボトル「無限の香り(Fragrance of Infinity)」を制作。江之浦測候所のある「柑橘山」に配置された数理模型をモチーフにしたデザインとなっている。
空山基がデザインする「Mizuno」のフラッグシップシューズ第二弾「WAVE PROPHECY SORAYAMA」発売。
驚異的な写実力を武器に、人体と機械の美を追求した作品で国内外問わず伝説的な存在となっている「空山基」。1978年より制作を行う『セクシーロボット』シリーズが世界中で有名だ。「WAVE PROPHECY SORAYAMA」ではミズノの構造的テクノロジーを結集し、独自の進化を遂げたソールユニット『INFINITY WAVE』を「空山基」監修のもとアップデート。メタリックな質感はそのままに、フォーマルなスタイルにコーディネートしやすいブラックがベースとなっている。
展覧会
渋谷駅前に「世界一小さな美術館＠GMOデジタル・ハチ公」がオープン。バンクシーの代表作「風船と少女」が登場。
GMOインターネットグループは、GMOインターネットグループ第2本社が入る「渋谷フクラス」2Fに、2021年9月5日（日）、アートスペース「世界一小さな美術館＠GMOデジタル・ハチ公」をオープンすることを発表した。記念すべき第1弾展示では「Banksy Artworks from Masatoshi Kumagai Collection（バンクシー展）」として、バンクシーの代表作「風船と少女（Girl with Balloon）」を展示する。このシリーズは2002年にロンドンで生まれた後、バージョンを変えながら世界中の街角に描かれてきたが、今回展示する作品は、2004年に制作された150点のうちのひとつであり、関係者への販売時のみ入れられるハートマーク付きのサインが作品左下に施された、希少性の高い作品となっている。
ピカソ作品展が小田急百貨店新宿店で開催、版画やデッサンなどを展示「生誕140年記念 ピカソ作品展」
小田急百貨店新宿店の本館10階の美術画廊にて、8月25日（水）～31日（火）に「生誕140年記念 ピカソ作品展」が開催される。今年で生誕140年を迎える20世紀最大の巨匠パブロ・ピカソ。芸術へのあくなき探求は油彩のみならず、版画、彫刻、陶芸など幅広い分野に及び、生涯にわたって制作された版画は2,000点にのぼる。展覧会ではその初期から晩年までの作品約40点を、版画を中心にデッサン、陶芸も交えて一同に展示する。
金氏徹平の展覧会が都内2箇所で開催。
日常的なイメージをはらむフィギュアや雑貨をモチーフに、現代社会で再生産され続ける情報のイメージをつくりだす美術家・金氏徹平の展覧会が都内2箇所で開催されている。ひとつは、RICOH ART GALLERYの金氏徹平 「S.F.(Splash and Fragments)」。金氏の代表的なシリーズをリコーの2.5Dプリントで再構築しており、日本では初公開となる作品群も含む。
もうひとつは、GYRE GALLERYで開催中の「村田沙耶香のユートピア_〝正常〟の構造と暴力ダイアローグ デヴィッド・シュリグリー ≡ 金氏徹平」。小説『コンビニ人間』で芥川賞を受賞した村田沙耶香の“ユートピア”という世界観を、村田沙耶香と現代美術家のデヴィッド・シュリグリー、金氏徹平との相互の作品を通じた対話によって浮かび上がらせていく展示となる。
風景の中で感じる記憶や感情、命の存在を描くayaka nakamura展「wind」開催。
「命の存在」をテーマに、繊細かつ力強い画面づくりを目指し、絵や映像などを手がけるアーティスト・ayaka nakamuraの個展「wind」が、阪急MEN’S TOKYO タグボートで開催される。ayaka akamuraの作品は、日常の風景を写真や映像に収めることから始まり、アクリル絵の具をメインに風景の中にあるエネルギーを幾重にも重ねている。即興的な線と素材の蓄積は命の動きと集まりを表し、抽象と具象の間の絵は、見た者の記憶の風景に繋がっていく。会期は2021年8⽉24⽇〜9⽉13⽇。
美術館
ニューヨークの美術館・博物館で、すべての来館者と従業員はワクチン接種の証明書が必要に。
8月17日より、ニューヨーク市の美術館、アートフェア、アートギャラリーを訪れる人は、予防接種の証明書の提示を求められるようになった。このルールは、博物館、コンサートホール、水族館、ジム、映画館、コンベンションセンター、動物園などの施設の従業員と利用者の両方に適用される。ワクチン接種者は、ワクチン接種カード、NYC COVID SAFEアプリ、または州のExcelsiorアプリで接種状況を確認できるよという。違反した場合の罰金は1,000ドルからとなっている。一方、デルタ株の対策としてワクチンを接種者も室内でのマスク着用を再開すべきだという新たな連邦政府のガイダンスにもかかわらず、マスク着用義務は復活しないようだ。(artnet news)
約1.5億円のモネの絵画、オランダの美術館で盗難未遂。スタッフと来館者によって阻止される。
オランダにあるザーン美術館でモネの油絵≪The Voorzaan and the Westerhem≫が2人組の男に狙われた。強盗未遂事件は、日曜日の午前10時半頃に発生。男は絵画を小脇に抱えて美術館を逃げ出し、共犯者が運転するオートバイに乗ろうとしたところをスタッフと来館者が阻止。強盗は絵を落とし、バイクと一緒に走り去ったという。事件の最中に容疑者2人のうちの1人が発砲したが、負傷者はいなかった。この作品は、2015年にザーンダム美術館が120万ユーロ（約1.5億円）で購入。同施設が獲得した中で最も高価な作品だという。(CNN)
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