生活をしていく上で、年収の金額は誰にとっても重要だ。金額が大きいに越したことはないが、長期的な視点を持ち「生涯給与がどれくらいになるか」にも注目したい。
社会に出る年齢が遅くても学歴が高ければ生涯賃金は高くなる傾向があり、そしてもちろんどの企業に就職するかによっても、生涯給与に差が出てくる。具体的に最新データを分析していこう。
学歴別・男女別の生涯給与は?
独立行政法人「労働政策研究・研修機構」は、毎年発表している「ユースフル労働統計」において、60歳までフルタイム正社員(同一企業継続就業以外のケースも含む)の生涯賃金を明らかにしている。
この統計の2023年版では、学歴別・男女別の生涯賃金は次の通りとなっている。中学卒が最も社会に早く出て働き始めることとなるが、生涯賃金は最も低い。一方、大学院卒は社会に出るのが最も遅いが、生涯賃金は最も高い。中卒と大学院卒を比べると、男性で1.52倍、女性で1.75倍の差がある。
最終学歴:中学卒
・男性:1億9,660万円
・女性:1億4,260万円
最終学歴:高校卒
・男性:2億300万円
・女性:1億4,920万円
最終学歴:専門学校卒
・男性:1億9,780万円
・女性:1億7,080万円
最終学歴:高専・短大卒
・男性:2億2,840万円
・女性:1億7,230万円
最終学歴:大学卒
・男性:2億2,740万円
・女性:1億9,800万円
最終学歴:大学院卒
・男性:3億30万円
・女性:2億5,050万円
ちなみにこの統計では、生涯労働時間も紹介されている。学歴別・男女別のデータは以下の通りとなっている。
最終学歴:中学卒
・男性:11万9,900時間
・女性:10万3,900時間
最終学歴:高校卒
・男性:11万1,800時間
・女性:9万7,900時間
最終学歴:専門学校卒
・男性:10万4,600時間
・女性:9万2,500時間
最終学歴:高専・短大卒
・男性:10万3,900時間
・女性:9万3,500時間
最終学歴:大学卒
・男性:9万9,200時間
・女性:9万200時間
最終学歴:大学院卒
・男性:9万3,900時間
・女性:8万6,400時間
当然、中学卒が最も労働時間が多く、大学院卒が最も少なくなる。男性で比較すると、中学卒と大学院卒では2万6,000時間、女性で比較すると1万7,500時間の差がある。
生涯給料トップ20企業ランキング
学歴によっても生涯給与は変わってくるが、当然、勤め先によっても金額は変わってくる。東洋経済オンラインは独自に会社四季報や厚生労働省の賃金構造基本統計調査などのデータを分析し、生涯給料ランキングを発表しているので、そのデータを引用して紹介しよう。
ちなみにランキングの対象となっているのは、単体の従業員数が10人に満たない企業や平均賃金を公表していない企業を除いた上場企業だ。
1位:M&Aキャピタルパートナーズ(13億1,798万円)
2位:キーエンス(9億799万円)
3位:三菱商事(7億206万円)
4位:ヒューリック(6億9,221万円)
5位:ドリームインキュベータ(6億7,906万円)
6位:三井物産(6億5,188万円)
7位:伊藤忠商事(6億3,144万円)
8位:地主(6億2,221万円)
9位:商船三井(5億8,413万円)
10位:丸紅(5億8,241万円)
11位:住友商事(5億7,834万円)
12位:ストライク(5億5,967万円)
13位:レーザーテック(5億4,279万円)
14位:ジャストシステム(5億3,275万円)
15位:ディスコ(5億1,311万円)
16位:霞ヶ関キャピタル(5億214万円)
17位:川崎汽船(4億9,508万円)
18位:ファナック(4億8,491万円)
19位:フロンティア・マネジメント(4億7,653万円)
20位:兼松(4億6,598万円)
1位となったのはM&Aキャピタルパートナーズだ。同社はM&Aの仲介事業などを手掛けている。2位は日本きっての高年収企業として知られるキーエンス。自動制御機器や計測機器の開発・製造・販売などが主な事業だ。
3位以降で目立つのが総合商社。3位に三菱商事、6位に三井物産、7位に伊藤忠商事、10位に丸紅、11位に住友商事がランクインしている。この5社は「5大総合商社」と呼ばれる。
昨今注目度が高い半導体関連企業も上位にいる。半導体関連装置を製造するレーザーテックが13位、ティスコは15位につけている。
生涯給料、就職先によって平均値と大きな差
学歴別の生涯年収と企業別の生涯賃金のデータを比較すると、同じ学歴でも就職する企業によってかなりの差が出てくることが分かる。
例えば、最終学歴が大学卒の男性の平均生涯年収は2億2,740万円だが、企業別で1位のM&Aキャピタルパートナーズは13億1,798万円であり、平均の約5.8倍の金額となっている。
このような生涯給料の差は、企業勤めをしている限りは勤め先によって変わってくるため、埋めにくいものと考える人が多いと思う。しかし、この差を埋める方法がないわけではない。「投資」や「副業」という方法だ。
近年はネット証券の台頭によって、企業勤めの人も簡単に投資を始めやすくなった。そして早めに投資を始めれば「複利効果」によって、将来資産を大きくすることができるかもしれない。投資収益は「給料」というくくりではないが、収入として金銭的に楽になるという意味では同じだ。
もちろん投資にはリスクはつきまとうが、許容できるリスクの範囲で資産運用をしていけば、生活そのものが破綻することはない。まずは余剰資金を使って少ない金額から投資を始めることをおすすめしたい。新NISAも始まっているので、国の税制優遇制度を積極的に活用しよう。
働き方改革などが進むにつれて、企業が副業を容認する動きも目立ち始めている。企業勤めをしながら身につけたスキルをうまく生かせば、時給換算で正社員として働いているとき以上の報酬を得られるケースも出てくる。副業がうまくいけば独立・起業し、さらに高収入を目指すという方法もある。
「投資」や「副業」に挑戦する道
生涯給料の差を「勤める企業の差」と割り切って諦めてしまうのは簡単だが、これからさらに長くなる老後の期間のことを考えると、何とかして得られるお金を増やしておきたいところだ。そのときに資産運用や副業は解決策の一つになり得る。この記事を読んだことをきっかけに、ぜひ挑戦することをおすすめしたい。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)