コロナ禍で経営危機に直面する飲食店や小売店を救おうと、さまざまな企業が支援に乗り出している。全国で農業関連事業を展開するマイファーム(京都市下京区)もその一つだ。同社は2月、食材仕入れアプリ「ラクーザ」を活用して、店頭で野菜を販売するビジネス「軒先マルシェ」の加盟募集を開始した。今後の展望などについて、西辻一真社長に話を聞いた。
(※2021年6月号「注目のNEW FCビジネス」より)
―― 野菜販売ビジネス「軒先マルシェ」のフランチャイズ加盟募集をスタートされました。FCを立ち上げた狙いはどこにあるのでしょうか。
西辻 新型コロナウイルスが流行して以来、多くの飲食店や小売店が、時短要請や外出自粛の影響で経営が悪化して苦しんでいます。一方で、我々が農業関連の事業を通じてお取引している全国の農家や、当社運営の農業学校「アグリイノベーション大学校」の卒業生なども、外食関係の不振が長期化しているため、かなり厳しい状況にあります。実際、我々が提供している、売り手である生産者と、スーパーや八百屋、卸、飲食店などの買い手とを結び付けるインターネットサービス「ラクーザ」の月間取引額は、4000万円から400万円にまで落ち込んだままです。新たに立ち上げた「軒先マルシェ」は、この両者を支援するための仕組みで、飲食店や小売店は「ラクーザ」で農産物を仕入れて、それを店頭などで販売することで副収入を得ることができます。登録している農家の数は全国1200件以上あり、約200種類の野菜や果物などを取り扱っています。
―― 一般のスーパーなどと競合することにはならないのでしょうか。
西辻 その心配はいりません。というのも、「ラクーザ」で取り扱っているのは、一般のスーパーなどではあまり売られていない特色のある野菜や果物などが中心だからです。しかも、どの商品も基本的に卸値ですので、値段はスーパーよりも安い。店頭で売る際に利益をどのくらい上乗せるのかにもよりますが、価格面でもかなり優位性があると考えています。また、販売するだけでなく、自店で提供する料理に使ってもらっても構いません。珍しい食材を使ったメニューで集客するのも面白いかもしれません。
――さまざまな農産物を取り扱っていますが、どんな農産物がよく売れるのでしょうか。
西辻 最近、よく売れているのはパクチーです。一般で市販されているものとは比べ物にならないほど、香りや風味が良く、中にはまとめて大量に買われる方もいます。他に、シイタケやトマト、みかんなども非常によく売れます。
―― FCの加盟条件などを教えて下さい。
西辻 初期費用は、導入費として10万円、保証金として10 万円、合計 20万円です。保証金については、退会後に返金します。販促POPはオプションのため別途費用かかりますが、商品の陳列に必要なダンボール棚やテーブルクロスなどはすべて、基本パッケージとして追加料金なしで提供します。ロイヤリティ等は特に設けていません。
―― FC本部の立場からすると、ほとんど利益はないように見えます。
西辻 それでいいと思っています。このFCを立ち上げた目的は、あくまでもコロナ禍に苦しむ飲食店や小売店、それに我々の取引先であり、かれらに農産物を販売している農家を支援することにあります。これで儲けることは、まったく考えていません。
―― 仕入れた農産物の販売価格はどのように決めているのでしょうか。
西辻 それは販売者側で決めてもらっています。特色ある野菜ということで、高めの価格に設定して販売しても構いませんし、お得感を感じられる値段にしてもらっても構いません。ちなみに八百屋は7掛けが一般的です。どれだけ仕入れて販売するかは導入店の裁量次第です。
―― 一方で加盟者側から見ると、小額で手軽に始められる点が魅力的に思えます。
西辻 副業という位置付けである以上、ローリスク&ローリターンのビジネスモデルでないと、誰もやろうとは思わないのではないでしょうか。もちろん、小さなスペースから始めてみて、いずれ八百屋規模まで事業を拡大させるというのもできなくはないと思います。また手軽という点では、支払い方法もシンプルにしてあります。普通、この手のサービスは商品を仕入れるたび決済が必要だったり、仕入れ先が異なると請求書が違ったりしますが、「軒先マルシェ」は月末にすべてをまとめた請求書が1枚送られてくるだけです。
―― 実際に「軒先マルシェ」を導入した店舗の売上状況について教えて下さい。
西辻 あくまでも一例ですが、ある店舗ではひと月に14万9773円の売上がありました。利益率が3割だとすると、手残りは3万4563円となります。初期費用は2ヶ月から3ヶ月で相殺できたことになります。
―― FC開始から約1カ月、現在の加盟状況を教えて下さい。
西辻 すぐに30件ほどの問い合わせが入り、4店舗に導入していただきました。いずれも個人経営の飲食店です。他に具体的な名前は公表できませんが、大手チェーンとも導入の話が進んでいます。