後継者で会社が破綻?事業承継で必要になる“意外な資金
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風間 啓哉
風間 啓哉(かざま・けいや)
監査法人にて監査業務を経験後、上場会社オーナー及び富裕層向けのサービスを得意とする会計事務所にて、各種税務会計コンサル業務及びM&Aアドバイザリー業務等に従事。その後、事業会社㈱デジタルハーツ(現 ㈱デジタルハーツホールディングス:東証一部)へ参画。主に管理部門のマネジメント及び子会社マネジメントを中心に、ホールディングス化、M&Aなど幅広くグループ規模拡大に関与。同社取締役CFOを経て、会計事務所の本格的立ち上げに至る。公認会計士協会東京会中小企業支援対応委員、東京税理士会世田谷支部幹事、㈱デジタルハーツホールディングス監査役(非常勤)。

超高齢社会を迎えた日本においては、スムーズな事業承継が社会全体の急務となっている。先代オーナーと後継者の間で信頼関係にまつわる問題も生じるが、大きな障壁となるのが資金調達の課題だ。今回は、事業承継に関する融資の方法に焦点をあててみたい。

目次

  1. 事業承継に必要な4つの資金
    1. 1. 分散した株式を取得するための資金
    2. 2. 持株会社等が株式を取得するための資金
    3. 3. 相続等で株式を取得した後継者の納税資金
    4. 4. 後継者が信頼されないときの運転資金
  2. 事業承継における3つの資金調達方法
    1. 資金調達方法1.日本政策金融公庫の融資
    2. 資金調達方法2.信用保証協会による特別保証
    3. 資金調達方法3.民間金融機関からの融資
  3. 事業承継で融資を受ける人物の条件
  4. 事業承継の融資で知っておきたい3つの注意点
    1. 注意点1.融資を受ける際の費用
    2. 注意点2.融資を受けるまでの時間
    3. 注意点3.個人保証の必要性
  5. 事業承継では“創業”するという心構えが必要

事業承継に必要な4つの資金

後継者が事業承継を決意しても、資金がなければ超えられない“壁”が現実に存在している。事業承継で必要な資金を4つ確認してみたい。

事業承継で必要な資金は?融資の方法や条件、注意点などを解説!
(画像=THE OWNER編集部作成)

1. 分散した株式を取得するための資金

長年にわたり継続している会社の場合、取引先や遠縁の親族などさまざまな株主が存在していることがある。

株主が分散していると、株主総会を開催したいと思っても、会社法に従って厳格な手続きを行わなければならない。また、株主に付与される議決権をまとめないと重要な決議が可決できず、経営のかじ取りが難しくなってしまう。

そのため、後継者としては先代経営者の代までに株主が複数いるような場合、後継者個人がその株主から個別に株式を直接取得するための資金が必要となる。

また、後継者の資産管理会社が他の株主から株を集めるために資金を必要とするパターンもある。個人が個人として取得するのに対して、個人がプライベートカンパニーを利用して取得する形である。

2. 持株会社等が株式を取得するための資金

MBOをイメージするとわかりやすいかもしれないが、後継者である経営者が中心となって持株会社等で株式を取得するための資金である。

沖縄にある老舗ビールメーカーでも同様のスキームがとられ、その際に株式取得資金として巨額の資金がファンドなどから注入されて承継が進んだ。実例でもたびたび見られるパターンである。

3. 相続等で株式を取得した後継者の納税資金

家族経営の会社であれば、先代の相続財産に会社の株式が含まれることがある。そのため、株式を相続しなければ事業承継が始まらない。しかし、相続税を納めるだけの手元資金がないと、後継者の納税資金を準備する必要がある

ほかにも相続人がいれば遺言等に従って遺産分割を行う。しかし、ほかの相続人との遺産分割上で株式の財産価値が高くなっている場合、後継者が現預金などを十分に相続できない場合も発生してしまう。

4. 後継者が信頼されないときの運転資金

先代のころから融資を受けていた金融機関であっても、事業承継にともない融資条件が不利になることがある。後継者の信頼が十分に得られないと、運転資金が急遽必要になるケースもある。直接株式を取得するための資金ではないが、事業承継にともなって間接的に発生する資金ともいえよう。

事業承継における3つの資金調達方法

事業承継で利用可能な資金調達方法を3つご紹介しよう。

資金調達方法1.日本政策金融公庫の融資

日本政策金融公庫は、国の出資を受けて設立された金融機関である。「民間金融機関の補完を旨としつつ、社会のニーズに対応して、種々の手法により、政策金融を機動的に実施する」ことを基本理念としている。

日本政策金融公庫では、事業承継に関して特別な融資支援「事業承継・集約・活性化支援資金」が用意されている。

事業承継で必要な資金は?融資の方法や条件、注意点などを解説!

資金調達方法2.信用保証協会による特別保証

事業承継では、経営者交代により先代経営者から保証を切り替えるのが通常である。新規融資もそうだが、通常は個人の保証が必要となる。信用保証協会では、事業承継時に経営者保証を不要とする事業承継特別保証制度を準備している。

事業承継で必要な資金は?融資の方法や条件、注意点などを解説!

資金調達方法3.民間金融機関からの融資

都市銀行や地銀、信用金庫、信用組合など、各金融機関では事業承継のために融資をしている。まずは一番身近な金融機関への相談を考える方も多いかもしれない。

しかし、M&A等を行う場合には買い手側の金融機関との取引に置き換わることもある。必ずしも身近な金融機関との取引にメリットがあるとは限らない。

そのため、最初は専門家に相談して全体のスキームを確認した上で、既存金融機関にアプローチするのがよいだろう。

事業承継で融資を受ける人物の条件

事業承継で融資を受けられる人物の条件について、企業融資を行っている融資担当者にヒアリングをしてみると、大変興味深い回答が得られた。

一般的に融資では、決算書などの財務データを参考に、融資した資金を回収できるかどうか評価される。しかし実際の評価では、基本的な考え方に加えて社長の人物像も重要だという。社長の人物像をもとに決算書の信頼性まで推測しているようだ。

会社の決算書が適切に作成されていることを知るには、社長とのコミュニケーションが判断材料となりえるからだろう。

創業者から事業を引き継ぐ後継者も、信頼できる人物像を意識して資金調達に臨んでほしい。

事業承継の融資で知っておきたい3つの注意点

事業承継の融資で注意すべきポイントを3つ解説していく。

注意点1.融資を受ける際の費用

融資を受けた場合、借入利率に応じた利息が発生することになり、会社の費用となる。また、保証協会の保証などを受けるならば、信用保証料が別途発生する。返済計画を立てるときは事前にシミュレーションしなければならない。

注意点2.融資を受けるまでの時間

融資の申請を行っても、実際の入金までには時間がかかる。早くても1か月程度かかるのが通常だ。融資を検討する場合には、資金が必要な時期から逆算した上で申請を出す。

注意点3.個人保証の必要性

個人保証は、いざというときの金融機関側の切り札である。融資を受ける側にとっては、財産の担保と同じように個人の財産に影響を及ぼす

そのため、先代経営者で必要としていた事業資金の個人保証と同様に、個人保証の必要性を後継者も把握しておかなければならない。

後継者が株式取得等のために融資を新規で受ける場合も、個人保証の必要性を確認する。

事業承継では“創業”するという心構えが必要

以上、事業承継における融資の方法や注意点などをお伝えした。融資では人物像まで重視されていることを知り、身が引き締まった方もいたのではないだろうか。事業を承継する後継者は、単なる後継ぎという感覚ではなく、新たに創業するという心構えが必要不可欠だといえよう。

文・風間啓哉(公認会計士・税理士)

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