現代の人材教育には「OJT」ではなく「OFF-JT」が必要?違いは何?
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効率的に人材教育を進めるには、OJTとOFF-JTの違いを理解しておく必要がある。特にOFF-JTは特性が変わりつつあるため、メリットなどを今一度確認しておくことが重要だ。教育効果を少しでも高めるために、人材教育の基本をおさらいしていこう。

目次

  1. 現代の人材教育に欠かせない「OFF-JT」とは?
    1. 経営者が確認すべき「OFF-JT」
    2. OJTとは?
  2. OJTとOFF-JTのメリット・デメリットまとめ
  3. なぜいまOFF-JTが必要なのか? 実施する企業が増えた背景
    1. OJTとの使い分けも重要に
  4. OFF-JTを上手に運用するポイント! 教育効果を高める3つのコツ
    1. 1.受講者同士がコミュニケーションを取れるような環境を整える
    2. 2.OJTでは習得できない知識・スキルを学習できる場として考える
    3. 3.受講者のサポート担当者を配置する
  5. 企業によってはSDの活用も重要に
  6. 最適な教育環境を整えるには、企業側が学ぶことも必要に

現代の人材教育に欠かせない「OFF-JT」とは?

働き方改革や業務効率化などが注目された影響で、企業の人材教育の形は多様化してきている。いまでも新人がいきなり現場に立たされる業界は見られるが、特に専門的な知識・スキルは現場では身につかないこともあるので、人材教育の在り方は頻繁に見直されてきた。

経営者が確認すべき「OFF-JT」

数ある人材教育のなかでも、世の中の経営者が今一度確認しておきたい手法が「OFF-JT(Off the Job Training)」と呼ばれるものだ。これは、一時的に現場を離れる形で行われる職業訓練のことであり、例えば実務外のビジネス研修やキャリアアップ研修などが該当する。

そのほか、管理職を目指す人材が受けるマネジメント研修など、OFF-JTにはさまざまな形がある。いずれもスキルアップにつながるものだが、経営者がその特性を理解できていないと大きなメリットは得られないので、OFF-JTに関する知識はしっかりと身につけておかなくてはならない。

OJTとは?

一方で、通常業務(現場)を通して必要な知識・スキルを習得させる教育手法は、「OJT(On The Job Training)」と呼ばれている。では、具体的にどのような手法がOJTとOFF-JTに該当するのか、ここで一度整理をしておこう。

OJTとOFF-JTの違いとは? それぞれのメリットや使い分け方、教育効果を高める3つのコツを解説

OJTは先輩社員と部下がセットになっているケースが多く、先輩社員が口頭や実演で知識・スキルを伝えていく。なかには、部下が一人きりで現場に立たされる例もあるが、これはOJTには該当しないこともあるため注意が必要だ。

OJTはあくまで人材教育の手段なので、実施する際には知識・スキルを身につけられる環境を整えなくてはならない。

OJTとOFF-JTのメリット・デメリットまとめ

OJTとOFF-JTはいずれも企業の教育手法だが、実はそれぞれにメリット・デメリットがある。より適した教育手法をとり入れるために、経営者や担当者は以下のメリット・デメリットをしっかりと確認しておこう。

OJTとOFF-JTの違いとは? それぞれのメリットや使い分け方、教育効果を高める3つのコツを解説

OJTの最大のメリットは、通常業務を通して職務の遂行能力を身につけられる点だ。実務に役立つ知識・スキルに絞って伝達しやすいため、うまく運用すれば短期間で一人前の従業員を育て上げられる。

一方で、OFF-JTは集団教育に適した方法なので、企業の一体感や団結力を強める手段としても活用されている。ただし、社外研修をする場合は大きなコストが発生することもあるので、その点に注意しながら計画を立てなくてはならない。

なぜいまOFF-JTが必要なのか? 実施する企業が増えた背景

厚生労働省が発表した「能力開発基本調査(令和元年度分)」によると、OFF-JTに費用支出した企業の割合は年々増えてきている。確かにOFF-JTのメリットは魅力的だが、なぜ金銭的なコストをかけてまでOFF-JTを実施する企業が増えてきているのだろうか。

主な要因としては、各業界で嘆かれている人材不足が挙げられる。終身雇用制度が崩壊しつつある現代の日本では、多くの業界で人材の流動性が高くなっているため、部下を指導する立場の人材が足りていない。

つまり、本来はOJTを実施したくても、人的リソースの問題で諦めている企業が増加しているのだ。

また、IT技術やIoTが発達した影響で、研修やセミナーが「オンライン化」されている影響も大きい。ネット環境さえあれば研修・セミナーを受講できる時代になったため、OFF-JTは以前に比べると時間・場所を限定されにくくなった。

内容によっては通勤時間やプライベートの時間も活用できるので、企業にとっては人材教育をより効率的に進めやすい環境になったと言えるだろう。

OJTとの使い分けも重要に

OJTとOFF-JTは対になるものだが、どちらか一方が不要になることはない。前述の通り、OJTにもOFF-JTにも魅力的なメリットがあるため、目的に応じて使い分けることが重要になる。

では、それぞれの教育手法がどのようなケースに適しているのか、ここまでの内容も踏まえて簡単にまとめておこう。

OJTとOFF-JTの違いとは? それぞれのメリットや使い分け方、教育効果を高める3つのコツを解説

OJTとOFF-JTをうまく使い分けるには、最初に人材教育の「目的」を明確にすることが必要だ。また、教育の対象になる従業員の数や知識レベル、教育を受け終わった後の配置によっても適した選択肢は異なるので、自社の現状を整理することも重要になる。

つまり、中長期的な視点で人材教育を考える必要があるため、目先のメリットにとらわれないよう注意しておきたい。

OFF-JTを上手に運用するポイント! 教育効果を高める3つのコツ

一口にOFF-JTと言っても実際にはさまざまな手法があるため、運用する際には「教育効果を高めるポイント」を押さえなくてはならない。そこで次からは、OFF-JTの運用時に意識しておきたい3つのコツをまとめた。

1.受講者同士がコミュニケーションを取れるような環境を整える

OFF-JTを実施すると、部署や支店にかかわらず多くの従業員(受講者)同士がコミュニケーションを取れるようになる。部署や支店をこえたコミュニケーションは、良い意味で切磋琢磨や情報交換を促すため、受講者同士が交流できる場は積極的に提供すべきだ。

集団でOFF-JTを実施する場合は別々の日程・場所ではなく、すべての受講者を同じ環境で参加させることが望ましい。また、受講後に情報共有ができるような環境を提供すると、学習効果をさらに高められるだろう。

2.OJTでは習得できない知識・スキルを学習できる場として考える

OJTで習得した知識・スキルをOFF-JTで復習させても、大きな教育効果は得られにくい。OJTとOFF-JTとでは、そもそも習得に適した知識・スキルが異なるので、それぞれを補い合うような形で教育体制を整えることが重要だ。

例えば、OJTではより実務に近いスキルを習得させて、OFF-JTでは業務に対する考え方や意義を学ばせる。このような方法であれば、短期間でさまざまな知識・スキルを習得させられるので、人材教育の効率をぐっと高められる。

3.受講者のサポート担当者を配置する

一人ひとりに指導者が常につくOJTとは違い、OFF-JTでは生じた疑問をすぐに解決することが難しい場合もある。また、特にオンライン形式の研修では、機材やネット回線などのトラブルも起こり得るので、知識・スキルをよりスムーズに習得できる環境を整えることが重要だ。

そこでぜひ取り組んでおきたいことが、受講者をサポートする担当者の配置。学習を手厚くサポートする担当者がいれば、仮に経験の少ない新入社員であっても知識・スキルの習得に集中しやすくなる。

企業研修において不測の事態が起こるケースは決して珍しくないので、OFF-JTの実施前には受講者のサポート環境をしっかりと整えておこう。

企業によってはSDの活用も重要に

企業が人材教育をする手段としては、ほかにも「SD(Self Development)」と呼ばれるものがある。これはいわゆる「社外での自己啓発」のことであり、具体的には社外のセミナーに参加したり、ビジネス書で知識をつけたりする方法を指す。

企業がSDを実施する最大のメリットは、研修内容や予算の自由度が高い点だ。また、従業員自身が利用するもの(イベントや書籍など)を選ぶ形なので、優秀な人材は有益なスキルを次々と身につけていく。

ただし、SDには強制力がないため、従業員によっては途中でモチベーションを失ってしまうことがある。そのほか、受講者同士で情報共有をする機会が少ない点も、事前に押さえておきたいデメリットだろう。

SDによって効率的に人材教育を進めるには、従業員に対して学習の方向性を示してあげることが重要だ。方向性がわかれば、参加すべきイベントや読むべき資料などが分かりやすくなるため、多くの従業員は迷うことなく学習を進められるようになる。

最適な教育環境を整えるには、企業側が学ぶことも必要に

OJTとOFF-JTをうまく使いこなし、効率的に従業員のスキルを高めるには、企業側も人材教育のコツを学ばなくてはならない。特に新入社員については、右も左もわからない状態で入社してくることが多いので、ただ学びの場を提供するだけでは不十分だ。

また、最終的な目的次第では、OJTとOFF-JTに加えてSDを利用することも必要になってくる。人材教育にはさまざまな形があるので、今回紹介した内容を参考にしながら最適な方法を見極めていこう。

著:片山 雄平
1988年生まれのフリーライター兼編集者。2012年からフリーライターとして活動し、2015年には編集者として株式会社YOSCAに参画。金融やビジネス、資産運用系のジャンルを中心に、5,000本以上の執筆・編集経験を持つ。他にも中小企業への取材や他ライターのディレクション等、様々な形でコンテンツ制作に携わっている。
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