フレームワーク思考だけで“モレ”は完全にはなくならない
今回のテーマは「視点の“モレ”をなくす」。このテーマと上記のクイズのつながりについて、細谷功氏はこのように話す。

「ある事象をモレなくとらえたいときによく使われるのがフレームワーク。これは特定の事象を、あらかじめ用意しておいた枠組みに落とし込んでいくことで、その事象を『モレ』なく『だぶり』なく、『全体から』とらえることができる思考法です。有名なものでは、3Cや4Pといったフレームワークがありますね」

では今回のクイズはフレームワーク思考の利点を説明するためのものなのか?

「いいえ逆です。広く活用されているフレームワーク思考ですが、実は先ほど挙げたようなメリットとともに、デメリットもあることを知ってほしかったんです。とはいっても、フレームワーク思考に親しんでいる人にはピンと来ないと思います。そこであらためて上記のクイズを例に考えてみましょう。

説明書を一通り見てからプラモデルを組み立てることは、モレもだぶりもなく、全体から考える行為なので、フレームワーク思考を使っているといえます。確かにこの方法だと、とんでもない間違いを犯すリスクが減りますが(図1『説明書を見ないデメリット』参照)、一方で既存の枠組みを超えた新しい発想は生まれにくくなります(図1『説明書を見ないメリット』参照)。

図1:説明書を見ないメリット・デメリット
(画像=図1:説明書を見ないメリット・デメリット)

つまり、フレームワーク思考はモレがなくなる思考法だとされていますが、実はそれは設定した枠の中でのモレがなくなるのであって、枠外の発想はモレてしまっているともいえるのです」

要はフレームワーク思考と思いつき、両方のメリット・デメリットを理解しておくことが重要なのだと細谷氏は言う。

「お互いの特徴を理解しておけば、状況に応じて思考法を使い分けることができます。図2を見てください。これは時間差による、フレームワーク思考と思いつきの成果の違いをグラフ化したものです。こうした両者の特性を踏まえれば、両者を駆使したハイブリッドな方法、つまり真に視点のモレをなくすことができます」

図2:フレームワーク思考と思いつきの成果曲線
(画像=図2:フレームワーク思考と思いつきの成果曲線)

マッピングを活かせば企画会議は怖いものなし
例えば企画会議でブレーンストーミングを行う場合など、ハイブリッド法は非常に有効だという。

「とにかく最初は思いつきで、あれこれアイデアを出します。しかしそのままでは視点のモレや偏りがある。そこでフレームを用意し、先ほど出したアイデアをフレームの中に落とし込んでいく。こうしたマッピングの作業を挟むことで、視点のモレや偏りが判明します。

似たような思考法として『KJ法』がありますが、この手法は出てきたアイデアをグルーピングすることで、雑多なアイデアを整理するというもの。モレのチェックまでできないことが弱点です」

このハイブリッド法の考え方のプロセスを示したのが図3だ。

図3:ハイブリッド法におけるマッピング
(画像=図3:ハイブリッド法におけるマッピング)

「また、こうしたハイブリッドな思考法には、新しい視点を生み出すためのヒントが隠されています。『フレームワークの枠組みに収まりきらなかったアイデア』です。このアイデアがいかに新しい視点を生み出すかについては、次回で詳しく解説したいと思います。まずは今回紹介した、フレームワーク思考と思いつきのハイブリッド法を使いこなせるようになってくださいね」

(執筆者:細谷 功)GLOBIS知見録はこちら