「ビッグエコー」運営会社187億の赤字 カラオケ業界の悲惨すぎる現状
(画像=yu_photo/stock.adobe.com)

「3密」は、2020年の新語・流行語大賞になった。「密閉」「密集」「密接」を意味する言葉だが、そのどれも当てはまりそうなものとして「カラオケ」がある。では実際、コロナ禍でカラオケ業界各社の業績はどうなっているのだろうか。業績は悲惨なものになっているのか。

東京商工リサーチによる調査データ

民間調査会社の東京商工リサーチは2021年5月、カラオケ運営会社の業績に関する調査結果を発表した。この調査結果からはカラオケ業界の現状がよく分かる。

調査結果によれば、全国の主要カラオケボックス運営会社46社の2020年1~12月期の業績は、合計売上高が前期比4.7%減の2,940億9,700万円、合計純利益は同61.3%減の78億3,200万円となった。

<カラオケ運営会社46社の業績の推移>

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※出典:東京商工リサーチ

売上の落ち込みはそれほど大きくないが、純利益の落ち込みは深刻だ。カラオケ店は緊急事態宣言に伴って休業要請の対象施設となり、開店している店舗でも外出自粛ムードなどもあって、来店客の減少は避けられなかった。

調査対象となった46社のうち、減収減益となった企業は全体の54.3%に相当する25社だ。前期は減収減益となった企業が8社にとどまっていただけに、新型コロナウイルスがカラオケ店へ与える影響の深刻さを表している。

<カラオケ運営会社46社の対前期売上高>

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※出典:東京商工リサーチ

東京商工リサーチは「各社は感染防止対策の徹底、カラオケを利用しないテレワークスペースとしての貸出など、ウィズコロナに取り組んでいる」としながらも、「自治体などの休業要請によって営業は制限され、業界の苦境はしばらく続きそう」と指摘している。

ちなみに東京商工リサーチは、2020年におけるカラオケ企業の倒産や廃業についても調べている。そのデータによれば、倒産や廃業などによって市場から撤退した企業は23件に上っており、過去10年においては高めの水準となっているという。

カラオケ大手企業3社の決算は実際どうなっている?

このようにカラオケ業界に逆風が吹く中、カラオケボックスを展開する大手企業各社の業績は実際のところ、どうなっているのだろうか。売上高トップ3の「第一興商」「コシダカホールディングス」「鉄人化計画」の最新決算を参照していこう。

第一興商:通期で187億8,200万円の赤字に転落

第一興商は、通信カラオケシステム「DAM」を展開し、直営でカラオケボックス「ビッグエコー」などを運営している。2021年3月期の通期決算(2020年4月〜2021年3月)は、売上高が前期比36.2%減の933億1,600万円まで落ち込み、最終損益は125億5,500万円の黒字から187億8,200万円の赤字に転落した。

カラオケ店が臨時休業を余儀なくされたことが響いたほか、DAMを導入しているスナックやバーなどの店舗も休業や時短営業となり、これらの店舗に対して機器賃貸料などを一部減免したことも、売上減に結びついた。

コシダカホールディングス:半期で16億8,000万円の赤字

コシダカホールディングスは、カラオケボックス「カラオケ まねきねこ」を展開している。最新決算は2021年8月期の第2四半期決算(2020年9月~2021年2月)で、売上高は前期比64.3%減の121億1,600万円、最終損益は34億2,500万円の黒字から16億8,000万円の赤字に転落している。

新型コロナウイルスの影響による国内店舗の売上減はもちろん、海外店舗も大半が休業となってしまい、すでに一部店舗については閉店を決定しているという。

鉄人化計画:半期赤字額が前年同期の3倍強、4億4,300万円

カラオケボックス「カラオケの鉄人」などを展開する鉄人化計画の2021年8月期の第2四半期決算(2020年9月~2021年2月)も、非常に厳しいものとなっている。売上高は前期比37.1%減の23億1,800万円で、最終損益は前年同期に続き赤字で、その金額は3倍強の4億4,300万円まで膨らんだ。

同社は売上減について、「新型コロナ感染症拡大を背景とした利用控えが主な要因」としている。

ほかの業種に増して厳しい状況が続く

カラオケ業界は、密のイメージが強い。たとえ緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の適用が無くなったとしても、コロナ禍がほぼ収束するまでは客足が完全には戻らないことが見込まれる。つまり、ほかの業種に増して厳しい状況が続きそうだ。

ただし、中にはカラオケルームを別の用途、たとえばテレワークスペースとして貸し出す取り組みをしている企業もあり、何とかダメージを最小限に抑えようとしている。一刻も早くコロナ禍が収束し、カラオケ店ににぎわいが戻る日が来るのを祈るばかりだ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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