アート市場の情報を提供するArtmarket.comが、2021年上半期の世界のオークション市場で落札総額の高かったトップ10のアーティストを発表した。注目のANDART取扱いアーティストも多数ランクイン。各アーティストの簡単な解説とともに2021年上半期を振り返る。取引額の計算は、1USD=110.43円(8月12日時点)で計算。

目次

  1. 1位. パブロ・ピカソ
  2. 2位. ジャン=ミシェル・バスキア
  3. 3位. アンディ・ウォーホル
  4. 4位. クロード・モネ
  5. 5位. バンクシー
  6. 6位. ザオ・ウーキー
  7. 7位. ゲルハルト・リヒター
  8. 8位.  サンドロ・ボッティチェッリ
  9. 9位. 奈良美智
  10. 10位.  張大千(ちょうたいせん)
  11. まとめ

1位. パブロ・ピカソ

取引額:3億5,216万ドル(約388億8,949万円)

20世紀最大の画家と評されるパブロ・ピカソ(1881年-1973年)が堂々のトップ。ピカソは生涯で約15万点もの数の作品を制作したことでギネスブックに登録されている。しかし、作品数が多いと価値が下がってしまうことがあり、「数の多さ=取引額の高さ」には必ずしもならないのがアート市場の流動的なところ。それでもピカソがトップにいるのは、新しい表現方法「キュビズム」を創造したり、作風がいくつもあったりと、誰でも真似できない唯一性が人々を魅了し続けているからだろう。

2位. ジャン=ミシェル・バスキア

取引額:約3億353万ドル(約335億1,913万円)

ジャン=ミシェル・バスキアは、1960年アメリカ生まれ、20世紀美術の最も重要な巨匠の1人とされるアーティスト。1980年、ニューヨークでのグループ展参加をきっかけにアート界の注目を集める。わずか10年の活動期間に3,000点を超すドローイングと1,000点以上の絵画作品を残したが、急性薬物中毒により、27歳という若さでこの世を去った。

香港のオークションでは、バスキアの3作品だけで3,500万ドル以上を売り上げ、アジアでの人気の高まりを見せている。2021年上半期の世界のアートオークション市場の4.3%をバスキアが占める結果となった。

3位. アンディ・ウォーホル

取引額:約1億4,998万ドル(約165億6,228万円)

アンディ・ウォーホル(1928年-1987年)は、ポップアートを代表するアメリカ人アーティスト。大衆文化や大量生産・消費をテーマにシルクスクリーン技法を用いて、企業のプロダクトやセレブリティをモチーフにした作品を量産。絵画だけでなく、写真家・映画監督としても幅広く制作活動をしていた。オークションでは常に安定した人気を誇り、最近ではNFT作品が高額で落札されるなど、今もなお注目を集め続ける美術史に残る重要人物だ。

4位. クロード・モネ

取引額:約1億3,163万ドル(約145億3,658万円)

クロード・モネ(1840年-1926年)は、印象派を代表するフランスの画家。代表作《印象・日の出》(1872年)は印象派の名前の由来になった。モネの代名詞である「睡蓮」シリーズは、250点以上制作されている。数多くの風景画を残してきたモネの中でも、特に日本人に馴染み深いのが名作《日本橋と睡蓮》だろう。ストリートアーティスト・バンクシーにもオマージュされた作品である。現代アートが近年のアート市場のシェアを大きく占めるなか、唯一19世紀美術のアーティストでトップ10にランクインした。

《日本橋と睡蓮》(1899年)
(画像=《日本橋と睡蓮》(1899年))

画像引用:https://www.posterazzi.com/

5位. バンクシー

取引額:約1億2,332万ドル(約136億1,892万円)

匿名ストリートアーティスト・バンクシーは、政治的で皮肉なメッセージが込められた作品と神出鬼没で正体不明な人物像で人気を呼美、作品が発見されるたびにニュースに取り上げられている。

近年のバンクシーの市場価格は高騰は目を見張るものがある。2016年の売上総額300万ドルから、2020年には約22倍の6,700万ドルに達した。そして2021年上半期の時点で約1億2,332万ドルと、猛烈な勢いで売上高を上げている。このトップ10で分かるのは、バンクシーが現存するアーティストの中で最も成功し、一番稼いでいるアーティストだということ。まだ47歳(噂なので本当のところは分からないが)のバンクシーは、もしかしたら現存のうちにピカソを超えるアーティストへと成長するかもしれない。

6位. ザオ・ウーキー

取引額:約1億1,145万ドル(約126億4,605万円)

《1985年6月-10月》(1985年)
(画像=《1985年6月-10月》(1985年))

画像引用:https://ichigoichie.exblog.jp/

ザオ・ウーキー(1921年-2013年)は、中国生まれのフランスの画家。西洋モダニズムと中国の伝統的な山水画の技法を組み合わせて、大型作品を中心に抽象画を制作する。2018年、サザビーズ(香港)で《1985年6月-10月》が6,500万ドル(約73億9,500万円)で落札され、当時のアジア人アーティストによる油彩画の最高額、香港で落札された絵画の最高額の記録を更新。香港のオークション市場を牽引するアーティストである。

7位. ゲルハルト・リヒター

取引額:9,792万ドル(約108億1,315万円)

ゲルハルト・リヒターは、1932年ドイツ生まれの「ドイツ最高峰の画家」と称されるアーティスト。制作の裏側を追ったドキュメンタリー『ゲルハルト・リヒター』やリヒターの半生をモデルした映画『ある画家の数奇な運命』が制作されたことからも、その人気ぶりが窺える。リヒターの代表作「アブストラクト・ペインティング」のひとつである《Abstraktes Bild (649-2)》(1987年)を2020年10月、サザビーズ(香港)で箱根のポーラ美術館が約30億円で落札したことで話題を呼んだ。

《Abstraktes Bild (649-2)》(1987年)
(画像=《Abstraktes Bild (649-2)》(1987年))

画像引用:https://shae-bear.com/

8位.  サンドロ・ボッティチェッリ

取引額:約9,420万ドル (約104億302万円)

イタリア生まれのサンドロ・ボッティチェッリ(1445年-1510年)は、初期ルネサンスで最も業績を残したフィレンツェ派の代表的画家。《ビーナスの誕生》(1483年)は誰もが知る名画である。2021年1月のサザビーズ(ニューヨーク)で《ラウンドエルを持つ青年の肖像》が約96億円で落札され、ボッティチェッリのオークション最高落札額となり、今上半期の売り上げを牽引する作品となった。

《ラウンドエルを持つ青年の肖像》(1480年)
(画像=《ラウンドエルを持つ青年の肖像》(1480年))

画像引用:https://daily.afisha.ru/

9位. 奈良美智

取引額:約8,593万ドル (約94億8,989万円)

1959年、青森県生まれの日本の現代アートを代表するアーティスト、奈良美智。挑戦的な眼差しの少女や人物をモチーフにした絵画やドローイング、彫刻などが世界的に人気。数多くの作品が世界中の美術館に所蔵されている。栃木県・那須高原には私設の美術館「N’s YARD」がある。海外のアーティストに比べて、作品に触れる機会を多く持てるアーティストだ。2019年にはサザビーズ(香港)で代表作《ナイフ・ビハインド・バック》がアーティスト自身最高額の2,490万ドルで落札された。

10位.  張大千(ちょうたいせん)

取引額:約8,229万ドル (約90億8,771万円)

張大千(1899年-1983年)は近代中国の巨匠と呼ばれる書画家。書道や詩など幅広い分野で活動していた一方で、贋作者としても知られており、アート界で議論を巻き起こしたことも。2021年5月に開催されたクリスティーズ(香港)のアジア芸術品オークションにて、水墨画《碧峰古寺》が、2億910万ドル落札され、オークションでの張大千の作品としては2番目の高値を記録した。

《碧峰古寺》
(画像=《碧峰古寺》)

画像引用:https://wishflowers.tumblr.com/

まとめ

早いもので2021年もあっという間に上半期を終え、世界のオークション市場トップ10のアーティストが出揃った。ピカソのような巨匠中の巨匠から、ゲルハルト・リヒターや奈良美智など多数の現存するアーティストも名を連ねた。その中でもやはり一番の注目は、怒涛の追随を見せるバンクシーだろう。3位のアンディ・ウォーホル、4位のクロード・モネと見ても、金額的にはそこまでの大差はない。もしかしたら、この下半期でトップ3に躍り出ることがあるかも?引き続き、変化するアート市場全体の動向を追っていきたい。

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