重回帰分析とは?活用の場面やメリット・デメリットをわかりやすく解説
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鈴木 まゆ子
鈴木 まゆ子(すずき・まゆこ)
税理士・税務ライター。税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒業後、㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。「ZUU online」「マネーの達人」「朝日新聞『相続会議』」などWEBで税務・会計・お金に関する記事を多数執筆。著書「海外資産の税金のキホン(税務経理協会、共著)」。

統計学上の解析手法である重回帰分析をご存じだろうか。統計と聞いただけで拒否反応を起こすかもしれない。

しかし、重回帰分析は戦略立案の場面で非常に有用だ。今回は、重回帰分析の概要をはじめ、目的や手順、メリット・デメリットなどをわかりやすく説明する。

目次

  1. 重回帰分析とは
    1. 単回帰分析との違い
  2. 重回帰分析の目的2つ
    1. 目的1.影響の大きい要因を特定する
    2. 目的2. 未来の値を予測する
  3. 重回帰分析の手順
    1. ステップ1.成果を左右する要因を考える
    2. ステップ2.重回帰式を求める意義を検討する
    3. ステップ3.重回帰式を求める
    4. ステップ4.重回帰式の精度を確認する
    5. ステップ5.結果を予測する
  4. 重回帰分析を活用できる場面2つ
    1. 活用場面1.マーケティング
    2. 活用場面2.営業予測
  5. 重回帰分析のメリット・デメリット
    1. 重回帰分析のメリット
    2. 重回帰分析のデメリット
  6. 重回帰分析を活用して事業の成功率を高めよう

重回帰分析とは

そもそも回帰分析とは、結果を示す数値(目的変数)と要因になる数値(説明変数)の関係を明らかにする統計手法だ。

重回帰分析は、複数の説明変数を含む回帰分析である。結果と要因の因果関係がわかれば将来を予測できるというわけだ。

たとえば飲食店では、さまざまな要因が売上の結果に影響を与える。具体的な要因は、店舗の面積やスタッフ数、メニュー内容、駅からの距離、駐車場の有無などが挙げられるだろう。

重回帰分析を活用すれば、新規店の各要因から将来の売上を予測できる。

単回帰分析との違い

単回帰分析とは、一つの要因から結果を分析・予測する統計的手法だ。たとえば、広告費と売上の相関関係を求める際に用いる。

「広告費を〇〇円にしたら売上が△△円になった」というような実績データを集め、回帰係数を探す。そしてグラフにして「y=ax+b」といった回帰式を求める。

「y」は目的変数、「x」は説明変数、「a」を回帰係数という。広告費が説明変数、売上が目的変数とするなら、この式のxにいくつか数字を当てはめることで、広告費に対する売上がわかる。

ただし実際のビジネスでは、売上を決める要素は1つではない。飲食店なら立地や駅からの距離、価格帯、天気などの要素が売上に影響する。

そのため、2つ以上の要素を用いる重回帰分析のほうが、予測精度を高めるのに適切だろう。

基本的な構造は変わらないが、重回帰分析は単回帰分析より説明変数が増えるので、式がその分長くなる。重回帰分析の式は「y=a_1 x_1+a_2 x_2+a_3 x_3+a_4 x_4…a_p x_p+b_0」だ。

分析の流れは、単回帰分析も重回帰分析もほぼ同じである。

重回帰分析の目的2つ

重回帰分析の目的は主に2つにある。

目的1.影響の大きい要因を特定する

要因分析とは、複数ある変数から目的変数に関連する重要な変数を調べる手法だ。影響の大きい要因を明らかにすれば、改善の優先順位を決定しやすくなる。

目的2. 未来の値を予測する

予測分析とは、要因分析をもとに重回帰式を求めて未来の値を予測する手法だ。重回帰式に値を入れると、予測分析の結果が得られる。

予測の精度を高めるには、すべての変数を盛り込むのではなく、複数の変数から影響の大きい変数を選ぶことが重要だ。

重回帰分析の手順

これから飲食店を新しく出店するとして、新規店の売上を予測したいとする。このケースを想定しながら、重回帰分析の手順を考えてみよう。

ステップ1.成果を左右する要因を考える

店舗の売上高に影響しそうな要因(説明変数)を考える。売上高を増やすのに重要で、既存店のデータを活用できる要素を抽出する。

飲食店の事例で要因を挙げるとすれば下記の通りだ。
・商圏人口
・競合店舗数
・店舗面積
・最寄駅からの距離
・座席数
・従業員数
・メニュー数
・客単価
・利益率
・広告費
・クレーム数

ステップ2.重回帰式を求める意義を検討する

説明変数と目的変数の点グラフを描いて検討する。

仮に目的変数を1か月の売上額、説明変数を既存店舗の店舗面積、最寄駅からの距離だとしよう。

グラフにした点に過度なバラツキがなく、相関関係が認められるなら重回帰式を求める意義がある

たとえば、「店舗の面積が広いほど1か月の売上額が大きい」「最寄駅から近いほど売上額が大きい」などの相関関係だ。

ステップ3.重回帰式を求める

重回帰式を求めるときは、最小二乗法を使って複数の回帰係数(a_1 、a_2など)を計算するが、かなり面倒だ。

そこで、分析用のソフトウェアを使う方法もある。たとえば、無料の「統計分析フリーソフトR」、有料の「JMP」「SPSS」などだ。

候補となる説明変数を加えたり減らしたりしながら、データの精度を高めるために最適な組み合わせを探る。

なお、説明変数は多すぎても少なすぎても良い分析結果が得られないので、注意したい。

ステップ4.重回帰式の精度を確認する

重回帰式を求めても精度が低ければ、正しく予測できない。精度を確認するときは「重相関係数」と「寄与率」を求める

重相関係数とは、回帰式の精度(グラフの点と回帰式の一致率)を表す指標だ。実際には、実測値と予測値の相関関係を見ていく。

そして、重相関係数を二乗した値が寄与率(決定係数)だ。寄与率が取りうる値は0から1までとなる。

回帰式の精度が高いほど1に近づき、そうでないほど0に近くなる。精度の目安としては0.5以上と見ておくとよい。

なお重回帰分析では、寄与率に関して注意すべきことがある。説明変数の数が多いと、説明変数の影響度に関係なく、値が1に近くなってしまうのだ。

そのため重回帰分析では、自由度調整済み寄与率を求めて判定することが多い。さらに、重回帰式のそれぞれの回帰係数が適切かどうか、統計に用いたデータが客観的に見て信頼できるかどうかを確認する。

ステップ5.結果を予測する

最後に新規店舗の売上予測を行う。信頼できる重回帰式に新規店舗の店舗面積、最寄駅からの距離などの数字を当てはめ、売上の結果を確認する。

重回帰分析を活用できる場面2つ

重回帰分析は要因と結果を定式化できるので、出店や販売の効果を測定しやすい。そのため、売上予測やプロモーション戦略策定といったマーケティングの現場でも用いられる。

活用場面1.マーケティング

重回帰分析は、店舗の売上を予測する際に用いられる。予測に用いる要素には、接客や品揃えなども選ばれる。

ただし、接客や品揃えといった要素は数値化しにくい。こういった要素は調査でスコアリングを行うことが一般的だ。

活用場面2.営業予測

重回帰分析を用いると、数値的な根拠にもとづいて営業予測を立てられる。

たとえば、営業訪問回数や値引き率などの要素で戦略を数値化し、取引額を目的変数に設定すれば、戦略が変化した場合の結果について予測できる。

重回帰分析のメリット・デメリット

重回帰分析のメリット・デメリットを確認していく。

重回帰分析のメリット

重回帰分析を経営戦略に用いれば、費用対効果の高いマーケティングを行える。新規商品の販売に関しても、重回帰分析を用いれば将来の予測をある程度立てられる。

また、新規出店や広告宣伝の戦略についてプレゼンを行うとき、根拠を提示するためにも重回帰分析は役立つだろう。

重回帰分析のデメリット

重回帰分析では、データに必要な要因を見誤れば予測も間違えてしまう。

既に自社が把握するデータから要因をピックアップすることが多いが、ほかにも有用な要因があるかもしれない。

また、重回帰分析は概念や計算が複雑なので、理解しづらい。一から計算するのは実務においてほぼ不可能だろう。

そのため、Excelや無料・有料のソフトを用いて分析する。

重回帰分析の強みは、複数の要因から精度の高いシミュレーションを行うことだ。しかし、説明変数同士がお互い強く関連しあうと、「多重共線性」に陥ることがある。

多重共線性とは平たく言うと「回帰係数が求められない」「求めた回帰係数があやしい」といった状況だ。分析要素に不安があると予測も信頼できなくなる。

そのため、関連しすぎている説明変数が存在するなら、いずれか一方を省いて分析する工夫が必要となる。

重回帰分析を活用して事業の成功率を高めよう

重回帰分析の考え方や実際の計算プロセスは非常に難しいが、少しでも知識があれば今後の戦略で活用できる可能性がある。

単なる思いつきよりも、根拠のある事業計画ならば取引先を説得しやすい。事業の成功率を高めるためにも、ビジネスに重回帰分析を取り入れてみてはどうだろうか。

文・鈴木まゆ子(税理士・税務ライター)

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