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8月21日から始まる「バンクシーって誰?」展も間近に控え、日本でもバンクシー人気が盛り上がりを見せている昨今。バンクシーの作品は路上に無断で描くストリートアートのほかに、キャンバスにペイントされた作品や、彼の代表的なモチーフをシルクスクリーンプリントなどで制作する「プリント作品」が存在する。通常エディションがたくさん存在するプリント作品は比較的安価で取引されることが多いが、バンクシーのプリント作品は近年アートマーケット内で価値が非常に高騰している。これは現存するアーティストの中では極めて珍しい。

そこにはバンクシーの世界的人気もさることながら、バンクシーの公式認証機関である「ペストコントロール」によるマーケット管理が鍵を握っているようだ。

バンクシーのプリント作品の平均価格が金を上回る結果に

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MyArtBrokerがバンクシーのプリント作品を、金、FTSE 100株、石油、ビットコイン、不動産などの他の従来の高収益資産と比較したところ、バンクシーのプリント作品の平均価格は2020年に初めて金を上回る結果となった。さらに、バンクシーの紙の作品の平均年間セールスポイントは2019年から2020年の間に178%増加し、調査の他のどの資産よりも高くなった。

バンクシーのプリント作品は、2011年以降、着実に価値が高まっている。過去2年間で、価格は2020年に平均60,000ポンド(83,120ドル)に急騰した。

通常、プリント作品はバンクシーの作品の中でも最も手に取りやすい分野であり、複数のエディションを刷ることで低価格を実現している。しかし、2000年代初頭にアーティストの版画を購入した多くのコレクターは、近年の驚異的な市場の成長を利用し、さらに作品の価格を高騰させている。

クリスティーズのスペシャリスト兼アソシエイトディレクターであるジェームズ・バスカービルによると、彼のクライアントは、2003年に署名入りのプリント作品を100ポンド(138ドル)で購入し、2020年9月のオークションで85,000ポンド(117,500ドル)のハンマープライスで作品を販売したという。その金額差はおよそ850倍だ。

なぜバンクシー作品の価格は高騰しているのか

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通常エディションが複数枚あるプリント作品は安価で取引されるが、なぜバンクシーのプリント作品はここまで高値で取引されるのだろうか。

バンクシーのプリント作品は、バンクシー公式の作品認証機関であるペストコントロールを通じてのみプライマリーで購入できる。バンクシーが自身のシルクスクリーン作品を発売していたオンラインギャラリーとも言える存在であったPOWこと「Pictures on Walls」が2017年12月《Sale Ends(V.2)》販売以降閉店してしまったことも、価値を高騰させている理由の一つだ。それにより、バンクシーのプリント作品は現代アーティストの中でプライマリーマーケットの供給が最も少なく、セカンダリーマーケットの需要が最も高くなっている。彼の作品の需要が急激に高まった背景には、認証機関による作品の徹底した管理によるものがあるだろう。

バンクシー作品をコレクションする際の留意点

バンクシーは10年以上にわたってオンラインで独自にプリント作品を販売してきたため、流通市場の作品の品質は大きく異なる可能性がある。 Artworks ConservationLtdの印刷メンテナンスのスペシャリストであるリチャード・ホークスによれば、バンクシーのプリント作品は、販売や発送の状態が悪いものが多く、それが作品の品質に影響しているという。

また、バンクシーのプリント作品の価値は品質の他に、いつどのように作成されたか、署名されているかどうかによっても異なる。バンクシー作品は同様の主題が複数制作されるため、コレクターは、署名やバンクシーの手書きの要素、珍しいカラーバリエーションなど、よりレアなものを求める傾向にある。

加えて、特にバンクシーの作品は偽造にも注意する必要がある。バンクシーの公式認証機関であるペストコントロールは、購入予定のコレクターに確認のため作品の完全なデータベースを提供したり、小額でプリントを承認したりもする。 さらに、現在オンライン上には何百ものバンクシーの画像のステンシル(同じ形を描くための型)があり、悪意のある人々はそれらを使用して偽物を作成し、高額で販売している。バンクシーの作品を購入する際は、他のアーティスト以上に真贋に注意する必要がありそうだ。

ペストコントロールによる市場管理

バンクシーの公式認証機関であるペストコントロールは、プライマリーで販売する新作に証明書を発行しないことにより、オークションへの出品をコントロールし、意図的にセカンダリーマーケットで流通するのを遅らせることがある。このことが、バンクシーのプリント作品の価値を長期的に保持する仕組みとなっている。また、バンクシーの新しい公式ホームウェアブランド「Gross Domestic Product」では、バンクシーの代表的なモチーフを扱った商品を販売しており、ここではバンクシーの作品を個人の娯楽の範囲内で使用することを奨励しつつ、コピーを「公式」として偽ったり、販売したりすることを違法とし法的措置を取り得ることを明示している。今年の頭にここで販売された商品もペストコントロールの証明の対象となったことで、オークションに出品されるようになった。

まとめ

バンクシー作品は現在急激に需要を高めているが、その独特な制作スタイルと匿名性から、市場において真贋、品質など様々な問題が生まれる。しかし、ペストコントロールを介し、マーケットを管理することで彼の作品価格や希少価値はコントロールされている点は、バンクシーの自身の作品に対する戦略として優れている点だろう。バンクシーの市場は今後もさらに飛躍することが予想されるが、バンクシーのコレクターは購入に際して戦略的な時期、真贋、ペストコントロールによる証明書など様々なことに留意して、慎重に動向を見守る必要があるだろう。

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出典:https://www.artsy.net/article/artsy-editorial-navigate-market-banksy-prints