これで事業が急加速!? 仕事で活用すべきダブルループ学習
(画像=tamayura39/stock.adobe.com)

ダブルループ学習は、最近、よく耳にする。この記事では、ダブルループ学習の意味とシングルループ学習の意味について、ケーススタディを用いながらわかりやすく解説する。ダブルループ学習を仕事で活用する方法や組織に根付かせる方法も具体的に解説するので、ぜひ参考にしてほしい。

目次

  1. ダブルループ学習とは?シングルループ学習との違い
    1. シングルループ学習の意味とケーススタディ
    2. ダブルループ学習の意味とケーススタディ
  2. ダブルループ学習の背景にあるシングルループ学習の二つの弱点
    1. 1.成長スピードが遅い
    2. 2.壁を乗り越えられない
  3. ダブルループ学習を活用するメリット2つ
    1. 1.成長スピードが飛躍的に上がる可能性がある
    2. 2.壁にぶつかっても挑戦し続けられる
  4. ダブルループ学習を組織に根付かせる3つの方法
    1. 1.経営者や上司から問いかける
    2. 2.部下の意見を受け入れる
    3. 3.経営者・上司のマネジメント能力も重要
  5. ダブルループ学習定着に役立つグループワーク
  6. ダブルループ学習で生まれた意見に耳を傾けよう

ダブルループ学習とは?シングルループ学習との違い

組織が問題解決の手法を学ぶプロセスには、シングルループ学習とダブルループ学習があるといわれている。まず、それぞれの意味を解説し、具体的なケーススタディを紹介する。

シングルループ学習の意味とケーススタディ

シングルループ学習とは、すでにある考え方や行動の枠組み、過去の成功体験に沿って問題解決の方法を探ることだ。「結果を受けて行動を改善し、結果を確認する」というループをたどる。

たとえば、とある事業部で、売上目標が達成できていないとする。これまで、営業マンが電話で個別にアポをとり、訪問営業をするスタイルで売上を上げてきた。シングルループ学習に沿って考えるなら、次のような解決策が想定される。

・電話をかける回数を増やし、アポの数を増やす。
・電話をかけたかどうかを上司がチェックする体制を作る。
・成約率を上げるためパンフレットを刷新する。
・訪問した際に役立つ営業トーク研修を実施する。

いずれも、あくまでこれまでの考え方や行動の枠組み、過去の成功体験にのっとった解決策だ。

ダブルループ学習の意味とケーススタディ

ダブルループ学習とは、すでにある考え方や行動の枠組み、過去の成功体験にとらわれず、目的や前提を問い直すことで、これまでにない問題解決の方法を探ることだ。「結果を受けて前提を見直し、行動を変え、結果を確認する」というループをたどる。

先ほどのケースを、ダブルループ学習に沿って考えるなら、次のような見方が出てくる。

・これまでは電話でアポをとるスタイルだったが、セミナーやSNS広告を通じて、無料相談から成約につなげる工夫をする。
・これまでは営業マンが訪問していたが、オンライン上で販売できるECサイトをオープンする。
・過去の顧客リストをデータベース化し、自動でDMを配信して追客するシステムを導入する。
・そもそも売上目標が妥当な数値かを再検討し、場合によっては売上目標を修正する。

ダブルループ学習では、既存の行動や枠組み、過去の成功体験にとらわれず、俯瞰的な視点で問題の解決策を探す。そのため、シングルループ学習より幅広い選択肢の中から最適な解決策を選ぶことができる。

ダブルループ学習の背景にあるシングルループ学習の二つの弱点

実際に仕事をしていると、ダブルループ学習に基づいて既存の行動や考え方を疑い、広い視野で解決策を探すことは容易ではないとわかる。そのため、シングルループ学習だけで完結させようとしてしまうケースは多々ある。現状の取り組みの延長線上にあるシングルループ学習の方が、取り入れやすく、周囲の反発も少ないからだ。

しかし、ダブルループ学習という考え方が提唱された背景には、シングルループ学習の弱点が関係している。続いては、シングルループ学習の弱点をみていこう。

1.成長スピードが遅い

シングルループ学習では、大きな変革は望めない。先ほどのケースでいえば、電話をかける回数を増やすとしても、限界がある。パンフレットを刷新したからといって、目覚ましく成約率が上がるとも限らない。現在の取り組みの枠組みに縛られている限り、結局は成長スピードが遅くなってしまうという弱点がある。

2.壁を乗り越えられない

そもそも目標設定が現実的でない、やり方が効率的でないといった場合も、シングルループ学習では軌道修正される機会がない。そのため、壁にぶつかった時、シングルループ学習で解決策を考えて試行錯誤するだけでは、どうしても壁を乗り越えられないことがある。前提を疑う視点を持たないシングルループ学習の限界といえるだろう。

ダブルループ学習を活用するメリット2つ

ダブルループ学習の提唱者であるハーバード大学ビジネススクールのアージリスは、シングルループ学習だけでは、組織が環境に適応して生き残ることはできないとしている。ダブルループ学習で幅広い選択肢の中から解決策を探し、シングルループ学習によって反復・強化する。このように、組織の学習プロセスには、シングルループ学習とダブルループ学習の2つが必要なのだ。

シングルループ学習しか習慣化されていない組織では、ダブルループ学習を積極的に活用していきたい。続いては、ダブルループ学習を仕事で活用するメリットを紹介する。

1.成長スピードが飛躍的に上がる可能性がある

ダブルループ学習では、既存の枠組みにとらわれずに解決策を探す。そのため、飛躍的に成長スピードが上がる可能性がある。先ほどのケースでいえば、SNS広告やECサイトによって爆発的に売上が伸びることも考えられる。このように、ダブルループ学習で出たアイデアは、時に事業の成長の起爆剤となり得るのだ。

2.壁にぶつかっても挑戦し続けられる

前提を疑うダブルループ学習なら、壁にぶつかったとしても、正面突破以外の解決策を探ることができる。「そもそもこの壁は超えるべきか?迂回した方が早いのでは?」「ジャンプするだけでなく、道具を使えば超えられるのでは?」というような柔軟な発想で、売上目標や経営課題と向き合える。壁にぶつかっても挑戦し続けられるのがダブルループ学習のメリットだ。

ダブルループ学習を組織に根付かせる3つの方法

事業を成長させたいなら、ダブルループ学習を取り入れるのが効果的だ。とはいえ、具体的にどのようにしてダブルループ学習の文化を根付かせればいいか悩む経営者も多いだろう。ダブルループ学習を根付かせるには、上司・部下関係なく、意見を言いやすい風土を醸成することが大切だ。

続いて、風土づくりの手順を具体的に解説していく。

1.経営者や上司から問いかける

ダブルループ学習の特徴である前提を疑う意見は、言い出しにくいというケースが多々ある。

売上目標に達していない時、シングルループ学習に基づく「テレアポを増やします!」という意見は、部下としても言い出しやすい。上司としても、熟考する必要もなく「よし、頼んだ!」と返事できるだろう。しかし、これだけでは過去の取り組みの繰り返しとなり、飛躍的な成長は望めない。

飛躍的な成長のためダブルループ学習を根付かせるには、まずは経営者や上司が自らダブルループ学習に基づく問いかけをすることが大切だ。

たとえば、売上目標を達成できなかった時、「今回の売上目標は妥当だったと思うか?」「今はテレアポが中心だが、他にどんな営業方法があると思う?」といった問いかけをして、部下に考えさせてみる。

2.部下の意見を受け入れる

経営者や上司が問いかけると、部下からは「このような背景もあるので、このぐらいの目標が妥当だったのでは?」「最近では、電話よりSNSの方がメジャーだと思う」といった意見が、少しずつ出てくるようになる。

この時、実際にその意見を採用するかどうかは別として、意見を出したことに関しては部下を褒めることが重要だ。そうすれば、経営者や上司から問いかけなくても、だんだんと部下の方から意見を出すようになり、ダブルループ学習で考えることが習慣化されていく。

3.経営者・上司のマネジメント能力も重要

ダブルループ学習で意見が出ても、それが現実的に検討され実行に移されなければ意味がない。部下の意見を受け取った経営者や上司側もしっかりと考え、必要な意思決定を行うことが重要だ。

妥当な目標設定をするために市場調査が必要なら、調査方法を検討し、予算を確保する。部下の言う目標設定では低すぎる場合、理由を添えて説明し、どうすれば妥当な目標設定ができるか議論を重ねる。

販売する商品とSNSというチャンネルが適しているか検討し、適しているなら、どのように活用していくかを検討する。必要に応じてプロジェクトチームを作り、SNSでの販売を実現させる。

経営者・上司にはこのような実行力が求められる。

自分が決めたことを部下に実行させるだけでは、いつまでも部下はシングルループ学習から抜け出せない。経営者・上司が自ら問いかけ、部下の意見を取り入れてマネジメントし、実行に移すことで、部下にダブルループ学習の習慣が根付いていく。

そのような人材が育つことが、事業拡大へとつながっていくだろう。

ダブルループ学習定着に役立つグループワーク

風土づくりとあわせて、ダブルループ学習を根付かせるグループワークを実施してみるのもいいだろう。グループワークの手順は次の通りだ。

  1. 規格外の目標を立てる。
  2. グループ内でブレストをする。

規格外の目標とは、既存の枠組みに縛られたシングルループ学習では到底達成できないような目標のことだ。たとえば、現状の事業部の売上が1,000万円なら、「同じ人員で1億円の売上を達成するにはどうすればいいか?」といった目標設定が考えられる。

ブレストはブレインストーミングの略で、より多くのアイデアを出すことを目的とする。そのため、人のアイデアを批判せず、自由に意見を述べつつディスカッションを行う。上司・部下といった役職や年次にとらわれずに意見を出せるようになることがゴールだが、最初は同じ役職同士でグループを作るなど、意見が出やすいよう工夫することも大切だ。

このようなグループワークを通じて、少しずつダブルループ学習を根付かせていくのもいいだろう。

ダブルループ学習で生まれた意見に耳を傾けよう

長く成長発展していけるのは、その時々の最適な選択肢を選び、実行していける企業だ。視野を広げて解決策を探せるダブルループ学習は、企業の成長発展に欠かせない学習プロセスといえるだろう。ダブルループ学習が習慣化する風土づくりをし、ダブルループ学習ができる人材を育成することで、変化の激しい時代を切り抜けられる底力が養われるはずだ。

風土づくり、人材育成の第一歩として、まずはダブルループ学習で生まれた「前提を疑う意見」に真摯に耳を傾けるようにしたい。

文・木崎涼(ファイナンシャルプランナー、M&Aシニアエキスパート)

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