─洗剤を使わずに洗濯物の汚れを落とす─ そんな今までの常識を覆したコインランドリーチェーンがあるのをご存知だろうか。2013年の1号店出店から7年が経過した昨年には、全国200店舗体制に向けてフランチャイズ展開も開始した。話題のチェーンを展開するウォッシュプラス(千葉県浦安市)の高梨 健太郎社長に話を聞いた。(※2021年6月号「注目のNEW FCビジネス」より)

高梨 健太郎社長(48)
(画像=高梨 健太郎社長(48))

―洗剤を使わない新しいコインラ ンドリー「wash+(ウォッシュ プラス)」が、各種メディアで話題になっています。一体どのような仕組みになっているのでしょうか。

高梨 油汚れや食べこぼし、あるいは手垢や皮脂といった衣類に付着する汚れのほとんどは、基本的に酸性です。したがって、アルカリ性で中和することができます。我々はここに目をつけ、洗剤の代わりに特殊なアルカリイオン水を使ったランドリーを考案しました。2013年に1号店を出店して以降、地道に関東近郊で出店を続けてきましたが、昨年、全国展開に向けてフランチャイズも始めました。現在は直営20店舗と、FCが6店舗あります。

―高梨社長の本業は、先代から続く不動産業だと伺いました。どういった経緯で、コインランドリー業に進出したのでしょうか。

高梨 きっかけは2011年の東日本大震災でした。会社のある浦安が液状化の被害を受けたてしまったため、しばらく不動産の仕事ができなくなってしまったのです。それまで、不動産屋の仕事は地球がある限り続けることができるものだと思い込んでいましたので、あれはかなりショックでした。とにかく不動産以外の事業もやらなければと思い、自分なりにいろいろと考えました。最初は、液状化の教訓を活かすために、地盤のデータベースを作ろうとして補助金の申請をしたのですが、2次審査で落ちてしまいました。それで次に着目したのがコインランドリーでした。

―高梨社長がコインランドリーを始めた時点で、すでにたくさんのチェーンが存在していたはずです。競合ひしめく市場に、なぜあえて参入しようと思ったのでしょうか。

高梨 実際にコインランドリーを何カ所か見に行ってみたのですが、利用者の目線で作られていないなと感じることが多々ありました。例えば洗剤の表記です。今の時代、食べ物一つとっても、原材料の表記は当たり前です。農作物は生産者の名前を書くケースもあります。ところがコインランドリーでは、どのメーカーの何という洗剤を使っているのかが表記されていません。これは非常におかしなことだと思いました。また、洗濯機内に放置された洗濯物を、次の方が勝手に取り出してしまうこともあります。出した側も出された側も嫌なはずなのに、運営者側はそれを放置しています。あと、郊外にある広めの店舗は、利用者がそれほどいないにもかかわらず、やたらたくさん機械が置いてあったりします。要は、需要はそっちのけで、ただ坪数を埋めるためだけに機械を置いているわけです。私が異業種の人間だったこともあるでしょうが、とにかくおかしな点がいろいろと目につきました。こうした点を改善して今までにない新しいランドリーを作れば、十分に需要はあると思いました。

―洗剤を使わずにアルカリ性の水で洗濯するランドリーという構想は、最初からあったものなのでしょうか。

高梨 最近は幼いうちにアトピーを発症する子どもが増えています。ちょうど私にも幼い子どもがいたので、ランドリー事業を始めるにあたり、アトピーの方の洗濯事情を勉強しました。粉石鹼は駄目なので何か別のものを使わなければならない、そう考えていた矢先、補助金の審査で訪れた会場に貼ってあった1枚のポスターを思い出しました。そこには「水で油は落ちる」と書いてあったのです。それがアルカリ性の水との出会いでした。

―つまり、油汚れを落とす水はすでにあったということでしょうか。

高梨 ポスターのものは、衣料用ではありませんでしたが、その会社を訪問して確認したところ、理論上は洗濯に利用することもできるということでした。実際、アルカリイオン水をリットルもらって、ランドリーメーカーの山本製作所に持ち込んで試してみたところ、うまくいきました。ただ、そのまま洗濯用水として使うのには多少問題があったため、うち独自の改良を加えています。

▲全国200店舗を目指しFC展開をスタート
(画像=▲全国200店舗を目指しFC展開をスタート)

―「wash+」は、スマートランドリーという特徴も打ち出しています。

高梨 専用のアプリを使って、機器の制御ができるようになっています。ドアロックやガラスを曇らせる機能のオンオフなどはもちろん、支払いもアプリ上でクレジット決済できるようになっています。これは、我々が山本製作所と共同で開発しています。当然、さまざまな部分で特許を取得しています。

―1号店の出店から昨年まで、直営展開に注力していました。FCに乗り出したのはなぜでしょうか。

高梨 もともとFCをやるつもりはなかったのですが、2年ほど前に出張で広島を訪れた際に、ホテルのバーでたまたま隣に居合わせた方から、お子さんが重度のアトピーだというお話を聞いて、考えが変わりました。アトピーで困っている方は全国にいるのに、直営でちまちまやっていたのでは、そうしたみなさんを救うことはできない。でもFCなら、一気に全国に出店することができる。そう考えて、FCをやることにしたのです。

―開業にかかる初期費用等について教えて下さい。

高梨 基本的なモデルは2850万円としています。内訳は、加盟金が100万円、出店準備金が150万円、機械代は、15坪の場合で洗濯乾燥機6台と2段式乾燥機3台で1200万円、あとは設置・輸送代が40万円、設計・監理費が70万円となっています。両替機などはオプションで付けられるようになっています。また、2店舗目以降は、加盟金はかかりません。ロイヤリティは売上の5%としています。アルカリイオン水は20リットルで3万円しますが、これだけあれば1カ月程度はもちます。

―地域住民に認知され、売上が安定するまでにどの程度の時間がかかるものなのでしょうか。

高梨 おおよそ3年で顧客が定着し、月商60万〜100万円、年間の経常利益が減価償却込みで100万〜300万円程度になると想定しています。

―コインランドリーは、節税や投資で始められる方が多いイメージです。「wash+」はどのような方を加盟対象として想定しているのでしょうか。

高梨 基本的に、投資目的の方はお断りしています。先程も申し上げたように、FCは、アトピーで苦しんでいる方々を助けたいという想いで始めました。この想いに共感してもらうことが大前提で、その上で、きちんと事業として取り組んでい頂ける法人に加盟してもらいたいと考えています。早い段階で、各都道府県に2店舗以上出店し、全国200店舗を達成したいです。