19日、地域金融機関の再編を支援する改正金融機能強化法、出資及び業務に関する制限を緩和する改正銀行法、そして、海外ファンドの参入要件を引き下げる改正金融商品取引法が成立した。超低金利、内需縮小、異業種参入という逆風の中、競争力を低下させてきた銀行の収益機会を拡大させるとともに地域金融の統合・再編を促すことで金融システムの安定と地域経済の支援強化を目指す。
まずは地域金融の立て直しだ。経営統合に際してのシステム投資や店舗網の再編に補助金を交付する。事業承継支援では顧客企業の経営体制の移行に際して最大5年までと限られていた株式保有期間が10年に延長される。経営再建支援でも民事再生企業に限定されていた出資条件が緩和される。地域活性化事業会社に対しては100%の出資を認める。出資条件の緩和は、支援企業の経営に銀行が当事者として参画するという意味において融資とは異なる責任を担うこととなる。
もう一つの目玉は業務範囲の拡大だ。債務保証、ファイナンスリース、M&Aといった従来の付随業務に加え、広範なサービスの提供が可能になる。具体的には自行で開発したシステムやアプリの販売、登録型人材派遣、見守りサービス、ビジネスマッチング、更には蓄積された顧客データの分析やマーケティング、広告業務への進出も可能となる。先月発表された三井住友フィナンシャルグループと電通グループによる共同出資会社の設立も今回の法改正を見込んだものである。
フィンテックを背景に金融ビジネスの規制緩和が進む中、銀行の側の規制緩和、言い換えれば、銀行の一般事業会社化もまた必然であろう。しかし、そうであれば、尚更、銀行はその存在意義を自ら社会に問う必要があろう。出資規制の緩和が単なるファンド化を意味するのであれば、必然として投資効率の高さが支援先企業の選別動機となるだろう。エグジットに対するプレッシャーが被支援企業の本来の事業戦略を歪める可能性もある。
そもそも銀行の規制緩和には、優越的地位の濫用や利益相反のリスクが構造的に内在している。顧客保護、顧客視点に立っての議論も不可欠だ。いずれにせよスルガ銀行や日本郵政グループを反面教師として、過度な利益追求によるコンプライアンスの逸脱がなきよう願う。
今週の“ひらめき”視点 5.16 – 5.20
代表取締役社長 水越 孝