九州エリアをはじめ、首都圏や関西、中国地方などでさまざまな業態のFC店舗を運営するJR九州ファーストフーズ(福岡市博多区)。積極的な出店戦略のもと、着実に店舗数を増やし続け、現在、その数は11事業177店舗に及ぶ。コロナ禍で外食業界が苦戦を強いられる中、200店舗体制の実現に向けて出店にも意欲的だ。永田史朗社長に今後の事業戦略などについて話を聞いた。
シアトルズベストコーヒーは国内最大店舗を出店
―「シアトルズベストコーヒー」 や「ミスタードーナツ」「ケンタッキーフライドチキン」など、さまざまな外食業態のFC店を運営されています。
永田 当社はJR九州(九州旅客鉄道)のグループ会社として、平成元年に設立されました。ファストフード業態のフランチャイズ店舗運営に特化しているのが特徴で、現在、11事業177店舗を展開しています。傘下のブランドの中で唯一「スターバックス」だけは、日本でFC募集を行っていないため、ライセンス契約という形になっています。
―歴史あるブランドから、最近のものまで、さまざまなブランドに加盟されています。最初はどのFCからスタートしたのでしょうか。
永田 「ミスタードーナツ」と「ケンタッキーフライドチキン」をほぼ同時期に始めました。もっとも新しいのは「ピザハット」で、昨年の9月に1号店をオープンしました。
―11業態の中でもっとも店舗数が多い「シアトルズベストコーヒー」は、国内店舗のほとんどを御社で運営されていると伺いました。
永田 「シアトルズベストコーヒー」は米国ワシントン州発祥のカフェチェーンで、1999年に日本に初上陸しました。我々は2002年に加盟し、現時点で九州をはじめ、中国、関西、首都圏で67店を出店しています。カフェは商品の原価率が低いため収益性が高く、さらに駅という流動性の高い場所に出店できる我々ならではの特性を生かしやすいため、積極的に出店を進めてきました。その結果、現在では関西にある一部の店舗を除き、国内店舗のほとんどを我々が運営するまでになりました。
―グループ企業を見渡すと、他にもFC店の運営をされている会社があります。各社の事業領域の棲み分けはどのようになっているのでしょうか。
永田 JR九州リテールは、「ファミリーマート」を主軸に、流通関係の店舗を運営しています。他に「キヨスク」の運営も行っています。JR九州フードサービスは、我々と同じ外食関連の事業を手掛ける会社ですが、FCよりも自社ブランド店舗の運営に力を入れています。業態についても、我々が扱わない居酒屋やレストランが多いです。
売上高は前年度から 800万円の増収
―コロナ禍で外食業界が大きなダメージを受ける中で、2020年度の売上高は103億4500万円と、前年度から約800万円増えました。
永田 最終的に何とか増収を達成することができましたが、プロセス的にはコロナの影響をかなり受けた1年でした。第四半期はイートイン店舗の休業により対前年比80%と厳しい状況で、中でも「シアトルズベストコーヒー」は店舗数が多いことが逆に仇となり、年間を通じて不調でした。挽回できたのは、「ケンタッキー」や「モスバーガー」「ミスタードーナツ」といったテイクアウトに強い業態が奮闘してくれたことに加え、「シナボン」で始めたネット通販の売れ行きが予想以上に好調だったためです。我々のグループに限らず、鉄道関連の会社はコロナ禍で人の移動が制限されたことで、どこも苦しい経営状況にありますが、何とか一定の成果を挙げることができたと考えています。
―事業の多角化により、うまくリスク分散できたという見方もできると思います。
永田 結果だけ見れば確かにそう見えるかもしれませんが、正直なところ、そこを強く意識して業態を増やしてきたわけではありません。むしろ、業容拡大という意識の方が強くありました。今でこそ、我々は首都圏や関西など、他のエリアにも積極的に進出していますが、もともとは、JR九州のグループ会社ということで、九州を主なマーケットとして考えていました。出店場所についても、最初は駅に軸足を置いていました。当然ながら、限られたエリアの中で店舗を増やしていこうとすると、業態が少なければすぐに頭打ちになってしまいます。とにかくより多くの店舗を出店できるようにと、ブランドの多様化を進めてきました。一方で、店舗が増えるに従い、出店エリアも少しずつ広げてきました。今回はそうした戦略が功を奏したという感じですね。
―首都圏、関西と、かなり手広く出店されています。JRグループ間で、出店エリアの制限というものはないのでしょうか。
永田 JR発足当初はそういうものもあったと思いますが、今は各JRグループ間でも、JR九州としても特にそういった制限はありません。実際、我々だけでなく、他のJR傘下の会社の中にも、エリアの枠を飛び越えて店舗を出しているところはたくさんあります。
―多業態を運営するメガフランチャイジーには、自社ブランドの店舗をもつところが多くあります。御社はなぜ、FC店舗の運営に特化しているのでしょうか。
永田 本部のノウハウを活用して迅速に出店を進めることができるからです。我々のような業種の会社は、成長のためにどんどん新しい店舗を出していかなければなりません。自社ブランドでやろうとすると、開発にどうしても時間やコストがかかりますから、短期間で店舗を増やすことが難しくなります。その点、FCであれば、本部のノウハウを活用して素早く、しかも計画的に出店していくことができます。
―さまざまな業態のブランドに加盟されています。ブランドを選ぶ際に、どんな点を重視されていますか。
永田 収益性や投資回収期間といった数字的な部分も見ますが、それよりも重視しているのは我々にない業態で、かつ成長性が見込めるかどうかという点です。逆に、多店舗展開できないブランドにはあまり興味がありません。
―過去にブランド選びで失敗された経験などはありますか。
永田 撤退したブランドはありません。30年以上にわたり積み上げてきた我々なりのノウハウや店舗運営力、コスト管理力というものがありますから、ブランドを選ぶ目には自信があります。
5年後、年商150億円、 200店舗が目標
―コロナ収束後の事業戦略について教えて下さい。
永田 今回のコロナ禍で、出店立地や販売手段、ブランドなどをもっと多様化していく必要があると 強く感じました。これまでは「シアトルズベストコーヒー」を中心に店舗を増やしてきたわけですが、今後は「かつや」や「ケンタッキー」といったテイクアウトにも対応できる業態を強化し、もっと全体のバランスを整えていきたいと思っています。販売手段についても、デリバリーや通販に力を入れていく方針です。
―業容拡大を進めていく上で、新たなブランドへの加盟は不可欠です。今後、加盟するとしたらどんなブランドでしょうか。
永田 今の段階で、具体的に「これに加盟する」という話はできませんが、あえて言うのであれば、先程と重複しますが、テイクアウト需要を取れるブランドに興味があります。国内のブランドはもちろん、我々には「シアトルズベストコーヒー」を通じて海外の情報も入ってくるので、国外のものも含めて検討していきたいと思っています。
―18期連続で増収増益と、ここまで順調に業績を伸ばしてこられました。店舗数を含めた目標を教えて下さい。
永田 今後5年で、年商150億円、店舗数200店舗を達成したいと考えています。店舗については、直近5年、毎年15〜20店舗出店してきているので、今後も状況を見ながら、最低でも10店舗ペースで増やしていく方針です。コロナがいつ収束するかは分かりませんが、計画通りいけば、いずれも問題なく達成できる数字だと思っています。