フィリップス、上半期の売り上げがコロナ前より25%増

フィリップス、上半期の売り上げがコロナ前より25%増
(画像=フィリップス、上半期の売り上げがコロナ前より25%増)

2021年上半期、フィリップスオークショニアズはオークション販売総額452,006,870ドル(約497億2,075万円、1ドル=110円で計算)を達成した。これはコロナウイルス流行前の2019年の同期比よりも15%増加したことになる。さらに、プライベートセール販売総額は90,673,838ドル(約99億7,412万円)で、こちらは2019年同期比より107%増を達成した。フィリップス全体の売上高は5億4,270 万ドル(約596億9,700万円)を達成し、2019年同期比より25%増の結果となった。以上の結果により、コロナ禍におけるアート需要が高まっていることを証明した。

さらにフィリップスはニューヨーク、ジュネーブ、香港で「ホワイトグラブセール(出品作品が完売すること)」を達成し、オークション業界で最も高い落札率を記録する快挙を達成した。

フィリップスオークショニアズとは

世界三大オークションハウスのひとつであるフィリップス。200年以上の歴史を持つイギリス発祥のオークション会社で、20世紀および21世紀のアートや時計、ジュエリーなどを売買するプラットフォームを提供している。ニューヨーク、ロンドン、ジュネーブ、香港にサロンを構えてオークションや展示会を開催したり、世界各地にあるオフィスやオンラインも駆使しながら世界中にサービスを広げている。

また、フィリップスはデジタル領域にも力を入れており、コロナ禍を経てオークションのライブストリーミングやアプリ配信などオンライン化を進め、よりグローバルなサービスへと発展している。2019年上半期と比べ、オンラインで販売された出品数は84%増、オンラインで販売された作品の価値も184%上昇するなど、世界中からより気軽に参加することができるオンラインオークションはもはや新たな常識となっているようだ。

さらに4月にはMad Dog Jones の《Replicator》 がフィリップス初のNFTとして販売され、カナダの現役アーティストとしての記録を打ち立てるなど、デジタルアートの売買にも力を入れている。

フィリップス2021年春季 トップロット(アート)
第1位)奈良美智《Missing in Action》(2000年)
落札価格:$15,948,153(約17億5,429万円)

日本を代表する現代アーティスト、奈良美智の作品がトップにランクイン。香港セールにて落札された。自身の代表的なモチーフである鋭く睨む少女を優しいタッチと色合いで描いている。


第2位)ゲルハルト・リヒター《Abstraktes Bild (940-7)》(2015 年)
落札価格:$12,258,390(約13億4,842万円)

Abstraktes Bild (940-7)
(画像=Abstraktes Bild (940-7))

世界中で最も注目を集める画家の一人であるドイツ出身の画家、ゲルハルトリヒター。世界のセレブや著名人にもコレクターが多いことで知られている。香港セールで落札された。


第3位)デイヴィッド・ホックニー《A Neat Lawn》(1967年)
落札価格:$11,000,000(約12億1,000万円)

A Neat Lawn
(画像=A Neat Lawn)

現在アメリカ・ロサンゼルスを拠点に活動するイギリスの画家。1960年代よりポップアートの運動に参画し、大きな影響を与えた。この作品はニューヨークセールで落札された。

第4位)ウェイン・ティーボー《Winding River》(2002年)
落札価格:$9,809,000(約10億7,899万円)

Winding River
(画像=Winding River)

ウェイン・ティーボーはアメリカの画家で、風景画や人物画の他にケーキやホットドッグなど日常のものをカラフルに描く表現方法で知られている。この作品はニューヨークセールで落札された。

第5位)ヴィヤ・セルミンス《Untitled (Ocean)》(1987-1988年)
落札価格:$7,748,000(約8億5,228万円)

Untitled (Ocean)
(画像=Untitled (Ocean))

ヴィヤ・セルミンスはラトビア系アメリカ人の画家で、海や蜘蛛の巣、岩など自然環境や現象などを写実的に描く表現が特徴。この作品はニューヨークセールで落札された。

第6位)村上隆《赤鬼と青鬼と48の羅漢》(2013年)
落札価格:$6,080,000(約6億6,880万円)

赤鬼と青鬼と48の羅漢
(画像=赤鬼と青鬼と48の羅漢)

日本を代表する現代アーティストである村上隆。「STARS展」でも発表した迫力ある赤鬼と青鬼シリーズの作品がランクイン。この作品はニューヨークセールで落札された。

第7位)ジャン・デュビュッフェ《La féconde journée》(1976年)
落札価格:$6,039,265(約6億6,431万円)

La féconde journée
(画像=La féconde journée)

ジャン・デュビュッフェは、20世紀のフランスの画家。アンフォルメルの先駆者と見なされ、従来の西洋美術の伝統的価値観を否定して、アール・ブリュット(生の芸術)を提唱した。この作品はロンドンセールで落札された。

第8位)デイビット・ハモンズ《It’s Not Necessary》(1990年)
落札価格:$5,475,000(約6億225万円)

It’s Not Necessary
(画像=It’s Not Necessary)

デイビット・ハモンズはロサンゼルスを中心に活躍した黒人アーティスト。ニューヨークの路上でスノーボールを並べて売っていたことでも知られている。その他黒人文化に関わる作品を多く制作している。この作品はニューヨークセールで落札された。

第9位)ブライス・マーデン《Elements III》(1983-1984年)
落札価格:$5,233,000(約5億7,563万円)

Elements III
(画像=Elements III)

ブライス・マーデンはニューヨークで活躍したミニマリズムアーティスト。自然から採集した木の枝を使ったドローイングなどで知られている。この作品はニューヨークセールで落札された。

さらに、ロンドンとニューヨークで行われた「New Now」オークションでは過去最高の売上高を記録し、他にも様々なアーティストが自身のオークションレコードを更新するなど、オークション業界において新進アーティストも大きな盛り上がりを見せる結果となった。

アジア圏でのオークション実績
近年アジア圏でのオークション実績は著しく成長している。フィリップスでは2021年上半期の総売り上げのうち34%がアジアのコレクターによる売上であり、さらに2021年上半期の上位10ロットのうち、40%がアジアのコレクターによる落札だったようだ。現在欧米生まれのほとんどのオークションハウスは香港にも拠点を構えており、アジア圏最大級のアートフェア「アート・バーゼル香港」も開催されるなど、今や香港はアジア圏のアート市場を盛り上げる重要な拠点となっている。

香港で開催されるアートオークションでは、アジア圏出身の作家が売買されることも多く、日本人アーティストの作品が上位価格で落札されることも少なくない。フィリップスオークショニアズ2021年上半期の上位10ロットには奈良美智と村上隆という、日本代表する現代アーティストもランクインしており、そのうち1位の奈良美智は香港セールで落札された。よりグローバルなオークションハウスへと進化したフィリップスで、アジア圏から日本人アーティストが今後も続々と世界に進出することに期待が集まっている。

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