投資家必見 投資先企業を選ぶ前に「EBITDA」を理解せよ
(画像=MichaelJBerlin/stock.adobe.com)

EBITDAは、意味や計算式を理解すれば、決して複雑な概念ではない。EBITDAを理解することで、企業を評価する視点を養え、比較しやすくなるだろう。

今回はEBITDAの概要についてわかりやすく解説していく。関連指標にも触れるので、経営判断の役に立ててほしい。

目次

  1. EBITDAとは
    1. EBITDAの読み方と意味
    2. EBITDAの計算式
    3. 決算書からEBITDAを計算してみよう
  2. EBITDAを活用する3つのメリット
    1. メリット1.国や借入金の影響を除ける
    2. メリット2.設備投資の影響を除ける
    3. メリット3.M&Aの指標にできる
  3. EBITDAの活用における2つの注意点
    1. 注意点1.資金の流れを正確に把握できない
    2. 注意点2.計算式が統一されていない
  4. EBITDAに関連する2つの指標
    1. 指標1.EBITDAマージン
    2. 指標2.EV/EBITDA倍率
  5. EBITDAを経営判断の手がかりに

EBITDAとは

まず、EBITDAの読み方や意味、計算方法などをわかりやすく解説する。

EBITDAの読み方と意味

EBITDAの読み方は、「イービットディーエー」だ。「イービットダー」「イービッダー」「エビーダ」などと呼ばれることもある。元の英語は、「Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization」で、頭文字をとってEBITDAと書く。

EBITDAとは、税引前利益に支払利息と減価償却費を加えた金額だ。投資家が投資先企業を評価するときや、グローバルに企業を比較するときなどに活用されている。また、自社の経営の指標としても参考になる。

EBITDAの計算式

EBITDAの計算式は次のように表される。

EBITDA=税引前当期純利益+支払利息+減価償却費

簡便的に「営業利益+減価償却費」や「経常利益+支払利息+減価償却費」をEBITDAとするケースもある。

営業利益とは、売上から仕入原価と必要経費を差し引いた利益だ。営業利益は、支払利息など本業以外の損益を差し引く前の金額なので、減価償却費さえ足せばいい。

一方で経常利益とは、本業以外の損益を差し引いた利益だ。そのため、支払利息と減価償却費の両方を足す必要がある。なお、税引前当期純利益は、固定資産の売却など臨時に発生する損益も差し引いた利益だ。

営業利益・経常利益・税引前当期純利益の違いはややこしく感じるかもしれないが、実際にはすべて決算書に記載されている。決算書を見れば、それぞれどの項目が差し引かれた利益なのかわかるだろう。

EBITDAは複数の計算方法が存在し、どれか1つが正解というわけではない。そのため、EBITDAを指標として活用するときは、採用される計算方法を理解しておくことが大切だ。

決算書からEBITDAを計算してみよう

では実際に、決算書を見てEBITDAを計算してみよう。オーソドックスな「税引前当期純利益+支払利息+減価償却費」で考えてみる。

決算書は、主に貸借対照表と損益計算書で構成されている。貸借対照表は企業の現在の財産状況を表し、損益計算書は1年間の営業活動の結果を表す。EBITDAを計算する際には、損益計算書の項目を用いる

損益計算書の下のほうを見ると、「税引前当期純利益」がある。また、営業外費用の中に「支払利息」がある。「減価償却費」は、販売費および一般管理費の中に記載されている。

それぞれの数字を拾い上げたら、計算式に従いすべての金額を足す。こうすれば決算書から簡単にEBITDAを計算できる。

EBITDAを活用する3つのメリット

EBITDAを活用するメリットを3つ紹介する。

メリット1.国や借入金の影響を除ける

税金や支払利息は国によって変化し、支払利息は借入資金によっても変わってくる。

多くの設備投資が必要な事業だったり、創業から間がなく借入金の残高が大きかったりすると、事業が順調でも数字で劣ってしまいかねない。支払利息は返済が進めば自然と減少するため、通年で利益を比較する場合、支払利息の影響でブレが発生してしまう。

このような点を加味して、EBITDAの計算式では、まず税引前当期純利益に支払利息を足す。こうすることで、国ごとの影響を除いてグローバルな企業比較が可能となるほか、借入金の影響を除いて純粋に企業のお金を稼ぐ力を判断できる

メリット2.設備投資の影響を除ける

減価償却費とは、固定資産の購入価格を毎年少しずつ経費計上していくための勘定科目だ。

減価償却費は、採用している計算方法にもよるが、期ごとに増減する。新しく設備投資をすれば増えるし、償却が終われば減っていく。

また、定率法という計算方法を採用している場合、設備投資から時間が経つと自然に減価償却費も減少する。

つまり減価償却費が高くても、その年にたくさん出費があったとは限らないのだ。減価償却費を差し引くと利益は赤字だが、実際にはキャッシュがしっかり残っているケースは多々ある。

事業の特性上、設備投資額が大きければ、それだけ減価償却費がふくらむ。中古資産がある場合も、減価償却費が跳ね上がる要因になりえる。

このような点を踏まえると、減価償却費を足すことで、キャッシュベースで得られた利益を知る参考になる。設備投資の影響も排除しやすくなるだろう。

メリット3.M&Aの指標にできる

EBITDAという言葉は、M&Aにおいて頻繁に用いられる。それもそのはず、EBITDAはM&Aの意思決定や企業の売却価格の決定において重要な指標となるからだ。

EBITDAは、企業のお金を稼ぐ力を表す。買い手にとってM&Aを実行するときの判断基準になり、売り手はEBITDAの数値を根拠として自社の魅力をアピールできる。

M&Aにおける企業の売却価格は、計算方法が指定されているわけではない。目安としていくつかの計算方法はあるが、結局のところは買い手と売り手の交渉で売却価格が決まる。

そのため、売り手はEBITDAで企業の魅力をうまく伝えれば、売却価格を上げることも可能だろう。買い手にとっては投資となるため、EBITDAが価値を見極める指標となる。

EBITDAの活用における2つの注意点

EBITDAの活用における注意点を2つ解説していく。

注意点1.資金の流れを正確に把握できない

EBITDAは、企業のお金を稼ぐ力を主にキャッシュベースで把握したいときに役立つが、その背後にある借入金や設備投資は見えてこない。たとえば、借入金返済や期中に行った設備投資の金額などもEBITDAには反映されない。

また、キャッシュベースで把握できると強調したが、実際には支払利息や税金を差し引くため、EBITDAの値がそのまま企業にキャッシュとして積み上がるわけではない

資金の流れを正確に把握したいならキャッシュフロー計算書を見る必要がある。

注意点2.計算式が統一されていない

EBITDAは、決算書をもとに簡単に計算できるが、計算方法が統一されていないので少し粗い指標だ。

そのため、EBITDAの計算式や特性を理解した上で、あくまで企業のお金を稼ぐ力の目安として参考にしたい。

もちろんEBITDAだけでなく、決算書の借入金額や資産項目に着目するなどして、総合的な観点で企業を評価・比較する視点を養うことも大切だ。

EBITDAに関連する2つの指標

EBITDAに関連する指標がいくつかある。各指標の意味や使われるシーンも解説していく。

指標1.EBITDAマージン

EBITDAマージンとは、売上に占めるEBITDAの割合であり、次の計算式で表される。

EBITDAマージン=EBITDA÷売上高

EBITDAマージンが高いほど、売上に対して多くの金額がキャッシュとして残っていると読み取れる。

売上が増加したが経費が増えていない場合、売上は横ばいだが経費が減った場合などに、EBITDAマージンも上がる。つまり、EBITDAマージンは企業の経営効率を表すといえよう。

通年比較したときにEBITDAマージンが極端に上下している場合、その要因を把握することも大切だ。

EBITDAさえ計算すれば、EBITDAマージンも簡単に計算できる。毎年の事業状況を把握するためにEBITDAマージンを算出し、経営の参考にするのもいいだろう。また、投資先選定やM&Aの候補先選定においても、EBITDAマージンが参考になる。

指標2.EV/EBITDA倍率

EV/EBITDA倍率とは、EV(イーブイ)がEBITDAの何倍かを表す指標だ。EV/EBITDAマルチプルと呼ばれるときもある。

EVとは、EnterpriseValueの頭文字で成り立つ用語であり、一般的に事業価値をさす。ある時点の企業を金銭的価値に置き換えた指標である。

EVとEV/EBITDA倍率の計算式は次の通りだ。

EV=株式時価総額+純有利子負債
EV/EBITDA倍率=EV÷EBITDA

EV/EBITDA倍率では、事業価値をEBITDAの何年分でまかなえるかがわかる。そのため、M&Aの目安として使用されることが多い。

EBITDAを経営判断の手がかりに

EBITDAは企業のお金を稼ぐ力をキャッシュベースで把握できる指標だ。

そのため、グローバルな企業同士を比較するとき、M&Aで企業の売却価格を決めるときなど、さまざまなシーンで自社の経営に活かせる。ただし、EBITDAには複数の計算方法がある。活用するときは、自分が知りたい情報に合わせて計算式を選ぶとよいだろう。

EBITDAという指標を正しく理解し、目的に応じて活用するようにしたい。

文・木崎涼(ファイナンシャルプランナー、M&Aシニアエキスパート)

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