リードタイムの意味とは?短縮するメリットや方法、注意点を解説
(画像=ushakovsky/stock.adobe.com)

近年、ビジネスにおいてリードタイムという物流用語が注目されている。納期との違いがよくわからない方もいるのではないだろうか。

この記事では、リードタイムの意味や短縮するメリット、方法、注意点などをわかりやすく解説する。リードタイムについて知りたい人は、ぜひ参考にしてほしい。

目次

  1. リードタイムとは?
    1. リードタイムは所要時間
    2. リードタイムの意味
    3. リードタイムと納期の違い
    4. リードタイムの重要性
  2. リードタイムを短縮するメリット3つ
    1. メリット1.収益が上がる
    2. メリット2.サービスを差別化できる
    3. メリット3.ビジネスチャンスが生まれる
  3. リードタイムを短縮する方法5つ
    1. 短縮方法1.情報共有を密にする
    2. 短縮方法2.社内プロジェクトを立ち上げる
    3. 短縮方法3.設備や人員を見直す
    4. 短縮方法4.システムによる標準化
    5. 短縮方法5. M&A
  4. リードタイムを短縮するときの注意点
  5. リードタイムを短縮して企業の成長を加速

リードタイムとは?

オペレーションの品質を示す指標には、スピード・正確性・コスト・継続性があるといわれている。その中でも、スピードにかかわるのがリードタイムだ。

リードタイムは所要時間

リードタイムは、物流用語で所要時間のことをいう。多くの場合、受注(発注)から納品までの期間をさす。製造にかかる作業時間や配送時間にくわえ、待ち時間や梱包・点検にかかる時間なども含めるのが一般的だ。

リードタイムは使用する文脈によっても意味が異なる。各文脈における意味を簡単にまとめてみた。

リードタイムの意味

調達リードタイム:原料などの購買品を注文してから受け取るまでの期間
製造リードタイム:製造命令を受けてから製品が完成するまでの期間
生産リードタイム:生産命令を受けてから生産品を出荷するまでの期間
入荷リードタイム:入荷してから在庫として計上するまでの期間
出荷リードタイム:出荷命令を受けてから商品を梱包して出荷するまでの期間
配送リードタイム:出荷してから納品先に届くまでの配送にかかる期間

上記は大まかに工程別にリードタイムを分けただけで、それぞれが固有名詞というわけではない。

調達リードタイムが「購買リードタイム」と呼ばれたり、配送リードタイムが「物流リードタイム」と呼ばれたりすることもある。

リードタイムと納期の違い

リードタイムと混同しがちな言葉に納期がある。しかし、リードタイムと納期の意味は違う。リードタイムが所要時間をさすのに対し、納期は納品までの期限や納品日をさす。

たとえば、今が1月5日で納期が1月12日だとすると、リードタイムは7日間におさめる必要がある。

もし納期が1月11日になれば、リードタイムを6日に短縮しなければならない。逆に納期が1月13日になれば、リードタイムに1日の猶予が生まれる。

リードタイムの重要性

現在は、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、自宅で買い物できるネットショッピングの利用が拡大しつつある。新たにECサイトを設け、ネットショッピングに乗り出す事業者も増加傾向だ。

ネットショッピングで顧客満足度を上げるには、配送時間の短さがカギとなる。配送時間が延びれば、深刻なクレームにつながったり、ネットショッピング利用者の離脱を招いてしまったりする。

ウィズコロナ時代において、ネットショッピングの利用は今後も増え続けると予想される。物流業界は、リードタイムの短縮を求められることになるだろう。

リードタイムを短縮するメリット3つ

製造業や配送業などの事業者側がリードタイムを短縮するメリットを3つ解説していく。

メリット1.収益が上がる

リードタイムを短縮すると収益を増やせる可能性がある。

製造業では、リードタイムによって商品の生産数が決まるといっても過言ではない。リードタイムを短縮できれば生産性が向上し、より多くの商品を売れる。配送業であれば商品をたくさん配送できる

結果として、いずれの業種でも収益の向上が見込めるだろう。

メリット2.サービスを差別化できる

リードタイムの短縮は、サービスの差別化に直結する。リードタイムの短縮は顧客満足度に大きく影響する。

ネットショッピングを利用する消費者の満足度が左右されるのであれば、消費者を顧客とする事業者の満足度も左右されるということだ。

リードタイムの短縮によってサービスを競合他社と差別化できれば、商品を多く売れたり、契約をたくさん受注できたりするかもしれない。

メリット3.ビジネスチャンスが生まれる

リードタイムの短縮が、ビジネスチャンスの創出につながることもある。たとえば、評判を聞きつけた事業者と新たな取引を始められる。

また、業界に先駆けて短縮の仕組みを実現できれば、ノウハウをコンサルティングに活かすことも可能だ。

リードタイムを短縮する方法5つ

供給側から消費者に商品が届くまでの流れを見直し、各プロセスの効率化を検討するのがSCM(サプライチェーン・マネジメント)だ。リードタイムの短縮は、SCMでも重要なポイントだ。

リードタイムを短縮する方法を5つ解説していく。

短縮方法1.情報共有を密にする

情報共有不足によって、リードタイムが長くなっているケースも少なくない。

たとえば、伝達不足で本来必要のないチェックが発生していたり、互いに気づかず二重チェックをしていたりする事態もある。また、取引先との間で行き違いが起こると、調達や配送などの工程で無駄が生じてしまう。

コストをかけずにリードタイムを短縮したいのであれば、情報共有の流れや仕組みを見直してみるとよいだろう。

短縮方法2.社内プロジェクトを立ち上げる

社内でリードタイムの短縮プロジェクトを立ち上げ、工程ごとに責任者を決めて改善案を出してもらう方法がある。

責任者を適切に選び、定期的にミーティングを実施する。

その際、リードタイムの変化を報告させるなど工夫するといいだろう。経営者自身がしっかりコミットして、リードタイムを短縮する意義を従業員に伝えるなど、モチベーションにも配慮したい。

短縮方法3.設備や人員を見直す

新しい設備を導入したり、人員を増やしたりする方法もある。ただし、高額を投資する場合、投資効果を試算してから導入することが大切だ。

人員については、増やすだけでなく配置を見直す方法もある。各工程に必要な人数、余剰人員、役割などを確認しておきたい。

短縮方法4.システムによる標準化

システム導入による作業の標準化で、大幅なリードタイムの短縮に成功するケースもある。

たとえばシステムによって、各工程のチェック状況を共有して重複を避けたり、工程別に必要な情報をいつでも閲覧できるようになったりする。

ただし、社員のITリテラシーや現場の状況を把握せずに導入すると、かえってリードタイムが延びてしまいかねない。

現場の声を聴き、自社に合った形でシステムを導入するとよいだろう。

短縮方法5. M&A

リードタイム短縮のノウハウを持つ企業とM&Aをするという大胆な方法もある。

M&Aと聞けば、ニュースの影響で強制的な企業買収をイメージしてしまうかもしれない。しかし、中小企業のM&Aは、ほとんどが友好的な取引だ。

たとえば、高齢で事業を続けるのが難しく、買い手を探している企業もある。

リードタイムの短縮に役立つ情報を得るために、M&A仲介会社に該当する企業を探してもらうとよいだろう。

リードタイムを短縮するときの注意点

リードタイムを短縮したいなら、たくさんの在庫を確保すればよいと考える人もいるかもしれない。しかし、むやみに在庫を抱えるのは危険である。

なぜなら在庫の保管には、場所代や棚卸の人件費など、さまざまな管理コストが発生するからだ。

リードタイムの短縮を実現できても、コスト増加によって経営が圧迫されてしまうことになりかねない。

在庫を増やすことなく、リードタイムを短縮する方法を模索するのが理想的だ。単に、リードタイムの短縮を社員に指示したり、ノルマを課したりするだけだと、品質を落とす結果になってしまう。

現場の状況を把握し、優先順位をつける必要がある。従業員を巻き込みながら、リードタイムの短縮に取り組んでいくことが大切だ。

リードタイムを短縮して企業の成長を加速

新型コロナウイルスによるライフスタイルの変化によって、リードタイムの短縮は世界的に重要な視点となりつつある。

リードタイムを意識して経営を改善しなければ、時代の流れに乗り遅れてしまうかもしれない。反対に、リードタイムの短縮を実現できれば、差別化や収益増加、ビジネスチャンスにつながり、企業として成長を加速させられるだろう。

自社の経営を考慮しながら、自社に合った形でリードタイムの短縮を実施するようにしたい。

文・木崎涼(ファイナンシャルプランナー、M&Aシニアエキスパート)

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