金属粉末射出成形,MIM,2018年
(写真=Matveev Aleksandr/Shutterstock.com)

2015年度から2025年度までのCAGRは9.78%となり、2025年度の国内金属粉末射出成形(MIM)市場規模を265億82百万円と予測

~市場の成熟とともに、今後は特定分野の金属部品への採用拡大がけん引する見通し~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、金属部品製造技術である金属粉末射出成形(MIM)を調査し、国内市場規模推移・予測、関連企業の動向、将来展望を明らかにした。

国内金属粉末射出成形(MIM)市場規模推移と予測

国内金属粉末射出成形(MIM)市場規模推移と予測

1.市場概況

金属粉末射出成形(MIM:Metal Injection Molding)は、1960年のNASAの元研究員であるDr.R.E.Wiech.Jrによる開発が発祥とされている。金属の微粉末を使用し、樹脂成形技術と粉末冶金の技法を組み合わせており、従来の鍛造や鋳造、機械加工などの金属加工技術にない特徴を持つ製造方法のひとつとして、近年、改めて着目されている。
当該市場には専業メーカーだけでなく、ダイカストや樹脂成形、ロストワックス(精密鋳造)などを主業とするメーカーが参入しているが、一般的に複雑な形状の小形金属部品が主な対象になる。国内市場の立ち上がりは1980年代後半で、当初は時計バンドやミシン、OA・事務機など限定的な用途への展開であったが、近年は各種産業機器をはじめ、医療機器や自動車部品、情報通信機器、ロボットなど多方面の製品に採用され始めている。この用途展開の幅広さは、国内参入メーカーの技術対応力の高さによるもので、海外メーカーに比べた特徴のひとつである。

2017年度の国内金属粉末射出成形(MIM)市場(メーカー出荷金額ベース)を123億13百万円と推計した。2018年度の同市場規模は、前年度比110.2%の135億67百万円の見込みである。金属粉末射出成形は、他の金属加工製法と競合する中で有用性が認識されていながらも、これまで価格低減が課題となって来た。さらに、製造プロセスの適正化や寸法精度など技術的な改善点も一部残されているが、関連メーカー各社はモノづくりの入り口となる、ユーザー企業の開発・設計部門への認知を徐々に進めている。

2.注目トピック

参入各社の設備投資意欲は旺盛

現状、金属粉末射出成形関連メーカー各社の売上計画は明確で、総じて10~15%の対前年度成長を目標に掲げることが多い。このため、ほとんどのメーカーが事業拡充のための投資計画を打ち出している。
主体的な製造装置である射出成形機の追加導入はもちろんのこと、焼却(焼結)炉などの関連設備や測定機器の拡充、さらには、自動化・省力化投資なども含まれている。また、一部では既に関連設備・機器の整備を一定レベルで終え、特定分野への連携事業を展開するための、億円単位の事業投資の投下計画もあるなど、明確な成長路線を敷いているケースもある。

3.将来展望

国内の金属粉末射出成形関連メーカーは、多種多様な材料でさまざまな需要を取り込んで成長してきたが、市場の成熟とともに、今後は特定分野の部品への採用拡大がけん引する見通しである。2025年度の国内金属粉末射出成形(MIM)市場規模(メーカー出荷金額ベース)を265億82百万円と予測する。2015年度から2025年度までのCAGR(年平均成長率)は9.78%となり、良好な成長を遂げる見込みである。

参入メーカー各社の今後の需要ターゲットは医療機器部品と自動車部品が中心で、いずれも処理量の拡大、継続的な需要が期待されている。医療機器部品においては難加工材料のチタン、自動車部品においては電動化関連の需要が特に注目されており、これらの用途への採用拡大がポイントになると考える。
また、今後の技術的な課題としては、適切なバインダーの開拓や寸法精度の向上、製品の大形化・小形化などへの対応が指摘されているが、各社は自社の特長を活かしながらこれらの課題をクリアし、事業を進めることとなる。