報酬比例部分とは?計算に必要な基礎用語や計算方法について解説
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中川 崇
中川 崇(なかがわ・たかし)
公認会計士・税理士。田園調布坂上事務所代表。広島県出身。大学院博士前期課程修了後、ソフトウェア開発会社入社。退職後、公認会計士試験を受験して2006年合格。2010年公認会計士登録、2016年税理士登録。監査法人2社、金融機関などを経て2018年4月大田区に会計事務所である田園調布坂上事務所を設立。現在、クラウド会計に強みを持つ会計事務所として、ITを駆使した会計を武器に、東京都内を中心に活動を行っている。

将来の生活で重要な役目を果たす年金の算出にあたって、「報酬比例部分」の理解が必要になる。しかし、報酬比例部分の計算式は複雑であり、見かけるだけで嫌になる方もいるのではないだろうか。今回は年金の計算で避けられない報酬比例部分についてわかりやすく説明する。

目次

  1. 報酬比例部分の計算に関係する4つの基礎用語
    1. 基礎用語1.標準報酬月額
    2. 基礎用語2.標準賞与額
    3. 基礎用語3.平均標準報酬月額
    4. 基礎用語4.平均標準報酬額
  2. 老齢厚生年金の計算に必要な報酬比例部分
    1. 報酬比例部分の計算方法
  3. 遺族厚生年金の計算に必要な報酬比例部分
    1. 報酬比例部分の計算方法
  4. そのほかの年金でも報酬比例部分が計算に用いられる
  5. 報酬比例部分を理解して年金を計算!

報酬比例部分の計算に関係する4つの基礎用語

はじめに、報酬比例部分を計算するときに知っておきたい用語から説明する。

基礎用語1.標準報酬月額

標準報酬月額とは、月々給与などの名目で受け取る報酬をその金額に応じて32の等級に分け、その属する等級に該当する金額をいう。

この報酬には、給与でいえば基本給に加えて、各種手当も含める。たとえば、所得税の計算上では除外される通勤手当も、標準報酬月額の計算上では加えられる。

なお、臨時的に支払われる金額や、3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賞与は含まれない。

基礎用語2.標準賞与額

標準賞与額は、その月に支給された賞与金額について、1,000円未満を切り捨てた金額だ。

ここでいう賞与とは、名称を問わず労働の対価として受け取る金銭のうち、3ヶ月を超える期間ごとに受け取る金銭である。なお、標準賞与額には上限があり、150万円である。

基礎用語3.平均標準報酬月額

平均標準報酬月額とは、被保険者期間(平成15年3月まで)の標準報酬月額の総額を、被保険者期間(平成15年3月まで)の月数で除して求められる金額をさす。

平均標準報酬月額を計算する際は、各月の標準報酬月額について現在の価値に換算する。

そのため、当時の標準報酬月額に受給者の生年月日や受け取った時期に応じた再評価率をかけた金額を使って計算する。

基礎用語4.平均標準報酬額

平均標準報酬額とは、被保険者期間(平成15年4月以後)の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、被保険者期間(平成15年4月以後)の月数で除して求められる金額だ。

平成15年の4月以降は、賞与にも社会保険料がかかるようになったので、平均標準報酬額では標準賞与額を合算している。

平均標準報酬額を計算する際は、標準報酬月額と同様に再評価率をかけて求めた金額を使う。

老齢厚生年金の計算に必要な報酬比例部分

現在の老齢厚生年金は、以下の算式によって支給額が決められている。

65歳未満の場合:年金額=定額部分+報酬比例部分+加給年金額

65歳以上の場合:年金額=報酬比例年金額+経過的加算+加給年金額

報酬比例部分と報酬比例年金額は若干表記が異なるが、金額の計算は同じである。

報酬比例部分の計算方法

報酬比例部分は年金制度の変更によって、その前後で別々に計算しなければならない。昭和16年4月2日以降に生まれた方のケースにおいて、報酬比例部分の計算プロセスは以下の通りである。

①「平均標準報酬月額×生年月日に応じた率(9.5/1,000~7.125/1,000)×被保険者期間(平成15年3月まで)の月数」を計算する

②「平均標準報酬額×生年月日に応じた率(7.31/1,000~5.481/1,000)×被保険者期間(平成15年4月以降)の月数」を計算する

➂ ①と②を合計する

④「平均標準報酬月額×生年月日に応じた率(10/1,000~7.5/1,000)×被保険者期間(平成15年3月まで)の月数」を計算する

⑤「平均標準報酬額×生年月日に応じた率(7.692/1,000~5.769/1,000)×被保険者期間(平成15年4月以降)の月数」を計算する

⑥ ④と⑤を合計して×1.001(※)をかける
※誕生日が昭和13年4月2日以降であれば0.999

⑦ ➂が⑥を下回れば⑥の算出額が報酬比例部分の年金額になる

参考:老齢厚生年金 昭和16年4月2日以後に生まれた方(日本年金機構)

遺族厚生年金の計算に必要な報酬比例部分

遺族厚生年金とは、厚生年金保険の被保険者等であった人が亡くなられた際、受給要件を満たしている場合、亡くなられた方によって生計を維持されていた遺族が受け取れる年金である。

遺族厚生年金の支給額は、以下の通り計算できる。

支給額=報酬比例部分の年金額+中高齢寡婦加算+経過的寡婦加算

報酬比例部分の計算方法

報酬比例部分の年金額の計算方法は以下の通りだ。

①「平均標準報酬月額×7.125/1,000×被保険者期間(平成15年3月まで)の月数」を計算する

②「平均標準報酬額×5.481/1,000×被保険者期間(平成15年4月以降)の月数」を計算する

➂ ①と②の合計に3/4をかける

④「平均標準報酬月額×7.5/1,000×被保険者期間(平成15年3月まで)の月数」を計算する

⑤「平均標準報酬額×5.769/1,000×被保険者期間(平成15年4月以降)の月数」を計算する

⑥ ④と⑤の合計に1.001(※)と3/4をかける
※誕生日が昭和13年4月2日以降であれば0.999

⑦ ➂が⑥を下回れば⑥の算出額が報酬比例部分の年金額になる

ただし支給要件によっては、被保険者期間が300月(25年)未満の場合、300月とみなして計算する。

参考:遺族厚生年金 受給要件・支給開始時期・計算方法(日本年金機構)

そのほかの年金でも報酬比例部分が計算に用いられる

ここまで、老齢厚生年金や遺族厚生年金を例として、報酬比例部分の計算方法について解説した。ほかの年金でも報酬比例部分が支給額のベースとなっている。

たとえば、障害厚生年金が挙げられる。障害厚生年金とは、厚生年金に加入している期間中に障害を負った際に受けられる年金である。

障害厚生年金の支給額は、報酬比例部分を用いて以下の通り計算される。

報酬比例部分とは?計算に必要な基礎用語や計算方法について解説

報酬比例の年金額の計算方法は、老齢厚生年金の報酬比例部分と同様である。

ただし、被保険者であった期間について老齢厚生年金と違う点がある。まず、被保険者期間が、300月(25年)未満の場合、300月とみなして計算する。また、障害認定日の属する月後の被保険者期間は年金額計算の基礎とはならない

参考:遺族厚生年金 受給要件・支給開始時期・計算方法(日本年金機構)

報酬比例部分を理解して年金を計算!

働き盛りの人が社会保険で気になるのは、年金が将来どれくらいもらえるかだろう。今のうちに受給できる金額を計算して将来に備えておけば、金銭面で困ることは少なくなるのではないか。そのためにも、報酬比例部分の計算部分について少しでも把握しておきたい。

文・中川崇(公認会計士・税理士)

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