「大阪王将」と中古車買取・販売の「ラビット」を主軸に、FC店を中心にした店舗運営を行う映クラ(広島県福山市)。祖業のビデオレンタル店からの業態転換を成功させ、自社ブランドも含めた店舗数は40店舗を超える。創業者である父からバトンを引き継ぎ、最前線で会社を切り盛りする山西健三社長に話を聞いた。

山西健三社長
(画像=山西健三社長)

小商圏で多店舗展開可能なブランドに加盟

―広島県と岡山県で、飲食店や 中古車販売店などのFC4業態31店舗を含め、7業態43店舗を出店されています。FCによる店舗展開を行う前は、どんな事業をされていたのでしょうか。

山西 会社の設立は1979年、最初はビデオレンタル店としてスタートしました。一番多いときで20店舗ありましたが、現在はそちらからは完全に撤退し、飲食や中古車買取・販売、トレーディングカード販売などの事業に注力しています。

―20店舗あったビデオレンタル業から撤退し、FCを中心とした店舗の運営にシフトしたのはなぜでしょうか。

山西 当時、会社の舵取りをしていた父の話では、ビデオレンタル業の先行きに相当な危機感を抱いていたようです。何も手を打たずにいたら、いずれ大手チェーンに淘汰されてしまうかもしれないと考えたのでしょう。今のようなネット全盛の時代が来ることまで予見していたかどうかは分かりませんが、結果的に英断だったと思います。

―大手のビデオレンタルチェーンに加盟するという選択肢もあったのではないかと思います。

山西 実際に検討はしたようです。しかし、それよりも他の業種の方が将来性があると考え、加盟するまでには至りませんでした。

―最初に加盟されたのは居酒屋チェーンの「八剣伝」です。

山西 飲食のフランチャイズへの加盟を決断したのは、安定した需要があり、しかも相対的に収益性が高い業態が多かったからです。実際に「八剣伝」のFC店を見て、「これならやれる」と感じ、加盟を決めたと聞いています。

―以後、業種を広げながら、FC店を増やしてこられました。ブランド選びの基準について教えて下さい。

山西 本部の理念や収益性といった基本的な部分も大事ですが、特に重視しているのは商圏の大きさです。当社の場合、商圏の大きいものよりも、小さいものを選ぶようにしています。

―なぜでしょうか。

山西 多店舗展開するためです。常に新店を出し続けることで、社員に目標を与えてあげることができますし、それによって人の定着率も上がります。人が育っても、それに見合ったポジションがないと分かれば、人は離れていってしまいますからね。だから我々は、FCに加盟する段階で10店ないし20店くらいまでの出店計画を立てます。以前は、最初に一気に2、3店舗を出店したこともありました。逆に、商圏が大きい業態は店舗を増やしづらいため、基本的にはやらないようにしています。

―多彩なブランドを展開されています。

山西 トップダウンで決めるのではなく、できるだけ社員の意見を聞くようにしています。例えば、 ライセンスの形になりますが、現在5店舗あるトレーディングカー ドショップ「CARDBOX(カードボックス)」は、以前やっていたビデオレンタル店のスタッフの提案を聞いて始めたものです。いきなり閉店するのではなく、規模を徐々に縮小する一方で別のものにチャレンジしてみようということで、店舗の一角を使って始めてみたらうまくいきました。

―外食事業の「大阪王将」とともに、中古車買取・販売の「ラビット」も主力ブランドに据えておられます。

山西 実は「ラビット」以前に、別の中古車チェーンに加盟していたことがあります。しかし、詳しくは述べませんが、とある事情で本部に対する不信感が募り退会しました。本部選びの失敗は、これが唯一です。

▲中古買取・販売の「ラビット」店舗外観
(画像=▲中古買取・販売の「ラビット」店舗外観)

既存ブランドの拡大を目指し、人材育成に注力

―FCに加盟する一方、自社ブランドのベーカリーショップや焼肉店も出店されています。

山西 ベーカリーショップの「石窯パン工房」については、知り合いのオーナーから「面白いからやってみたらどうか」とアドバイスをもらって始めたものです。特に加盟したいと思うFCがなかったため、自分達で勉強して立ち上げました。焼肉店はもともとFCでやっていたものがあったのですが、BSEやユッケの食中毒事件で売上が減ったタイミングで、自社ブランドに切り替えました。

―現在、自社ブランドを含め7業態を運営されています。過去には「ファミリーマート」なども運営されていたそうですね。

山西 うどんやラーメンをやったこともありました。事業ごと売却したものもあれば、単純に売上が悪くてやめたものもあります。

―現在、興味を持っているブランドはありますか。

山西 我々の店舗は郊外型のものばかりなので、商業施設に出店できるブランドに興味があります。先程も申し上げたように、やる以上は店舗を増やし、長く続けたいので、流行りものには興味がありません。

―今後の成長戦略についてはどのように考えているのでしょうか。

山西 まずは今ある既存事業をきちんと育てることが最優先です。主力業態である「大阪王将」は20店舗、「ラビット」は10店舗という目標を掲げて加盟したので、早い段階でこれを達成したいと思っています。その上で、新規業態の情報収集を継続的に行っていきます。業績的には、何とか2年以内にコロナ前の状況に戻したいですね。いずれにせよ、何事も人材ありきの話ですので、とにかく育成に力を入れていくことが重要だと考えています。

▲主力の一つ「大阪王将」は出店目標20店
(画像=▲主力の一つ「大阪王将」は出店目標20店)