「インターネット時代は感性の時代。」
そう語るのは、GMOインターネットグループの代表取締役会長兼社長の熊谷正寿氏。イギリスを代表する現代美術家ジュリアン・オピーの世界的コレクターであり、アートへの造詣が深いことでも知られています。
今回はそんな熊谷氏に、アートビギナーや、アート思考を養いたいビジネスパーソンへのヒントとなるような、アートの魅力、感性の磨き方、ビジネスの関係性についてお話を聞きました。
※オンライン取材とさせていただき、写真はGMO社から提供頂きました。
写真提供:GMOインターネット
ソーシャルの時代にこそ、アートを重要視する経営が活きる。
アートとビジネスの関係性
――ビジネスにおける思考法として、“アート思考”というキーワードが注目を集めています。ビジネスとアートの親和性を感じるビジネスパーソンも多いようですが、熊谷さんはビジネスにアートがどのように活きると思われますか?
“アート思考”というのは、何もないところから生み出す、想像するというマインドの話ですね。それが新規事業などに生かせるよね、ということがあると思います。
まず、私たちが作ってきたインターネットですがインターネットは産業革命で世の中を変えつつある。僕はインターネットの時代は感性の時代だと考えています。それは、GMOインターネットグループの社是・社訓にあたる『スピリットベンチャー宣言』にも表れています。例えば、こんな項目です。
インターネットの時代は共感の時代。変化し続け共感される人格・社格に成長しよう。
共感の方程式は、論理×感情。ナンバーワン商品に加え、ナンバーワンクリエイティブが大切。
ナンバーワンのクリエイティブセンス、そしてナンバーワンのアートセンスが重要だとグループ全体に共有しているんです。
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ほかにも、「すべてを最高にカッコよく!美しく!気持ちよく!」という項目もありますが、これは、インターネットの時代ならではの経営ノウハウなのではないかと思っています。キーワードとしてひとことで言えば「アート」。ビジネスにアートというものがすごく関係している時代になっていると思うので、それを重要視している経営、そして、美しいモノをよしとする経営をしていないと、ソーシャルの時代には耐えられないと思います。
――「アートを重要視する」という経営方針は、オフィスをギャラリーとしていることにも通じているのでしょうか?
そうです。セルリアンタワーにあるオフィスの応接スペースをギャラリーにしているのは、ビジネスとアートの関係性を重要視しているからです。インターネット時代は共感と美しさが大事だから、アートが必要で、オフィスがギャラリーになっているという一貫した考えがあるんです。
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――特にグローバルなシーンにおいてアートは教養のひとつとよく言われますが、社交の場においてそれを実感したことはありますか?
ありますね。ビジネス上の社交の場においては政治や宗教の話はタブーとされているので、アートやワインといった趣味の話をした方がいいんですよ。そういう意味でもアートが役立っている、武器になる、と感じたことがあります。
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感性を磨き、個性が現れる。アートとの向き合い方
――熊谷さんはジュリアン・オピーの作品を多くお持ちですが、好きな作家や作品とはどのように出会うのでしょうか。
私はアートをはじめとして建築物、家具、デザインされた日用品など“美しいもの”と接する時間を意識的にとるようにしています。美しいものに囲まれ、その調和の中にいたい。
例えば、旅行先では地元の美術館に寄ったり、若い頃だと雑誌を眺めたり。そうやって自分のセンスを磨いてきました。アートの美しい物=値段が高いとも限りません。
大切なのは日頃から自分が美しいと思うものに意識的に触れ、感性を磨くこと。そのうちに、本能的に自分が「いい」と思う作品に出会えることがあります。私にとってジュリアンオピーもそのひとつです。
【注】ジュリアン・オピーとは
イギリスを代表する現代アーティスト。最小限の点と線で構成されたポートレート、風景等を、絵画、彫刻、アニメーションをはじめとする様々なメディアで展開。詳細はコチラより。
――普段意識をしているからこそ自身の”感性”として養われ、直観的に好きな作品とも出会えるということですね…。魅かれる作品の共通点やコレクション全体に通じるテーマはありますか?
集まった作品は結果としてシンプルなものが多いですね。直線よりも曲線の作品が多いのも特徴です。
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――コレクションを継続される上で課題などはありますか?
原則としてはスペースありきで、「ここに欲しい」と思ったら購入していますが、アートの情報が集まってくる分、購入の機会も増えるので結果として多くの作品を購入し飾るスペースがなくなってしまっているものもありますね。
――そうした作品を含めて、コレクションの管理はどのようにされていますか?
購入した作品の「修復」をすることはあります。例えば、過去に購入したアンディ・ウォーホルの作品は経年劣化による傷みがどうしても出てしまったので、日本で最も有名な修復家の方に修復を依頼しました。酸化したり波打ったりしていたのが、見違えるほど美しくなって戻ってきて。もちろんお金もすごく掛かるので、その価値があるアートなのかは見極めをします。あとは、購入時から額縁を変えるなどはしていますね。
アートの資産性と、アートマーケットにおけるANDARTの可能性
――一般論としてアートの魅力の一つに資産性が挙げられます。それを実感されたことはありますか?
私自身は自分や周りの人が楽しむ、安らぐ、刺激を求めるために作品を購入していますので、投資対象としてアートを購入したことはないですが、15年前に数百万円で買った作品がここ最近で数千万円になっている、ということはありました。そういう意味では、アートの資産性はすごいあるなと思いましたね。
人の心を豊かにするだけでなく、文化、歴史としても重要な役割を果たすアートにはやはり魅力がありますから、良い作品はコレクターの方であったり美術館によって次々とコレクションされ、結果的に価値が上がるということがあります。そしてその資産価値が上がっていく本質のひとつに、作者が亡くなってしまった場合、作品の数が減る一方で需要が供給を上回るからということがあると思います。
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――最後に、熊谷氏から見るANDARTの印象を教えてください。
2つあります。ひとつはANDARTのキャッチコピー「1万円で一級作品の”オーナー”に。」が表すとおりで、個人ではなかなか手の届かない作品を皆で購入できるようにしている点です。これまでになかったアートの共同保有をインターネットを通じて可能にしていることが、革新的で素晴らしいと思っています。
もう1つは、アートのマーケットにフェアな流動性を与える可能性を秘めていることです。アートは株などの金融商品と比べて非常に流動性が低い。情報収集も難しいし、売ろうと思っても瞬間的に売却することは不可能でした。しかしANDARTは作品自体は長期保有しながら、オーナー権による小口化で個人の流動性を今後もたらしてくれるかもしれません。
インターネットでしかできない、売り手にも買い手にも意義のあることを体現できるサービスだと考えています。社会的意義があると思うので、応援しています。
――お忙しい中、お話をお聞かせいただきありがとうございました!
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